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保育園で虐待事件がニュースになっているけど,予想してたよりも早かったね

保育園における子供の対応に問題が現れています


保育園・こども園での虐待・暴力事件として,次々とニュースが出てきました.

園児たたいた保育士解雇、横浜 認可外保育施設、市が調査(BIGLOBEニュース 2019年7月29日)
横浜市緑区の認可外保育施設「横浜バディスポーツ幼児園長津田校」が3歳の園児の顔をたたいたとして、20代の男性保育士を諭旨解雇していたことが29日、横浜市への取材で分かった。園児にけがはなかったという。

下関・認可保育園で園児に暴力の疑い 「ただの暴力」と非難の声(BIGLOBEニュース 2019年7月30日)
山口県下関市の認可保育所で、複数の保育士が園児らを叩くなどしていた疑いがあることが29日、わかった。市は同日、担当者6人が児童福祉法に基づき、保育所へ臨時監査に入った。詳細な事実関係を調べることにしている。

2歳児に「死んでしまいなさい」、女性保育士2人を解雇(BIGLOBEニュース 2019年7月30日)
栃木県真岡市の認定こども園で、保育士2人が複数の2歳児に対し、「死んでしまいなさい」などと暴言を繰り返したとして、解雇されていたことがわかりました。

以前から保育園の現場では日常的に発生していたけど,それがマスコミにも取り上げられるようになってきた.
という可能性もゼロではありません.

ただ,保育園や幼稚園といった園児の場合は,
1)親が子供と一緒にお風呂に入ったり,着替えを手伝ったりするので虐待の兆候が見つけやすい

2)子供の年齢がとても低いので,隠さず素直に「叩かれた」「死ねと言われた」などと証言する

といった特徴があります.
また,他の園児が「◯◯ちゃんが叩かれていたよ」とその親に伝え,それが元で発覚することもあるでしょう.


なので,「本当の事件」でなくても,もともと保育園には勘違いした親も怒鳴り込んでくるケースがあったわけです.

保育士の半数が経験!モンスターペアレンツの驚愕のクレームとは?(保育士バンク 2017年03月26日)

「モンスター」と言われる人でなくても,幼い我が子ですから,親としても敏感になる時期なのでしょう.

ですから,こうした目立ってきた保育園・こども園での虐待・暴力事件は,近年における何かしらの兆候である可能性は高いわけです.




だから保育園で虐待が増えると言ったのに・・・


ですが,私としては驚くようなニュースではありません.
何年か前に「保育園問題」を取り上げたことがありましたね.

幼保一体化とか,子ども・子育て新システムとか
慎重な待機児童対策を
保育所問題を諦める
保育所問題はここまで来た


一連の記事のなかでも,
保育所問題を諦める
ではこう述べました.
保育所に預けなければならない「子供」が増えたのは,「家庭」の事情によるのです.だから,この問題を改善しようとするなら,「家庭」にターゲットを当てなければなりません.すなわち,一人あたりの所得拡大.具体的には,両親のいずれかの給与で子育てできるようになることが待機児童問題の改善目標となります.
そもそも,保育所は福祉施設ですから,本来なら無いほうがいいものです.のっぴきならない事情により仕方なく存在する施設と言ってもいいでしょう.
保育所に預けなければならない子供が増えちゃった.あぁそうか,だったら保育所を増やしましょう.ってのが,どんだけトンチンカンなのか気づくべきです.
(中略)
保育所問題は諦めるしかありません.
そのうち,「保育士が自殺」とか「児童虐待が増加」といったニュースで本件は再燃するでしょう.
その時また取り上げたいと思います.

一方で,保育士が自殺しそうな状態であることは,以前から知られていました.
でも,まだ自殺が頻発するような状態ではないようですが.
増える保育士のうつ病…休職・退職を考えよう。原因と発症のサイン、治療法も解説(保育士くらぶ)
あまり放っとくとヤバいことになるので,そろそろ対策をしないといけないと思います.


上記の記事は2016年に書きました.
ちょうど,
「保育園落ちた日本死ね」
が流行語になっていた頃です.

まだ3年しか経っていません.
なのに,もう現れたようです.

てっきり,5〜6年くらい経ってからだと思っていたのに.
そして,10年くらいすれば,「幼保・こども園」という社会システムの抜本的改革とか言い出すと思っていました.


激増した認可外保育施設が意味するもの


「認可外保育施設」とは、児童福祉法に基づく都道府県知事などの認可を受けていない保育施設のことで、「認証保育所」などの地方単独保育事業の施設も対象に含みます。(厚生労働省ホームページ)

この認可外保育施設は,何かと問題点が指摘されることで有名です.
とにかく「良いところは良い」んだけど,「ダメなところは本当にダメ」な保育施設で,2004~17年度の期間内に発生した保育施設内死亡事故の約70%(195件中、131件)が認可外保育施設です.

さらに,認可外保育施設では,一般的な保育所に入所する際に必要な,
「保育に欠ける」
という家庭状況が不要です.

ですので,「保育に欠けていない」はずの,高所得者夫婦が,共に仕事をする上で子供を預けやすいという特徴があるのです.
よって,認可外保育施設のなかには非常に高額な利用料を請求するところがあります.

認可保育施設は,月額およそ3万円〜5万円とされていますが,認可外保育施設ではこの幅が広く,およそ2万円〜10万円くらい中から選ぶことになるようです.

つまり,低所得者層や待機児童で困っている層をターゲットにした価格設定もできれば,共働きしたいので幼稚園に通わせられない高所得者層をターゲットにした価格設定もできるわけです.
※幼稚園は預かり時間が短いため,共働き家庭には不向きであるため.


そんな認可外保育施設ですが,この数年間で大きく数を変動させています.
厚生労働省から最近発表された,認可外保育施設のデータがこちら.

厚生労働省データより作成(2019年度)


ご覧のように,徐々にその施設数を増やしてきたのですが,2015年〜2016年にかけて一旦落ち込んだあと,2017年には急増しているのです.

この2015年〜2016年の施設数の急激な低下は,認可外保育施設が取締やペナルティなどで潰れたわけではありません.
当時大問題として世間を騒がせていた「待機児童対策」として,認可保育園を増やすために,一部の認可外保育施設を認可保育園に格上げしたことによるものです.

施設やスキルが不十分なものを無理に「認可」させるという,この政府の下衆なやり口が当時は批判されていました.
その後,「認可外保育施設」にビジネスチャンスを見出したこの業界は,数を圧倒的に増やしたんですよ.

つまり,本格的に「保育」に対するモラルハザードが始まったわけです.
そして現在に至ります.


これからは,保育はビジネスチャンスとして捉えられるでしょう.
いい意味でも悪い意味でも,保育所は「福祉施設」であるという認識は薄れていきます.

いい意味としては「子供の環境が相対的には良くなっている」ことを意味します.
児童の死亡ニュースや虐待ニュースがあったとしても,それはほんの一握りの出来事.
多くの場合,共働き家庭の要望を素直に受け入れるサービスが充実した施設となります.

市場原理からすれば,子供にも児童にも悪い対応をする施設は潰れるわけですから,死亡事故や虐待の発生を施設は抑制させるはずなのです.

一方,悪い意味としては,そうした事態がこの先どんな日本社会を生むのか,全くわからないという点です.


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