2016年4月22日金曜日

震災のたびに思うこと

今回の熊本地震のニュースやネット記事でもたまに見かけますし,東日本大震災の時にも目にすることが多かった意見に,
「被災地が過疎地域なら,いっそ復興させずに都市部に人を集めたら良いのではないか?」
というものがあります.
被災した地域は復興させずに,そのまま緩やかな衰退を目指そうというものです.その方がコストをかけずに済むからという理論だと思われます.

それに関連して,ちょっと有名なジャーナリスト(評論家?)が以前にこんなことを言っているのを見ました.
「日本は人口が増えすぎなんですよ.人が多いもんだから,都市部から人がどんどんへんぴなところまで侵食していって,今じゃ住まなくてもいいようなところにまで家を建てちゃって,そんなところに膨大なコストがかかっている.だからこれからの日本はもう一度,人を都市部に戻す必要があるんですよ」
(記憶している限りなので,正確な発言内容ではないのですが,そのような趣旨でした)

冗談で言ってるんだと思いたいのですが,どうやら無邪気に目を輝かせているので本気のようです.

人を都市部に戻す? なにをトチ狂ったことを言っているのか.
そもそも,今ある都市部のほとんど,中でも東京・首都圏は,地方の村や町から人を集めて作られた場所じゃないですか.東京は田舎者の集まりだとも言われます.

だいたい,私の地元にしたって,東京,ましてや江戸に人が住み始める前からあった村落ですよ.歴史として調べられないくらい以前から,日本の至る所に町や村落はあったのです.
今ある都市部から徐々に人が広がっていったかのような認識でいることが恐ろしい.

現在の都市部に人が集まっているのは,人が集まるように誘導したからです.インフラが優遇されていれば,当然,そこに人は集まります.
実際,この地域では慢性的な転入超過です.
東京圏、11.9万人転入超(日本経済新聞2016.1.29)
その他にも,上の新聞記事にもあるように愛知,大阪,福岡の転入超過が顕著です.

ようするに「都市部に人を集めなければ・・」なんてことを心配しなくても,実際そうなっています.

さて,話を震災復興のコストパフォーマンスに戻しますと,上記のようなド直球な意見表明はしないにしても,震災復興するにもコスパを重視するという考え方で事の成り行きをみつめている人は少なくないのかもしれません

ただこの「コスパを重視」という考え方,どれだけ教育界に悪影響があるかをこのブログではくどいくらい繰り返してきたわけですが,これは日本という国にも同じことが言えると思うのです.

震災のたびに出る冒頭のような意見は,都市部に人が集まったら「震災復興のコスパが良い」と考えているからでしょう.
ですが,現在の都市部に人を集めても震災対策としてはコスパは良くなりません.これにはいろいろ理由が考えられています.

ここでもう一度,冒頭取り上げたジャーナリストの発言に戻りましょう.
人が多いもんだから,都市部から人がどんどんへんぴなところまで侵食していって,今じゃ住まなくてもいいようなところにまで家を建てちゃって,そんなところに膨大なコストがかかっている.
このジャーナリスト,調べてみたら都市部の出身でした.
「人口が多い場所」を中心に,そこから波紋が広がるようにヒト・モノ・カネ,そして文化の移動があると考える人には,都市部の人が多いように思います(適当).あと,こういう人って妙なナショナリズムと「日本観」を持っていることが多い.
ちなみに,そういう人を私は「中国人っぽい」と評して以前記事にしたこともありました.詳細はそっちを読んでください.

まぁそれはさておき,震災復興のコスパのために都市部に人を集めることがどれだけ危険なことか,2つの観点から危惧されています.

その1つ目は,「一極集中している中にあって震災が起こると大ダメージになるため,震災対策としては国力を地方に分散した方がいい」というものです.
「都市部に人を集めた方が・・・」という考え方を進めていくと,「一部の都市への集中」を経て,いずれ「1つの都市への集中」へと収斂していくことになります.つまりこれは,より強力なスポットへと収束していくうねりを持った考え方なのです.
一極集中している方が経済的に有利だということも,それを後押しするでしょう.
最終的には東京一極集中によって完成し,東京大震災によって完結します.

2つ目は,「都市部に集中させた方がいい」というのであれば,どの都市に集中させた方がいいのか? ということを考えることになるのですが.「都市部に人を集めた方が・・」という人たちは,今現在の都市部に人を集めようとしているのではないかと思います
しかし,今現在の都市部に人を集めても,中長期的にはコスパは悪いのです.

これは東日本大震災とオリパラ招致の時に話題になったので覚えている人もいるかもしれません.スイスの保険会社が発表した,
自然災害で危険な都市ランキング・リポート(←PDFページ英語)
です.
で,その危険な都市ランキング第1位が,東京・横浜でした.
スコアを見ると他の追随を許さないぶっちぎりの1位のようで,この地域は遠くない将来壊滅することになっています.その予定でいなければいけません.
なお,東京・横浜だけでなく,他の日本の都市も上位入賞しています.そのランキングを示すと,
1位:東京・横浜
2位:マニラ
3位:珠江デルタ
4位:大阪・神戸
5位:ジャカルタ
6位:名古屋
7位:カルカッタ
8位:上海
9位:ロサンゼルス
10位:テヘラン

というわけで,日本が今後「人を集めた方が良い都市」は,東京・横浜,大阪・神戸,名古屋以外の都市ということになります.
「コスパ」を考えるなら,リスクの高いところに人を集めるのは良くないことですから.

というか,6位の名古屋は別にしても,東京・横浜,大阪・神戸というのは日本の東西の中心地ですよね.
そしてこれらは,日本の歴史上は最近になってゴリ押し公共事業によって都市化された地域であることがなんとも皮肉なものです.
ゴリ押し公共事業で無理やり都市化したのだから,災害に弱いのは当然です.そんなところに住もうとする人も,もともと少なかったのでしょう.

えぇ.結論としては,「都市部に集中」を謳う人たちを皮肉りたかっただけです.
現在の日本は「都市部への転入超過」が進行しており,その転入超過している都市のほとんどが「危険な都市」に指定されているということは,なんとも興味深い,皮肉な話ではありませんか.

目先のコスパを考えると都市部に人口が集中してしまうのでしょうが,長期的に見れば地方を都市化させておくことが大事です.
最悪なのは,これらの都市部,とりわけ東京で震災が起きることによって, “仕方なく” 地方に人口が移動するという事態です.
でも,現状を見ていると,なんだかそんな状況になりそうなのが残念です.