2016年3月19日土曜日

保育のこれから2

前回の記事では,待機児童問題について現政府がやっているのは
「保育所の受け皿を増やしただけで,保育所を増やしたわけではない」
ということをお話しました.

もっと言えば,そもそも「保育所を増やす」なんてのは目先の課題で,ましてや受け皿を増やすなど論外.待機児童問題の本質は「保育に欠ける世帯を減らすこと」ということも論じたところです.
※こういう “目先の問題解決に勤しむメンタリティ” を育みやすい「問題解決型の教育」については■問題解決能力を高めることの危険性も合わせてお読み下さい.

しかし,「保育に欠ける世帯を減らすこと」が重要だと説いたところで,虚無感に襲われます.
「女性が輝く日本」
とか
「一億総活躍社会」
などというものを,あろうことか「保守」として取り組む現政府が世論の支持を受けて推進しているわけですから,なんとも悲しい気持ちになるのです.

そんなわけで,待機児童問題について現政権は「保育に欠ける世帯を減らす」のではなく,「保育所の受け皿を増やしましたよ」という国会答弁をしているわけですが,
7日の参院予算委では、福島瑞穂氏から「政策の失敗だ」と批判された首相が「政策の失敗というが、失敗ではなくて、福島委員が政権におられたときよりも(保育所の受け皿を)20万人、40万人増やしている」と色をなす場面もあった。[産経新聞2016.3.14]
それについては,以下の厚生労働省のPDFページにある,
保育所等関連状況取りまとめ(平成27年4月1日)(厚生労働省)
を見ながらお示ししたデータがこちら↓

一見して気になる点は,「保育所が減ってるじゃないか」というところでしょうか.
そうです.つまり,多くの世帯が「保育所」を求めてさまよっているにも関わらず,「保育所」を減らして「保育所っぽい施設」を増やすことにより,「ほらね,“保育所の受け皿” は増えたよ」ということなのです.
死ねばいいのに,とネットで叫びたくなる気持ちも分かります.

が,何度も言いますけど,それはこの問題の重要なところではありません.
保育所を求める家庭が増えてしまっている,ということが深刻な問題なのです.
むしろ,今回の保育所・待機児童に関するネット騒動って,問題の本質をそらすために撒かれた種ではないかと陰謀論を唱えたくなるほどです.
「待機児童問題を解決しろ」という中にあって,結局その解決方法は「とりあえずでいいから,保育サービスを拡充しろ」という議論にしか目が向かないからです.

何が言いたいのかと言うと,過去記事の■幼保一体化とか,子ども・子育て新システムとかでも書いたように,こうした突貫工事的な対策では,まともな保育所が減っていくでしょ.そしたら幼児虐待や事故が多発するようになって,保育環境が劣悪なものになるでしょ.それって日本のためにならないよね.ということなのです.

そして保育所の規制緩和の後,案の定 “そんな事件” が発生し,
これまた案の定,そのニュースに対する世間の反応が「あんな感じ」だったわけです.
※詳細は■ベビーシッター事件から考える保育をどうぞ.

さて,「保育のこれから」というタイトルにしているので,これからの話をしたいと思います.

はっきり言います.保育は確実に崩壊,劣悪化します.
これはもう止められません.止めるすべが無いのです.
「もはやこれまで」とはこの事です.

前回の記事でも書きましたが,日本の保育所が適切に機能するためには,「保育に欠ける世帯」が少なく,家庭で保育できる環境と風潮(社会)があることが前提条件となります.
保育士は,そうした保育に欠ける家庭に寄り添い,それを補完することを業務の一つとしているからです.
つまり,日本社会ならではの保育環境を保守するのが保育所の役割であり存在意義と言っても良いのです.

ですから,そうした「保育に欠ける世帯」が当たり前,多数派となる社会が訪れたら最後.その社会では “我々が知る保育所” なんてものは期待できません.
その時この社会は,保育所ではなく「幼児預かり所」を求めることになります.
幼児を抱えた家庭は,その子を預けて仕事をするのが普通でしょ.それが日本のスタンダードでしょ.
「保育」が存在しない中にあって,どうして保育所が必要でしょうか.

だから3年前の記事で私は「幼保一体化」の動きにある本質的な問題点は,「保育所解体」にあると書いていたのです.その箇所を引用しておきます.
ここで問題なのは,つまり現状の案ですと,
保育所解体ということになるのですよ.
いえ,保育所解体が悪いと言っているのではありません.
この子供・子育て支援新制度の問題点というのは,保育所解体だけではなく,保育の理念や心意気も解体しようとするところにあります.
そして3年が経過し,この国では見事に保育の理念や心意気を解体しようとする動きが進行しておりますね.坂の上から転がり始めた石が,何かのきっかけで元に戻るなんてことはないのです.
悲し過ぎて笑けてきます.

現首相(安倍)の言葉をもう一度,
「政策の失敗というが、失敗ではなくて、福島委員が政権におられたときよりも(保育所の受け皿を)20万人、40万人増やしている」と色をなす場面もあった。[産経新聞2016.3.14]
そんなに場所を増やして,その仕事は誰がするんだ?と言えば,
首相「外国人受け入れ拡大を」 労働市場改革へ諮問会議で指示
ということですから,これから増えるであろう「幼児預かり業」はそういう方針なのでしょう.

だって,これから増えていくであろう「保育に欠ける世帯」が多い経済・社会にあって,保育士の待遇を良くするなんてことは至難の業です.ぶっちゃけ無理でしょう.
お定まりの「民営化」と「移民」で切り抜けようとするに決まっています.

だからもう一度はっきり言います.
保育所はどんどん劣悪な環境になります.劣悪にすることが改善の道だと思っているからです.

ではどうすれば良い方向に向くのか?
もう無理だと思いますよ.


関連記事
保育のこれから
幼保一体化とか,子ども・子育て新システムとか
ベビーシッター事件から考える保育
問題解決能力を高めることの危険性