2010年3月15日月曜日

Game Analysis その2

今日は,以前も取り上げたことがあるゲーム分析 Game analysisについて.

意外と時が経つのは早いですね.

以前から,この(日本では)新しい分野の動向について気にはしてきました.
来月から赴任するところでの活動と全く無関係ではないということもありますし.

偶然にも今日,現在の仕事先である大学において,アメリカのNBAのゲーム分析班として活躍し,現在はゲーム分析ソフトのアメリカ東部地区のマネージャーをしているという方が来校されていました.
東京のイベントに参加される途中で,なぜかこの大学に寄ってくれたということで.
普段から贔屓にしているだけあって,リッチな待遇を受けることが出来ます.ここで働いていて良かったと思えることのひとつですね.

臨時で,
「アメリカにおけるプロスポーツ界と大学スポーツ界の違い」
という講演をしてくれました.
聴衆3名の実にリッチな講演.本当ならお金を払って聞くようなもんだったのでしょうけど,講演途中でも質問し放題,質疑応答自由の非常に贅沢な時間でした.
もちろん英語でのやりとりですが,通訳をしてくれる人がいたので安心して何でも聞けてしまいます.
本場でバリバリやっている人が少人数のリラックスした状態で本音で語ってくれるという,こんなレアな状況.なかなかこういう機会には遭遇できないので,ここぞとばかりに今までゲーム分析で気になっていたことをぶつけました.

で,その結果ですが,以前から私がゲーム分析に対し感じていたことをさらに確信するにいたったというところです.

まず,ゲーム分析で分析された結果ですが,プロスポーツであれば「競技力の改善」はもちろんですが,「選手の管理」のために使われています.つまり,どれだけ仕事をしているか?という視点です.ちゃんと仕事しているかどうかを客観的に示す必要があるからです.
その選手がチームのためになっているかどうか,フィーリングで判断されては選手もたまったもんじゃないですし,チーム側としても正確な判断がしたいところですから,お互いの納得のためにもビデオによる記録が重要なのです.

競技力の改善のための利用としては,とにもかくにもヘッドコーチ次第というところ.
見ないコーチは見ないし,選手だけが見ればいい場合はそうするまで.
では選手にはどんな映像を見せるのかというと,選手自身が見たいと言う場面を編集して,「今日の私の良かったところ」をつくってあげるのが主なところ.
“分析する” というよりも,明日の自分のためへのモチベーションアップがその主な目的のようです.
「選手へのフィードバック」って大々的に言っても,本場NBAでもその程度のようですね.

さらに,大学スポーツにおける「ゲーム分析」は,そのほとんどが選手へのサイキングアップに使われているということです.
私が質問したことでもあるのですが,
「大学レベルの選手は,技術や戦術が安定していないと思うのだが,そのような中で “フィードバックする” ことというのは何か?」
彼の解答はThat's a Good Question !というものでした.
やはり,これについても基本的に悩みは日本の大学と同じなわけです.

ビデオにより戦術や技術の分析ができたとしても,その結果を受けて自在に使い分けることができる選手というのは一握りの天才だけで,その大部分が目の前の試合に全力を出し切ることで精一杯です.
大学レベルのスポーツ競技では,相手チームの前の試合を見たところで,次の試合では戦術や技術は大きく変わっています.
これをどう扱うか?についてはアメリカの分析班も苦労しているようでした.

大学レベルの選手には,次のようなビデオによるアプローチをしているようです.
次に試合をする相手チームが弱いようであれば,そのチームの強そうな場面をチョイスしたイメージビデオをつくって緊張感を持たせる.落ち込んでいる選手がいたらその選手の名場面をチョイスしたビデオを渡して気分を盛り上げる.などです.
う〜ん..,「ゲーム分析」というほどクールな使い方ではないですよね.

競技における文化の違いを確認できたエピソードもあります.
アメリカの大学スポーツでは,自分たちの試合で撮影したビデオを,全大学で互いに交換することが “義務” になっている.ということ.
お互いにビデオ交換するというのは,映画などのシーンで観たことがあるので知っていましたが,まさか義務にまでなっているとは知りませんでした.

理由は,互いのビデオ交換についてそのつど申請していたら,膨大な時間と事務手続きがかかってしょうがないから,とのことでしたが.
私に言わせれば,そもそも,ビデオを見て分析するという作業がアメリカの大学スポーツ界に常識として存在していることの延長線ではないかと感じました.

ただ,スポーツにおけるビデオ映像の利用頻度に違いはあれど,どれだけ競技力の改善に活かされているか,ということについては大差ないのではないかと思ったものです.
以前の記事にも書きましたが,やはり,フィードバックするタイミングや量,強さといったことをもう少し検討するべきなんだと思います.
経験知という意味からは,「やらないよりはやった方がいい」 というレベルまでは来ているはずです.
ちょうど,ウエイトトレーニングはやらないよりやった方がいい,ということが知られてきたようなものです.
あとは,どれだけやるべきか,どのような時はやるべきでないのか,といった知見が必要になってくるのでしょう.