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結論が出ないとき
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私の前任校でもある大学院生の皆さま,いかがお過ごしでしょうか?
そろそろ修士論文なんぞ書き始めている頃かと思います.
え?まだ実験が終っていない?
まだ実験すらやってないって人もいるかもしれませんが,いよいよヤバい時期に突入するので気をつけてください.
就活も焦燥感ただよい始める時期でもありますし,教員採用試験(通称・キョーサイ)も最後の追い込みかと思います.
うちの大学の学生は焦りもせず「なんとかなるさ」と構えているようですが,なんとかならないので早めの始動をお願いします.
我々教員も早めに指導しなければならないのですが.
以前,論文の書き方として「緒言でつまづいたとき」というのを取り上げましたが,今度は結論について取り上げます.
“緒言は最初に書くな.結論が出てから書け”
ということを提言させてもらいましたが,そもそも結論が出せない人はどうすれば?というところです.
結論から言えば,結論の出し方に方法なんてないんですけど,論文執筆初心者にとって何かの助けになるかもしれないアドバイスを3つほど.
1.願望を捨てる
「結論が出せない」と言っているその実,無意識に結論ありきで論文を書こうとしているパターンは多いものです.
「この実験結果からこう言えたらいいな」 という願望を捨てきれないままだと,データをなんとか自分の言いたい結論に結びつけようとしてしまいます.
でもデータと統計処理ソフトは冷酷ですから,その結論にしようとすると矛盾が出てきてしまう.
だから結論が出ない.
というパターンですね.
「このデータのこの数値をチョッとくらい・・・」
とかいって冥い波動にのまれてExcelにカーソルを当て始めるパターンでもありますが,それは科学者,執筆者として絶対やってはいけないことです.
当初の仮説,つまり予想と違ってしまうことによる混乱ですが,これはよくあること.
仮説はあくまで仮説.
まずは事実を真摯に受け止め,なぜそうなったのか要因を探りましょう.
「こういう結論になったらいいな」と考えて実験や調査を始めた人は要注意.無意識にこれに陥ります.
きちんとした実験や調査をやった自信があるなら,意外に面白い結論に行き着くこともあります.
2.目的を変える
論文を書くにあたり,実験や調査を始めた「目的」があったはずです.
でも,その目的に沿わない結論になっちゃった.だから結論が出せないというパターン.
だったら当初に計画した目的を変えてしまえ,という処方です.
当初の目的を変えてはいけないルールはありません.
例えば,スポーツ選手と一般人の何かを調査測定して違いを見つけたかったとしましょう.
そして,“スポーツ選手は一般人と比べて◯◯が優れている.” と結論したいんだけど,それだと都合よくないデータだったとします.
こういう時は,「スポーツ選手と一般人の比較」という当初の目的を変え,例えば「◯◯について男性と女性の比較」とか「〇〇に関する年齢との関連」とかにしてデータ解釈の視点を変えるのも一考です.
目的があるからデータや資料があるわけではありません.
データや資料は,見方が違えばいかようにも解釈できるのです.
ある意味コワイことですが,悪意を持って扱わなければ有益な結論も出せるでしょう.
3.物語をつくる
実験・調査結果を箇条書きのようにして,それを「結論」ということにしてしまうことも多いですね.
「結論は短くシンプルに」というのを勘違いしてしまったパターンです.
私も昔はこれをやってました.
でもそれでは読み手からすると,「だから何?」ということになってしまいます.
この論文で何を伝えたいのか,ということを短くまとめるわけですが,どんなに短くてもその文章に物語性を持たせることが大事です.
それこそ「物語」で例えてみましょう.
「桃太郎」という実験・調査データを「結果の箇条書き」にしてしまうと,こうなります.
データとしては(?),桃太郎は旅の途中で犬と猿を味方につけた場面までだったとしましょう.
・旅を始めている
・犬を味方につけることができた
・猿を味方につけることができた
・味方がまだ少ないが,これについては今後の課題である
スッキリしているし,わからんでもないですが.
でもこれは,桃太郎という物語を,つまりその分野をかなり把握している人にしかわからないですよね.
桃太郎って何?
なんで旅をしているの?
犬と猿はどうして味方になったの?
味方が少ないって,どんな課題なの?
と,疑問点が出てきます.
だから,以下のようにしてみましょう.
“桃太郎は桃から生まれた.老夫婦に育てられ,鬼退治を志している.犬と猿をきびだんごによって味方につけたが,戦力が不足しているのかもしれない.制空権を確保できる戦力が得られれば,より効果的に鬼を退治できるであろう”
みたいな感じです.
では皆さん,論文のデータとにらめっこして,より一層の努力を.
さて,
私としましても例のお見合いの結論を急がなければならないことになりました.
だいぶ気合の入ったお見合いであることが分かってきたのでビビってきています.
論文と違って,待ったなしです.
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