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感染予防とマスクについて|映画「クワイエット・プレイス」を参考にしながら

マスクとか,もういいよね


マスクしていないと入店できないお店がある
マスクしていないと白い目で見られる
マスクが手元にないと不安でしょうがない

そんな世の中になってしまいましたが,身も蓋もないことを言ってしまえば,インフルエンザやコロナなどの「ウイルス感染症の拡大」と「マスク着用」に強い関係性は認められていません.

「マスクで物理的に口を覆えば飛沫が少なくなるのだから,飛沫感染性の感染拡大は抑えられるんじゃないか?」
という,思考実験的な推測で話が進んでいるものです.

以下,前提として,
(1)非感染者がマスクしても,自分が感染することは予防できない
(2)感染者がマスクすることで,周囲への拡大予防には一定の効果がある
ということで話を進めていきます.

ただ,(2)についても科学的根拠は結構弱いのですが.

実際,マスクの感染拡大予防効果に科学的根拠が乏しいことから,スウェーデンでは「マスク着用は推奨しない」となっているようです.

そんなスウェーデン情報を熱心に発信をしているYouTubeの投稿者がいました.


なお,「無防備でいろ」というわけではなく,スウェーデンでは,
「科学的根拠の乏しいマスクを着用するよりも,確実に効果のある他者との間隔を空ける(ソーシャルディスタンス)を徹底しなさい」
ということにしているようです.

事実,スウェーデンではマスクする人はほとんどいないとのこと.


昨今,「EBPM:根拠に基づいた政策立案」というものが騒がれていますよね.
内閣府におけるEBPMへの取組(内閣府)

もし,マスク着用を政策として市民・国民に課そうとするなら,EBPMに照らせば,「不要」という結論になります.
だって,マスク着用に感染予防の根拠は無いからです.


ちょっと寄り道で話すと,最近になって.2020年上半期のコロナ騒動の反省が各国でされていますよね.
そしてまさに.この「EBPM」に沿わず,「国民感情」に従ってしまったという反省がされています.

これは日本だけのことを指しているのではありません.
世界の多くの国々で起きました.

その最たるものが都市封鎖(ロックダウン)や,強い外出自粛要請です.

もともと,ウイルス感染対策として「ロックダウン戦法」には科学的根拠がありません.
むしろ,国民の生活を混乱させ,経済を破壊するので避けるべきものとされていました.

ところが,いざ新型コロナ騒動が発生すると,世界中の国々の「国民感情」がロックダウンしろと自国に要求.
多くの国で,EBPMではなく,国民感情に従った政策が展開されてしまったのです.




マスクに「感染拡大効果」がある危険性は問わないのか?


「そんなに意固地にマスクを嫌わなくても,ソーシャルディスタンスにプラスして,マスクも着用すればいいじゃないか?」
って思う人もいるでしょう.

でも,マスク着用と感染拡大の関連性について,その科学的根拠が「不明確」ということは,
「マスク着用で感染を拡大させている可能性も捨てきれない」
ということをも意味するのです.

だからスウェーデンは「推奨しない」となっているのでしょう.
だって,科学的根拠が無いんだから.


実際,マスクを義務付けたところで,多くの人が「正しく着用・使用」してくれるとは限りません.

コロナ禍の初期にいろいろと「マスク使用上の注意」として騒がれたように,
・マスクの着脱は慎重に行う
・マスクに触れたら,すぐに手を洗う
・(感染拡大を防ぐ目的であれば)外さない.着用し続ける
・なるべく頻繁に交換する
といったものがありました.
これを徹底しないと,マスク着用の効果は期待できないからです.
でも,これを守れている人なんて,ほとんどいないんじゃないでしょうか.

それに,「なるべく頻繁に交換する」というのはかなり重要で,(上述したYouTube動画でも述べられているように)マスクに付着したウイルスは7日生存するというデータもあるようです.

つまり,非感染者が同じマスクを長時間交換も洗浄もせず使用し続けると,エアロゾルとして浮遊したウイルスなどを捕まえ,溜め込んでいくことになり,(もともとマスクにウイルスを防ぐ効果は無いのですから)それを濃厚状態で吸い込むことになります.
だとすると,非感染者がマスクをして都市生活を送ると,感染拡大を促進しちゃう可能性だってあるのです.

もちろん,これは予想でしかありませんが,その可能性は否定されているわけじゃないので,無視できません.

だから,科学的根拠に基づいて「マスク着用は推奨しない」というスウェーデンみたいな国や地域・自治体,そして個人がいるわけですよ.
マスクして口元にウイルスをかき集めてる場合じゃねぇっ,ってこと.

そんなことより,距離をとること,換気をすることの方が大事なんです.
最近,「マスクよりも換気」っていう声を聞くことが多くなりましたが,そんな理屈的な背景もあるんだと思います.


人間のコロナ対策の杜撰さ,行動の矛盾,不徹底を見ることができる映画『クワイエット・プレイス』


この新型コロナ騒動に乗じて楽しめる映画を一つ紹介します.

ジョン・クラシンスキー監督,主演は奥さんであるエミリー・ブラント.
人間が取り組む「防御の不完全さ」を一つのテーマにしている映画が,この「クワイエット・プレイス」です.

今なら,アマゾンプライムビデオで無料視聴できますよ.

この作品は,本国アメリカの評論家や映画好きからは好評を得ていますが,どうやら日本での評価は芳しくありません.
Yahoo映画でも,評価は星3.1です.




その理由は「登場人物たちがバカだから」というもの.
ホラー映画にありがちな,「どうしてそんな行動をとるんだ!」とイライラするタイプの映画として位置づけられています.


ただ私は,学生時代から映画をたくさん見るようになって,世間から「駄作」とされている映画にも「見方」「解釈」を深くすることで,違った楽しみ方ができるようになりました.

あの,近年稀に見る駄作とされる「デスノート Light up the new world」も,どのように解釈すれば駄作に見えないかと論じられるようになっています.
体育学的映画論「デスノート Light up the new world」


この「クワイエット・プレイス」もその一つと言えます.

ストーリーもちょうど「新型コロナ騒動」と一致します.
2020年,宇宙からやってきたエイリアンのために世界中が恐怖のどん底に陥っている,という設定です.
エイリアンの能力は謎に包まれていますが,どうやら聴覚が極端に発達している反面,視覚がないというものです.
主人公たちは,家族でエイリアンから逃げながら逃亡生活をしています.
音を出したら襲われるので,できるだけ音をたてずに生活しているのです.
さて人類は,このエイリアンから逃げ切ることができるのか.
そして,撃退する方法はあるのか?
という物語です.



【以下,重大なネタバレはありませんが,まだ映画を見ていない人が注意してください】

まず,この主人公たち家族一行ですが,社会的弱者・マイノリティの振る舞いとして描かれていますよね.
「声を出せない人々」というメタファーです.

強者・捕食者から怯え,音をたてないように,ひたすら裸足で逃げ惑う.
そんな姿は,明らかにアメリカ社会の貧困層がモデルです.


で,そうやって逃げる彼らの行動が,これまた「一般的な視聴者」の不評をかっています.
曰く,「バカすぎる」というものです.

音を出したらいけないはずなのに,不用意な生活をしていたり,もっと効果的な逃亡方法があるのに,それを実行してなかったり.

例えば,落としたら音が出そうな荷物を簡単に運んでいたり,生活空間が整理整頓されておらず,ちょっとしたミスで大きな音が出そうな環境だったりします.
あと,「大きな音が出る場所(滝など)の近くでは,声をたてることができる」という設定があるのですが,だったら最初からそこに住めばいいのに,と思ったり.

学生時代の私なら,一般的なレビューコメントと同じような感想をもって,「面白くない映画」「おバカ映画」と評していたかもしれません.

しかし,こんな簡単なことを,監督や脚本家が分かっていないわけがないでしょう.
つまり,わざとそういう描写にしてるんです.


人間とは不思議なもので,誰しもが「どうしてこうしないのか?」と他人が思うことを,当の本人たちは実行できないものなのです.

貧困にあえいでいる人々もそうで,富裕層,一般層からすれば,
「そんな簡単なことも出来ないのだから,貧乏なままなんだ.これは本人たちの能力の問題だ」
と言われてしまうようなことを,やっぱりやれないままでいるんです.

それは,その日の生活に精一杯で,置かれた状況に耐えることで満足してしまうからです.
「もっとこうすればいいのに」
なんて,外からは簡単に言えますが,それができない心理状態をこの映画では描いています.


主人公たちの「エイリアン対策」もかなり杜撰ですよね.
これも,今年世界中を襲った新型コロナ騒動と一緒です.

上述した「マスク着用」と同じで,なんの根拠もないのにやっていたり,客観的に見たら杜撰だと思えることをやってることが多いんです.


それに,「エイリアンの恐怖に陥っている」と言いながら,結構普通に生活している様子もあります.
これもコロナ騒動と一緒です.

世界中の多くの人々が「恐怖に陥っている」としても,みんなして朝から晩まで四六時中「恐怖に陥っている」ことなどできません.
まして,何日も続けて恐怖に陥ってられない.

だから杜撰な対応とか,エイリアン対策が面倒になってしまう瞬間があっても仕方ありません.
これが映画におけるリアルな部分です.

コロナ禍でも,あれだけ恐怖を煽っていても,やっぱりパーティーしたり,ビーチでサーフィンする人はいます.


この「クワイエット・プレイス」ですが,アメリカでは評判が良かったので,続編が作られることになったようです.
監督・主演その他に大きな変更はないようですので,きっと上記のような解釈ができるストーリーになっていると思われます.

ウィキペディアには,
2019年10月、撮影監督のポリー・モーガンが「続編は成長した子供たち(リーガンとマーカス)に焦点が当たります。2人は世界を探検すると共に、自分の身を自分で守る術を習得していくのです」と述べた。■クワイエット・プレイス PARTII(Wikipedia)
とありますから,おそらく,社会的弱者や,世間に声を出せないマイノリティが,どうすれば置かれた状態を改善できるか? という物語になっているのかもしれません.



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