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質問させる

前回の記事では,
毎回の授業で学生に一つだけ質問させ(授業にまつわることが主),それを出席カードの扱いとして回収.
次の週の授業にて,その質問&私の回答をA3両面コピーという形式で返す,
という授業を展開していることを紹介しました.

質問の内容や質で点数をつけています.
主観的な採点ですが,感想とかレポートも同じようなものですから構わないと考えています.
A3両面コピーも私なりのこだわりというか.実技の授業という事情もあって,A3用紙1枚であれば学生も紙を持ち帰るのが楽かな,という配慮です.
こちらとしても配るのも楽だし.


この「学生に質問させ,それに点数をつける」というのは大学教員であり作家の森博嗣氏もやっており,氏のやり方は著書である『臨機応答・変問自在』に詳しいです.

今回はこの「学生に質問させ,それに点数をつける」という授業をなぜやっているのか?というところを取り上げましょう.


それは前任の大学で研究員(「助手」という名前だった)をやっていた時から感じていた,

大学生に “授業” をしても意味がない

そして,自分自身が大学生だった時に感じていた,

授業を聴くより自習した方が効率が良い

ということが原点です.


そんなわけで,自分が大学教員になってしまった時に考え込みました.
「意味のない授業をどうしようか」
と.
大学教員は授業をしなきゃいけないことになっていますから,仕方ありません.

学生はお金を払って授業を受けているわけですから,それに見合ったものを提供しなければならないとも思いますしね.


大学の授業に意味を見出せないとは言え,全く無価値かと言えばそういうわけじゃないとも思います.
強いて言えば「きっかけ作り」という価値はあります.
と同時に,「きっかけ作り」にしかならないかな,と.

意味のない大学の授業に意味を持たせようと考え尽くした結果,
「学生の質問に回答する機会を提供する」
という授業に至りました.

理想としては,授業中に学生からドシドシ質問が出て,それに私が回答しながら「そういう時はこうするんだ」と実技する授業ができたらいいのでしょうけど,遠慮深い学生たちはそんなことしません.
そうですね,ちょうど『これからの正義の話をしよう』で有名になったマイケル・サンデル氏のような対話式授業ですね.
それを質問・回答用紙の配布という形で具現化しているわけです.

「質問をさせてそれに点数をつける授業」
が良いと考えている理由ですが,森氏も著書で述べている,

重要なことは答えることではない,問うことである.

ということ.

大学生になったら勉強は自分でやるはずで,しかも自習の方が効率がいいのです.
資格試験対策,採用試験対策に精を出す昨今の大学であれば尚の事.
であるならば,大学教員が授業でできることは,

学生からの質問に答えること

だけなのではないかと.
むしろ,そこが大学の授業の価値ではないかと考えています.

社会に出ると実感しますが,与えられた問題を解決する力ってそんなに大事ではないのです.
それより大事なのは,「問題を見つける力」です.

「この問題はこのように解決しましょう」
という能力よりも,
「それって問題じゃないですか?」
と問う能力の方が重要です.


学術研究にしたって一緒で,テーマと研究計画を考えるところが一番難しくて,それさえ出来上がれば,あとは学生だけでもできちゃいます.

例えば,たいていの研究室では卒論のテーマは先生からもらいますよね.
学部生くらいであれば,その与えられた問題(つまりテーマ)をどう解決するかに苦心します.

でも,修士・博士くらいになったらわかりますが,テーマ決めや研究計画を練るのが一番難しいのです.

テーマや研究計画は,それまでの研究の経緯や解決方法の選定,得られる結果の価値や意義を吟味しなければいけないからです.

問題解決能力がある人が評価されているように思われます.
でも実は,一般的に問題解決能力があると言われている人ってのは,問題を見つけることができているからこそ問題を解決できていると言えるのです.


ところで,
高得点をもらえる質問とはどんなものか? ですが,前回の記事を見てもらえると,なんとなく分かってもらえると思います.

チョッと考えりゃわかること,そもそも無知によるもの,本人は知りたくてしょうがないのかもしれないが価値の低いものは低得点です.

高得点の質問というのは,回答者である私ならではの回答が引き出せているもの,明確に正解がないものです.
つまり,“本当に問題なこと” を質問できている質問を高得点にしています.
レポート課題とか論文のテーマになりそうな質問という事もできるでしょうか.

簡単そうで,意外とこういう質問をしてくる学生はいません.


まぁでも,「そんなこと言ったって,おまえの自己満足の授業じゃねぇの?」と言われかねないものですね.

でも,自慢話になりますが私の授業は学内でもトップクラスの学生満足度を誇ります.

学生満足度アンケートという代物を私は信用し過ぎないようにしてはいますが,学生が求めるものを提供出来てはいるのだと安心はしています.

以上,自慢でした.