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コロナ騒動と9月入学の議論について

犯行グループらは「この機に乗じて9月入学を進める」などと意味不明なことを述べており・・・


私も当初は「さすがにバカバカしい」と思っていたのですけど,あれよあれよと言う間に大きな話題となっていました.

いわゆる『9月入学』導入についてです.


これ,大学入試改革と同じ匂いがいします.
私の直感としても,碌なことにならないでしょう.

あまりにも非現実的で愚かしいと思っていたんですけど,こういうのを放置しておくと推進派が勝手に盛り上がっててメチャクチャになるという前例は多かったので,今回はこの『9月入学』の導入について冷水を浴びせておくことにします.


9月入学を導入したい人たちの理由を整理してみました.

(1)4月入学するはずだった生徒の学習遅れを取り戻す
(2)9月入学はグローバルスタンダードであり,留学生の受け入れ・送り出しに好都合
(3)9月入学へと変更するためには,コロナ騒動に乗じるのがタイミングが良い

上記の3つが主だったものでしょうか.




なぜに9月入学?


とにかく推進するための議論が破茶滅茶です.
まず,「なぜ導入するのか?」からして動機が不純.

とどのつまり,
「コロナ騒動の混乱に乗じることでスムーズに改革できるぞ」
っていう,最低最悪の発想ですよね.

こういう進め方をする奴を,私は信用できません.


次に,9月入学の議論よりも先にやるべきことがあるはずです.
今回のコロナ騒動で「学習遅れ」が発生しているとしても,その理由は非常に明確.

すなわち,「日本の教育環境が脆弱だった」ことに他なりません.
反省すべきはこの点であり,この改善にまずは全力を傾けることが求められます.

国として最初にやるべきことは,オンライン授業や自宅学習の充実といった「学習環境の整備」のはずです.

その理由は大きく2つ.
1つ目は,「9月に感染症騒動が終息している保証はない」
2つ目は,「感染症以外の長期休校騒動がいつまた発生するやもしれない」

学習環境の整備を放ったらかしにして,付け焼き刃のように9月入学を導入したところで,9月から感染症が再拡大したり,新たな国際的動乱(紛争・テロ,異常気象,大気汚染など)が発生したら「9月入学できない」状態になってしまうでしょ?

そしたら,その時には「4月入学に戻してはどうか?などと議論するつもりなのでしょうか.

違いますよね.
国・地方の行政が進めるべきは,学習環境の整備であり,子供たちがシームレスに教育を受けられる状態をつくることが大事なんです.
4月から年度が始まっていようが,9月から年度が始まっていようが,同じような教育や学習コンテンツが受けられる環境を用意することが行政の役割です.
本質を見失ってもらっては困ります.


だいたい,9月入学にしたところで「学習遅れ」が改善されるわけではありません.
もう既に遅れているんです.
推進している皆さんは,9月入学にすれば子供の成長時間がチャラになるとでも思っているのでしょうか.
そんな議論をする時間があったら,さっさと教育環境の整備に予算を割いてほしいものです.


具体例をあげれば,もう十数年前からずっと,
「今の時代は,生徒・学生一人に1台のパソコンを用意する必要がある」
「インターネットを利用した授業をすべき」
と言われていました.
私が学生の頃からチラホラ出ていた話題ですから,もう長いですよね.

それから20年ほど,全くの手つかずでここまできたことになります.

私が以前やっていた大学の授業にしても,オンライン授業とまではいかなくても,ネット上で完結したり処理できるものはたくさんあって,そういう授業をやりたいという教員もたくさんいました.

それを頑なに「対面式の授業でなければ認定しない」と言ってきたのは行政です.
こいつら,マジで万死に値します.


どうせ今回の「9月入学」にしても,チャラい感情と動機で推進してるんじゃないんですか.
お願いだから真剣にやってくれと.



どうして9月入学?


4月入学でなくなると,日本の慣習である「4月始まり」との統一性が弱まりますよね.
これって結構な勢いで面倒だと思うんですけど.

日本では会計年度も4月〜3月制ですよね.
これと同じく,教育機関が4月入学3月卒業であることのメリットは大きいと思われますし,この制度とシステムで回ってきた社会をイジることによるデメリットや混乱が大きいはずです.

実際,日本の学校や大学が4月入学になっているのは,日本の会計年度が4月始まりだからです.
諸外国もおおよそこのパターンに習っています.
会計年度(Wikipedia)

明治19年(1886年)から約130年にわたって利用してきた日本の経済社会システムを,たかが感染症による混乱ごときで,今さら抜本的に変更するのは暴挙というものです.


それに,そもそも「9月入学はグローバルスタンダードではない」のです.

「9月入学にすれば,留学生が喜ぶ」ですって?
バカ言っちゃいけない.

諸外国の入学年度は,たしかに「9月入学が多い」のですが,とてもじゃないですがグローバルスタンダードなどと言えるほどのものではありません.
以下に,諸外国の入学年度をまとめました.
1月 シンガポール、マレーシア、バングラデシュ、南アフリカ
2月 オーストラリア、ニュージーランド、ブラジル
3月 韓国、アフガニスタン、アルゼンチン、ペルー、チリ
4月 日本、インド、パキスタン
5月 タイ
6月 フィリピン、ミャンマー
7月 米国
8月 スイス、スウェーデン、デンマーク、ノルウェー、フィンランド、台湾、ヨルダン
9月 英国、アイルランド、ドイツ、フランス、イタリア、スペイン、ポルトガル、オランダ、ベルギー、ギリシア、ロシア、カナダ、メキシコ、キューバ、中国、インドネシア、ベトナム、イラン、トルコ、サウジアラビア、エチオピア、ナイジェリア
10月 エジプト、カンボジア
引用元:諸外国の学校年度はどうなっているのか(ニッセイ基礎研究所HP)

安倍首相が大好きなシンガポールは1月入学.
国際化と留学生の受け入れで成功しているオーストラリアは2月入学.
お隣の韓国は3月入学.
教育立国として留学生も多いフィンランドは8月入学.
アメリカは9月入学も多いですが,州や大学によっては7月入学になっています.

9月入学の国が「多い」ってだけで,ぜんぜんグローバルスタンダードではないんです.


「留学生に好都合」とか言ってる人もいますけど,そういった留学生の受け入れに成功している国が9月入学である法則性も見られません.
むしろ,その逆でしょう.


そもそも,留学生が「9月入学」なんかに拘るわけがないでしょう.
私の教え子には,アメリカや中国,オーストラリアに留学をしている学生が何人かいますが,彼らが年度始まりが日本と異なることを理由に留学を躊躇したことはありません.

それは日本に留学している外国人留学生も一緒.
「4月入学だから日本には行かない」などと言うわけない.

来る留学生や行く留学生の数を増やしたいなら,もっと根本的なところから見直すべきで,それを9月入学のせいにしている時点で負けなんです.


もっと言えば,どうして「小・中・高・大」を一括して9月入学で検討したがるのか?
特に大学については,各大学が独自に検討すればいいだけのことでしょう.
わざわざ国策として9月入学に統一する必要はありません.

大学であれば,前期・春学期(4月始まり)と後期・秋学期(9月始まり)で別々に入学者がいてもいいじゃないですか.
当然,3月卒業と8月卒業がいることになります.

今だって,夏季(春学期)卒業を用意している大学もたくさんあります.
現状,卒業年次においてわずかな単位が取れずに留年したり,それこそ短期留学・交換留学などによって卒業タイミングがズレた4年生が,次年度の前期・春学期で単位を取って卒業するパターンが多いですが,これを制度化するところから始めればいい.

わざわざ全国一斉に9月入学にしなくても,各大学の都合に合わせてやれば済むことです.


上記の理由を読んでもらって,「それでも日本を9月入学にしたい」という人は,よほどの物好きとしか言いようがありません.
でも,お願いですから周囲に迷惑をかけないでくださいね.


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