2015年5月25日月曜日

これも大事じゃない,大学教員が言うこんな指導

前回の続きです.
ちなみに前回はこちら↓
(1)新聞を読め

今回はこれ.
(2)とりあえず自分の意見を出してみよう
大学での学びは教員と学生が対話をすることにより効果的なものとなります.議論をしなければ大学での学びは無意味と言っても過言ではないかもしれません.
ところが,学生の側からの活発な議論が展開されることは少ないものですから,思わずそれを促そうと教員が口にしてしまうのがこれです.

さらには「本学の学生は積極性が低いから」と比較対象が不明瞭な分析をしてみたり,「日本人は自己主張が苦手だからねぇ」などと,よくよく考えてみたら知性や学術性とは無関係なことで煽ってみたり,しまいには「分からなくてもいいから言ってみよう」と根性論に似た何かを指導しようとする人もいます.

きちんと考えた上での意見なら議論や問答の価値はあるのですが,「とりあえず口に出してみよう.まずは自分の意見を表に出すことが大事」という場合,学生は “きちんと考える” という手順を踏んでいないことが多いかと思います.
きちんと考えないままに意見を出したところで,学術性の高い議論を展開することはできません.

でも,この「とにかく意見を表明することが大事」という指導をする教員が多いこともたしかです.かく言う私もついつい言ってしまうことがあるのですが,ホントは良くないことです.多用は避けたいですね.

ですが,
「よく分からなかったけれど,とりあえず意見を言ってみたら話が盛り上がった.とりあえず出した意見が元で,話が進んでいった」
なんてことも聞きます.
だからやっぱり「とりあえず意見を出す」というのは良いのでは? ということも聞きます.

それを狙ったのがブレイン・ストーミングという手法だったりするのですが,私の経験上,こういう手法や状況で展開される議論は低レベルなものに終わることが多いです.
既知のもの,つまり常識的な認識の組み合わせにしかならないからでしょう.

一方で,大学での学びにおいて求められているのは,知識を組み合わせる力ではなく,思考を練り上げる力です.
もちろん両方大事なのですが,より高度なトレーニングが必要なのは後者のほうです.

いろいろな学問分野がありますが,大学という場において共通してトレーニングするべきは,考える力です.
ある一つの学問分野で「考える力」を培えば,それはその他の分野でも応用がききますし,より質の高い知識の組み合わせができるようになります.

「私の経験上・・,」と申しましたが,例えばこんな状況になったことがあります.
あるセミナーにおいて「◯◯についてブレイン・ストーミングしましょう」という企画があって,いろいろと意見を出してみるのですが,ある事柄に関して,明らかにその場の皆様の認識が間違っていたのです.
ブレイン・ストーミングですから,「それ間違っています」と批判するのも躊躇して放ったらかしたのですが,出来上がったのは「そりゃそうだろ」という浅薄な内容で,且つ,「しかも,根幹的な部分が間違っているんですけどね」というものでした.

つまり,その場にいる多数派が「良い」と思うもの,少なくとも「納得」できるものは作り出せるのでしょうけど,「正しい」ものや「質の高い」なものが作られるわけではないのです.

大学で学んでもらっているのは,学生が「良い」と感じるものや「納得できる」ものではありませんよね.
では何でしょうか.
それは「正しい」ものであり,「質の高い」ものであるはずです.否,「正しいものは何か?」を紡ぎだし,「質の高いものは何か?」と考え続ける姿勢や力です.

とりあえず意見を出してみる・・・,という姿勢で臨んでしまうと,大学で身につけるべき大事な「考える力」を鍛えられないままに卒業してしまいかねません.

学生の皆様におかれましては,先生から「とりあえず意見を出してみろ」と言われても,本当に「とりあえず」という気分で意見を出してはいけません.自分の思考力の限界を発揮するべきです.

一昔前であれば,先生に「とりあえずでいいから・・」と言われたからってんで,とりあえず意見を出してみたら,「お前はバカか」と罵られました.
これに「“とりあえず” って言ったじゃないか」と不平を言うのは本当にバカです.

今はむしろ,「とりあえず」でもいいから意見を出すことが大事だという風潮が強いですから各自一層注意しなければいけません.