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近代オリンピックの種目について|近代五種競技から馬術が消えるらしい

こんなニュースが入ってきました.
近代五種、馬術除外に「混乱」(共同通信 2021.11.5)
日本近代五種協会の冨安一朗事務局長は5日、国際近代五種連合(UIPM)が現行方式の水泳、フェンシング、馬術、射撃とランニングの5種目から馬術を除外すると発表したことを受け「大変厳しい。混乱している」と話した。
2012年ロンドン五輪の女子に出場した阪部(旧姓黒須)成美さんは「やっていた身としては馬術がないのは考えられない。英国の新聞が報じたように、もし馬術が自転車に置き換わったとしたら、それはほぼトライアスロン。近代五種のオリジナリティーに関わること」と危機感を口にした。
東京五輪の金メダリストらは、自身のSNSなどで反対の意思を表明している。

そもそも,近代五種を知らない人がいたりするんですけど.
一応「体育・スポーツ」を専攻してきて,近代オリンピックや古代オリンピックについてもそれなりに勉強してきた身としては,ついにここにメスが入るようになったのかと,ちょっと寂しい気持ちになってしまいます.

とりあえず近代五種競技について簡単におさえておくと,ウィキペディアにはこうあります.

19世紀、ナポレオン時代のフランスで、敵陣を突っ切って自軍まで戦果を報告することを命令されたフランスの騎兵将校が、馬で敵陣に乗り込み(馬術)、途中の敵を銃と剣で討ち倒し(射撃・フェンシング)、川を泳いで渡り(水泳)、丘を越えて走りぬけた(ランニング / クロスカントリー)、という故事を元に、近代オリンピックの創立者であるクーベルタン男爵が古代ギリシアで行われていた古代五種(レスリング・円盤投・やり投・走幅跳・スタディオン走)になぞらえた近代五種として競技化を提案したのが始まりと言われる。1912年の第5回ストックホルムオリンピックにおいて種目に採用された。
近代五種競技(wikipedia)

もともと,創立者ピエール・ド・クーベルタンが近代オリンピックを企画した理由の一つが,
「普仏戦争で打ちのめされたフランスの士気を高めるため」
というのがあります.

クーベルタンがスポーツに期待したのは,「屈強な身体とタフなメンタルの養成」であり,そのスポーツの普及のためにオリンピックを創立したというわけ.
当初は「フランス国内でスポーツを普及させよう」というものだったようですが(だって,フランス軍を強化するためですから),そのうち話が大きくなっていって,ヨーロッパ全体で,そして世界中を巻き込んだスポーツの祭典になっていくのです.
そうした経緯を詳細に取材してまとめた本があって,大学時代,それを元にした授業を受けてました.

ジョン・マカルーン著『オリンピックと近代 ―評伝クーベルタン―』


すでに絶版になっていて,結構お高い本なのですけど,師曰く,
「かなり質の高い,近代オリンピック創立の背景と事情を取材・分析した名著」
とのことです.

授業の時はコピーで抜粋されたもので勉強していたのですが,大学教員になってから,ふと思い立って古本を購入しています.
せっかくスポーツの「学者」のはしくれになったのだから,全部読んでみたいという気持ちになったわけです.


さて,そんなちょっとミリタリーチックな理由と経緯で始まった「近代オリンピック」なのですから,クーベルタンが近代五種競技を提案するのも当然だったのかもしれません.

で,今回その創立者の哲学が詰まった近代五種競技を改定するっていう話になっているわけですね.

個人的には馬術は残してほしいし,それが自転車になってしまったら「近代五種」としての意義と意味が消えてしまうのではないかと残念な想いが強いです.
でもまあ,このままだと試合に出られる選手が限られてしまうので,準備が大変なものは簡略化したいというのもわかります.

また,観戦するのが大変ということもあって,マイナーな競技として注目されにくいという側面もあるようです.


せっかくですから,この近代五種競技をもっと「観る側」からも魅力的なものにする提案をしてみたいと思います.
例えばこんなのはどうでしょう.
フェンシングの実施方法を工夫し,馬術を競馬方式にし,「ランニング」「射撃」「水泳」をまとめて実施するタイムアタック競争にするのです.
つまり,トライアスロンみたいな感じ.

選手はまず,フェンシングの対戦から開始します.
抽選で選ばれた者同士で対戦し,勝った方が先に「ランニング」へと移ることができるのです.
負けた方は,30秒とか1分後くらいからスタート.
試合会場はスタジアムの中央(芝生の部分)とかに設置したステージでいいんじゃないでしょうか.

次のランニングは,現在の「レーザーラン(クロスカントリー方式)」と同じで,「射撃」を伴いながら走ります.

その後,スタジアムをランニングしながら併設されたプール会場に移動.
そこで250mを自由形で泳ぎます.

プールからあがったら,そこには馬が用意されています.
水びたしの体で馬に飛び乗り,そこから競馬コースへと突入.
そのまま馬と一緒にゴールするというもの.
水着スタイルで馬に乗って歓喜するという,すこしシュールな絵面が得られます.


ちょっと会場設営が大変なところはありますが,これで観戦する魅力はかなりあがると思います.
それに,種目を考案した故事に近い競技特性にもなるでしょうし.


他にも,この五種競技は「古代五種」「近代五種」ときているのですから,いっそのこと「現代五種競技」を新たに用意するのもいいかもしれません.

古代五種が,
「走幅跳」
「円盤投」
「スタディオン走(短距離走)」
「やり投げ」
「レスリング」

近代五種が,
「ランニング」
「フェンシング」
「水泳」
「射撃」
「馬術」
というものですから,現代五種もそれにならうのです.

現代版ならこんなのはどうでしょう.
とあるベトナム帰還兵が,保安官に反抗して田舎町で暴れまわったという故事に基づいて,
「総合格闘技」
「トレイルランニング」
「アーチェリー(コンパウンドボウ)」
「バイク(モトクロス)」
「クライミング」
の5種目で総合得点を争うのです.

トレイルランニングしながらアーチェリーとか,クライミングしながらアーチェリーとかでもいいですね.
もちろん,そのアーチェリーの矢じりには謎の爆薬が詰め込まれている設定なので,的に命中したら大爆発を起こすようにします.
これで観戦する魅力も高まるというものです.

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