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教育アプリ?「Sivilization Ⅴ」

なにげなくApp Storeのカテゴリ「教育」のところをのぞいていましたら,新しく3D解剖図ソフト「Anatomy & Physiology」が出ているようです.以前,
解剖図ソフトを喜ぶ人々
で紹介した「Essential Anatomy2」よりも豪華な感じがします.私はまだ購入していませんが,そのうち購入するかもしれませんので,またレビューします.
値段もそんなに高いわけではないので,利用価値があるかもしれませんね.ちなみに,「Essential Anatomy2」は授業や学生指導でよく使っています.

ところで,ずぼらな私はなるべく楽しく勉強したいと考えるたちでして.
App Storeの「教育」のカテゴリから面白そうなアプリを探すだけでなく,あろうことか「ゲーム」のカテゴリから教育的なものはないかと探し始めました.
そんなわけで先日,「ゲーム」のカテゴリのところで「教育」の部分をクリックしてみたのです.
ゲーム感覚で物理学とか生物学とか数学とか英語とか.そういったものを勉強したいと考えたからです.

すると,やっぱり子供や幼児教育向けのものがたくさんなのですが,右のサイドバーに「トップセールス」なるアプリを紹介しているところがあり,そこに「Sivilization Ⅴ」というものが(2013年8月2日現在もトップ).

おや?これはなんだろう,と思って解説を読んでみると,どうやら文明を発展させていくシミュレーションゲームとのこと.
たしかに教育的なゲームですね.だけどかなり硬派なゲームのようにも.
でもまぁ面白そうだからってんで,使用言語が英語だけと購入.安いし(2600円),英語の勉強にもなるし,いいだろうということで.

すると,硬派どころか,かなり手の込んだ本格的なゲーム.すっかりハマってしまいました.
あと,本当に「教育」的な価値があるゲームだという評価をさせていただきます.
国際関係や外交,軍事,政治,経済といったことを,しっかりとシュミレーションできてしまっています.しかもシビアに.
かなりのオススメ・アプリですね.

どういうゲームなのかもう少し詳しく言うと,プレーヤーは日本やイギリス,フランス,インド,エジプト,イロコイといった文明をいずれか選択して,テクノロジーや都市を発展させながら,古代から現代までの時代を生き抜くことが目的です.

「生き抜く」ことが目的というのは,まさしく文明の宿命.リアル過ぎます.

他国と戦争の緊張が高まったり,同盟を結んで余計な戦争を回避したり,お金を払って友好関係を築いたり.
他国からの圧力に対向するためにテクノロジー(船舶とか火薬とか核とか)を高めて外交する.たしかに国際関係をシミュレーションしています.
以下に,このゲームが実際の国際関係をどれほどシミュレーションできるか挙げていきましょう.

●まずは食料の確保
国作りの基本は食料の確保である.ということを改めて思い知らされるゲームです.金よりも米.現代の日本にいると,ややもすれば忘れがちですが食料確保こそが文明の基本ということです.
実際,約150年前の日本にしたって,武士の給料は石(田んぼ)で支払われていました.加賀百万石とか言うでしょ.前田家のように有力な武将は石高も多いということです.お金の価値が高まったのは,つい最近のことなのです.


●資源を自国でまかなうことの大切さ
この次と次に書いていることにつながりますが,自国で資源をまかなうことの大切さと優位性を思い知ることもできます.
現実の日本に置き換えれば,「TPPで農業輸出大国になろう」とか「原発再稼働反対」などという論理が,どれほど危ないことかを想起させられます.
それだけに,日本の海洋資源として注目されているメタンハイドレートというエネルギー資源の確保は,我が国喫緊の課題であることが分かります.と同時に,その知名度の低さと採掘計画の動きの遅さは異常です.
原発再稼働反対論者は,血眼になってメタンハイドレート採掘を推進しなければなりませんが,えてして反原発派はメタンハイドレートを知らなかったりするんです.今,日本は過酷なエネルギー資源の綱渡りをしてるにもかかわらず.
彼らには,「もし石油輸入が減ったり火力発電所が故障しようものなら,それ即ち日本終了」という現実に対する緊張感がありません.こういうのを「お花畑」と言います.


●テクノロジー(技術)の持つ意味と価値
さまざまなテクノロジーが文明にとってどのような価値をもつのか,文明の指導者の立場から思い知らされるところもあります.
例えば,ただの棍棒と弓矢の軍隊から,「製鉄」のテクノロジーによって剣兵へとレベルアップすることにより,優位性が格段に高まるという歴史的重要性を体験できます.
「鉄器時代」と区分されるくらい,歴史において製鉄のもつ意味は計り知れないのです.


●起こるべくして起こる資源争奪戦
なるべく平和的に進めようと考えていても,資源(鉄とか石油とか)争奪戦のため,自国で確保したい地域があるのは現実と一緒でして.
このゲームでも自国周辺に資源地域があったりすると否応なく戦争をふっかけられますし,外交交渉で手に入れられないってんなら,戦争を仕掛けたくなる気持ちにもさせられます(だって滅亡したくないんだもん).
例えば上でも書いているように,「製鉄」による軍事力の強化の恩恵は凄まじいものがあります.古代において鉄鉱山を確保することは,その文明の覇権と直結します.逆に,鉄鉱山をたくさん持つ隣国を野放しにして,その国が製鉄技術を身につけたとしましょう.とてつもなく危ない状況になるのです.その前に潰す.当然です.
状況が切迫したら,どんなに交渉したりお金や資源を貢いでもダメ.資源を自国の好きなように扱いたいのは現実世界と一緒です.まさに石油をめぐる中東情勢ですね.


●大国との緊張の高まり.その狭間の小国
このゲームの真骨頂.国際関係を気持ち悪いほどに追体験できるところです.
大国が我が国に向けて迫っている時には,その間にある小国が邪魔になったりするのもリアル.というのも,その小国の領土が敵国に渡ってしまったら,こちらとしては経済的にも国土的にも滅亡の危機になります.
その小国を越えて軍隊を派遣しようとしたら,「我が領土に軍隊を入れるな」とか文句言ってくることもしばしば.こちらとしては,あなたの国を守ろうという意味でも軍隊を派遣してるんですけど,というところなのですが.
そんなわけですから,「(てめぇ,自分の国の置かれてる状況がわかってねぇようだな.放っとくと潰されるんだぞ)」ということになって,「しかたない,今のうちにこの小国を我が国が併合しよう」という流れになります.リアルでしょ.
まさに明治時代の日本における,ロシアの脅威に対抗した朝鮮併合のような関係がシミュレーションされちゃうわけです.


●軍事的要所になる地域の存在
沖縄とか北方領土のように,軍事的な要所があることも学べます.複数の国がどうしてもおさえたい場所というのはあるものです.そこをおさえればイニシアティブがとれるという場所です.トルコ周辺やバルカン半島もそうですよね.
そういった地域は紛争が絶えず,否応なく自国の軍隊を集中配分することになります.沖縄に基地が集中し,軍隊も多い理由を体験できます.中国としても沖縄周辺にちょっかいを出し続けるのは自然な流れなのです.


●軍事力=国力ではない
このゲームは,軍隊をたくさん作って軍事力を高めて他国を制圧しまくればOKという,よくあるゲームとも違います.
軍隊を作るにはコストがかかります.だから国内の産業や経済状態を良くする必要があります.さらに,軍隊ばかりに予算配分していると国民の不満も高まります.
一方で軍隊がないと,いつなんどき他国やバーバリアン(蛮族)から襲われるとも知れず,安心して産業や経済を高めることはできません.バランスが大事です.
あと,他国を制圧すると現実世界と同様に暴動が起きます.それを鎮圧するのも一苦労ですから,簡単に都市を制圧すれば有利になるというわけではありませし,領土が広がるとさらに軍隊が必要になるので予算が火の車にもなります.
戦争や軍隊というのは,政治の一手段のためにあるものだ,というクールな捉え方ができるようになります.


●外交の基本として語学が必要だ
これはこのゲームそれ自体の面白さではないのですが.
日本語のゲームじゃないので,どうしても英語を勉強しないといけません.専門用語としての英語の勉強になりますし,外交交渉の際の文章を翻訳する作業も英語の勉強になります.
以前もお話しましたが,“必要に迫られないと英語は勉強できない” というところを実体験できています.
間違った翻訳をしてしまって,意図しない回答をすると戦争になりかねませんからね.相手が何を言っているのか理解しようという気にさせられますから,PC相手ですが英語コミュニケーションのシミュレーションになっています.

どうやらMacだけでなくWindowsでも販売されているようです.私としてはオススメゲームですが,かなり硬派な感じですから,人を選ぶかもしれませんが.
※Windows版は日本語対応しているそうです.