2016年11月15日火曜日

入学試験あれこれ

この仕事してますので,大学入試の試験監督をやることがあります.センター試験とかも.
ずっと座っているのも退屈なので,巡回監視がてら受験生の解答用紙を覗き込んで見て回ることがあるんです.

以前,「歴史」の試験監督をしていたら,「聖徳太子の十七条憲法にも示された『三宝』をそれぞれ述べよ」という問題がありました.
そんなに難しい問題じゃないし,漢字1字で回答する指示があるので,受験生のほとんどは「仏・法・僧」と書いていたのですけど,中には珍解答があったりする.
例えば,以下のようなもの.
「金・銀・銅」
オリンピックですね.思わず吹き出して笑いました.咳払いで誤魔化しましたが,こういう回答をする人はむしろ将来有望です.
他にも,
「父・母・子」
きっとこの受験生は心の優しい人です.三宝が解らなかったということで,その子なりに3つの宝を挙げてみたのでしょう.成績が悪くたって,特別枠でぜひ入学生させたい.

「米・麦・魚」
食いしん坊ですね.それにしても,どうして最後が「魚」なのか.「米」「麦」ときてるんだから,あとは「豆」とか「粟」とかになるんじゃないかと.
もしかすると,栄養バランスを考えて動物性食品を選んだのかもしれない.だとすれば気配り調整のできる人物です.
試験中ずっと気になって仕方ありませんでした.終わったらその受験生に「どうして最後が魚なの?」って尋ねようかと思ったくらいです.

「人・物・金」
何人かいましたよコレ.ポピュラーな間違いです.
近代社会に毒された若者をみているようで,なんだか切なくなりました.

「心・技・体」
切羽詰まってなんとなく思いついた三文字熟語を書いたのでしょうか.
とは言え,どうしてこれを「三宝」だと思ったのか.書くにしても想像力を働かせてほしいものです.

でも,最近の大学も学生募集に切羽詰まって「なんとなくの思いつき」で始めたんじゃないかという入試がたくさんあります.
その結果,毎月のように入試です.
一昔前に大学生だった人で,それでいて現在まで教育関係に触れていない人は驚くと思いますが,大学によっては8月〜3月まで毎月のように「◯◯入試」って感じで色々な名称の入試が展開されているんです.

大学が取り組んでいる「一般入試」以外の入試方式を眺めていますと,なんだか感慨深いものがあります.

推薦入試
一般的に推薦入試と言うと,その受験生の高校や予備校の先生(通常,学校長)から「この受験生は本校を代表する生徒です」っていうお墨付きをもらう,つまり推薦してもらうことで受けられる入試です.
基準や条件はいろいろですが,たいていは学業成績や課外活動などが用いられます.
現在の大学は,推薦入試で入学者の大半を,場合によってはほぼ全てを占めるようになりました.ようするに,一部の優良大学以外の大学受験の主戦場はここにあるのです.
今となっては,高校に “推薦してもらっている” のは受験生である「生徒」の側ではなく,大学側であるとも言えます.推薦入試でどれほどの学生数を確保できるかが勝負となります.

指定校推薦入試
知らない人は全然知らない.知ってる人は知っている.そんな推薦入試がこの「指定校」と呼ばれる入試です.
これは,大学が高校に対して「貴校がオススメできる生徒を,本学は◯人まで受け入れますよ」と予め指定しておき,簡単な面談等を経て受け入れる方式です.
かつては「指定校の学生は学力が低い」と目の敵にされていましたが,どうやら最近は潮流が変わってきました.
実は,指定校推薦で入ってきた学生の入学後の成績がけっこう高い,もしくは何かの技能に飛び抜けて存在感を示す学生が多いようなのです.
私の大学でその傾向があったので,他大学の先生にもこの話題をしてみたら,「実は,うちもそうなんですよ.成績はそんなでも無いんですけど,何事にも積極的に取り組む印象です」というパターンは結構多いんです.
こうした変化の要因や理由は分かりません.でも,高校の先生としても生徒のことを考えた選択をしているのかもしれません.
指定校の学生ってだけで色眼鏡で見る教員は多いのですが,私は彼らに期待したいですね.

スポーツ推薦入試
最もポピュラーな推薦入試です.クラブ活動も大学での重要な学びの一つだという理由をつけて始めたものです.
もちろん,実際のところは優秀なスポーツ選手を入学させることで「クラブ強化」をしてメディアに登場する機会を増やし,彼らを大学の広告塔にしようという魂胆だったものです.でも,最近は「高校時代にスポーツしか取り柄がなかった高校生」を大量に釣り上げる撒き餌のようなものになっている大学もたくさんあります.

AO入試
アドミッション・オフィス入試のことで,一般的にエーオー入試と呼ばれています.
その大学・学部学科の教育理念に沿った,何か特別な取り柄のある学生を獲得するという目的で,学力よりも資質で評価しようという入試.
そうは言っても,どの大学もどうやって評価するのか曖昧なままで始めた感があるため,結局は受験者に特技とか自己アピールを披露をさせて評価するというお粗末なものになっています.
でも,ちゃんと評価すれば優れた入試であることはたしかです.比較的偏差値の高い大学では,一般入試の学生よりもAOで入ってきた学生の方が優秀である場合が多い.これは指定校推薦と似ています.
たまに科学界を騒がせる世界的大事件を起こす卒業生もいますが,それを言い出したら一般入試も一緒です.

自己推薦入試
自分の特技や勉学への想いをアピールする,つまり,「自分を自分で推薦する」という趣旨の入試です.広末涼子がこれで早稲田に入学したことで有名になりました.これをスポーツ推薦入試にしている大学も多いです.
AO入試の理念と運営が難しかったので,以前はこういう名称で実施していました.
一芸入試と揶揄されることが多かったので,今ではAO入試に吸収されていることが多いと思います.
AO入試との差別化が難しいのですけど,本来は全く違うものです.とは言え,その差別化と区別に最も手を焼いているのは,試験する側である大学だという笑えない冗談があります.

身内入試(家族推薦入試)
そのままズバリの名称では行われていませんが,ようするに受験生の保護者がその大学の卒業生であれば受けられる入試です.
そんなバカな,そんな入試があるわけないだろう.と思う人もいるかもしれませんが,こうでもして学生募集をしたいのが現在の大学です.
そうは言いましても.実はこれ,入試の理念としては間違っていないんです.なぜって,自分たちが教育した卒業生が親となって育てた子供なのですから,きっとその子も優秀なはずだし,大学の理念や方針と親和しているはずだという考え方だからです.
自分たちが自信を持って「卒業」させたはずの卒業生の子供なのですから,入学させるだけの価値があるだろうという建前は,意外と強力なロジックです.

◯◯日程入試
たいてい,3月中旬から下旬にかけて行われる,非常に遅い時期の入試です.
一般入試の延長線上にあるように思えて,実はこれ,「浪人狩り」と呼ばれる入試方式です.
以前にも「3月上旬日程」という,主要大学の合格通知が出終わる3月上旬に入試をすることが内々では話題になっていましたが,その「3月上旬日程」ですら落ちた受験生を獲得しようとすることで,ジワジワ日程を下げた結果がこの入試方式です.
チキンレースみたいですね.
そのうち「3月31日日程」とか始まるんじゃないかと期待しています.入試会場に採点者も同席し,試験直後にその場で評価して合否を出す,みたいな.

◯◯会場入試
その大学で受験させるのではなく,遠方の受験生用に出張サービスすることです.
一人でも多くの学生と受験生を確保することが,現在の大学の(生き残る)使命ですから,野を越え山を越えて向かいます.
私も以前やってましたが,なんだかピザのデリバリー,もしくは宅配業者の気分になれます.
知り合いの先生と話したことがあるんですが,これ,そのうち「自宅会場入試」とか始める大学が出てくるんじゃないかとワクワクしています.
で,入試会場(自宅)に採点者も同席することで,試験直後にその場で合格通知まで渡しちゃう,みたいな.