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やっぱり中国がTPPに参加表明してきた|だからダメだと言ったのに

「案の定」を絵に書いたような展開


「TPPは中国包囲網である」
「アメリカ主導の自由貿易を推進することで,内向きの保護貿易を駆逐する」
「アジアの成長をとりこむ」

約10年前,そんな言葉が日本国中で踊っていました.
覚えておいででしょうか?
思い出しましたか?
そうでしたよね.


2008年から話が持ち上がったこのTPPですが,その10年後の2018年に「TPP11(CPTPP)」としてスタートしています.
しかしながら,アメリカ主導だったはずのTPPから,2017年にアメリカが離脱しちゃいました.

「アメリカ主導の国際貿易秩序の構築が始まる」
「中国に対抗する巨大貿易協定だ」
などと浮かれていた人は,ここで寂しい想いをしたことでしょう.

そして今回の中国の参加表明.
中国・習主席がTPP「参加を積極的に検討」と表明 米国をけん制(毎日新聞 2020.11.21)
中国の習近平国家主席は20日、日本など11カ国が参加する環太平洋パートナーシップ協定(TPP11)について「参加を積極的に検討する」と初めて表明した。日本や米国、中国など21カ国・地域が参加するアジア太平洋経済協力会議(APEC)の首脳会議で述べた。
中国国営新華社通信によると、習氏は「経済のグローバル化は逆風に見舞われ、単独主義や保護主義が台頭している」と米国をけん制し、「アジア太平洋地域は多国間主義を堅持し、自由で開放的な貿易と投資を促進すべきだ」と強調した。

中国としては,ここで「自由で開放的な貿易と投資を促進すべきだ」と言っておけば,アメリカが世界の経済リーダーではないことを高らかに宣言できるわけですから,もしTPPに参加できなくても点数稼ぎにはなるということですね.

「中国に自由貿易ができるものか!」
と貶す人もいるでしょうが,そんなこと,現実の国政的パワーバランスでねじ伏せられる可能性もありますよね.

だって,現在のTPP参加国のなかで,中国に文句が言える大国ってありますか?
ないですよね.
せいぜい,日本とオーストラリアが協力するくらいじゃないでしょうか.
それでも中国に歯向かえる国力ではありませんけど.

実際のところ,そのために先日は日本とオーストラリアが協力関係を確認したんでしょうし.
日豪円滑化協定、大枠で合意 防衛協力、一段と深化―首脳会談(時事通信 2020.11.17)
菅義偉首相は17日、来日したオーストラリアのモリソン首相と首相官邸で会談した。中国による覇権主義的な海外進出をにらみ、日本が掲げる「自由で開かれたインド太平洋」構想実現に向けた連携の強化を確認。自衛隊と豪軍の相互訪問時の法的地位を定める「円滑化協定」について大枠で合意した。

中国としては,とりあえず良い顔して参加しておき,そこで横暴の限りをつくして脱退.
それでも,欲しかったものが得られればOK,みたいなことができるのが中国です.
普通の民主主義国家と一緒にしてはいけません.


中国の身になって考えてみれば,アメリカが抜けて,しかも,ノーガード・全裸戦法をとっている日本がいるTPPですから,ぜひとも入りたいところです.

最近は農業領域をノーガードにしましたよね.
2017年には「農業競争力強化支援法の成立」,2018年には「種子法廃止」,そして今年は「種苗法改正」.
今後は「農協の弱体化」や「農家への補助金カット」あたりが検討されそうです.

これにより,大国または大企業がその気になれば,日本の農業分野を牛耳ることができるようになっています.
中国が入ってきたら,日本の田園風景は一変するかもしれませんね.悪い方に.


もはや,「種苗の海外流出を防ぐために!」などと言っていた種苗法改正なんか,中国のTPP参加が実現すれば,全く問題にされない可能性があります.
堂々と日本の農家に分け入ってきて,気がついたら中国資本や中国からの所得支援を受けながら経営する農家が全国に見られるようになっちゃうかもしれません.
っていうか,実際そうなるでしょう.

つまり,海外流出どころか,日本の農地そのものが中国の意のままになるってわけ.


私が最もあり得ると考えているシナリオは,中国企業による日本の農業のオートメーション化支援です.
特に,AI事業やドローン技術は,日本より遥かに中国が進んでいます.
実際,私自身が中国のこれらのテクノロジーに注目していますので.
現実に,世界で農薬散布ドローンを製造しているのは,ほとんどが中国メーカーです.

農地管理や農薬散布などを中国が支援してくれるとなると,一気に農業の中国化が進みます.
日本の農業は担い手不足が深刻ですから,そこに支援をしてくれるっていうなら,喜んで参加する農家は多いはずです.

中国としては,日本の農業技術をデータ化して取得できるチャンスでもあります.
技術をデータ化すれば,それを基に自国の広大な土地で大規模栽培ができるようになるのですから.

そのあたり,日本の農林水産省も対策を講じておかないと,取り返しのつかないことになります.
農業技術やノウハウを盗まれるだけ盗まれた後に,
「これからは無形の資産である,日本の農業技術を守らなければ」
などと寝ぼけたこと言ってる姿が目に浮かびますが.

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