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「仮面ライダー BLACK SUN」の評価が真っ二つ

ということは,観ておいて損はない傑作ということを意味する


って私は位置づけています.

以前記事にした仮面ライダーBLACKSUNのことです.


Amazonプライムビデオで公開されていますが,そのレビュー評価が大混乱状態なのです.


なお,以前の記事で私は,本作を絶賛してました.
その後,他の人達はどう思っているのか検索してみたんですが,これがまた賛否両論というか,むしろ結構な勢いで否定的に解釈されているようで.

Amazonプライムビデオの「星の数」については,5つ星と1つ星が多いという,典型的な賛否に割れた評価になっています.
つまり,本作が響く人と,反発してしまう人とに分かれているようです.

実際のところ,こういう賛否に大きく割れる作品というのは,映画にせよドラマにせよ,小説でも漫画・アニメでも実用書であっても,観て・読んで損はないものと言えます.

そういうものは,その多くが,
「解釈が難しいため読解力のない人から批判されているが,内容の濃厚さを称賛されている作品」
もしくは,
「潔くエンタメを追求したため称賛されているが,内容の薄弱さを批判されている作品」
というものになるでしょうか.

というわけで,おそらく今回の仮面ライダーBLACKSUNについては,前者になると思われます.

本作を否定的に捉えている人たちのコメントをまとめると,
「仮面ライダー作品に政治思想やイデオロギーを入れるな」
「実在の政治家との関連性が強すぎる」
「怪人がコスプレ感がありすぎる」
「世界観にリアリティがなく,設定が矛盾しているところがある」
「わざわざ仮面ライダーブラックをリブートする必要性が感じられない」
といったものです.


これらについて私見を述べみたいと思います.
たくさんのレビュアーから指摘されている,「設定」とか「世界観」についてですが,私としてはおかしさを感じたりはしませんでした.

とりあえずSFとしての不思議な状況(世界)が存在していて,それがどのようにして発生したのかは,劇中でちゃんと提示されていたはずです.
その上で,本作が示しているのは,
「実際の世界における,筋の通らない意味不明で厄介な状況というのも,その国の社会や民衆,政治家たちが自分たちの手で生み出してきた状況なのだ」
というメッセージではないでしょうか.

これについて,以前の記事でも指摘したように,岸信介(および孫の安倍晋三)と統一教会問題が,あまりにもタイムリーになったとも言えます.
「先日暗殺された実在の政治家を彷彿とさせる演出はいかがなものか」といった指摘もされていますが,暗殺事件は本作が製作されるより後のことです.

むしろこのことは,
「朝鮮系宗教団体と手を結んでいながら,表向きは韓国・北朝鮮と対決姿勢をみせて保守・右派勢力からの支持を得ようとする某政治家一族を揶揄している」
という見方の方が適切ではないでしょうか.

そもそも,これはライダーファンの間では有名な話のようですが,石ノ森章太郎が描く「仮面ライダー」の敵は,「日本政府に入り込んで暗躍する者」です.

ゆえに,本作の敵役が日本政府を影で操る団体であることは何の不思議でもありません.
むしろ,石ノ森章太郎テイストの仮面ライダーに忠実な作品と言えるでしょう.

このことから,「仮面ライダーに政治思想やイデオロギーを入れるな」というのは,大人向けとして製作された本作に向けたコメントとしては的を外しています.


あと,本作は,これまた石ノ森章太郎原作の「仮面ライダーブラック」と類似しているとも指摘されています.
つまり,TV版「仮面ライダーブラック」ではなく,漫画版「仮面ライダーブラック」に寄せているのが本作ということ.



ネットの解説ブログやYouTubeでもいろいろと紹介されていますが,漫画版「仮面ライダーブラック」のラスボスは,仮面ライダーブラック本人ではないか,というものです(明確な描写はされていないが,それを匂わすものになっている).


その上で,白石和彌監督は「仮面ライダーブラック」を基になにを訴えたかったのかというと,おそらく,
「この世界には正義の味方などという都合のいいものはいない.そこにいるのは,自分や自分たちの仲間をおさえつけてくる『悪』がいるだけだ」

なので,本作のキャッチコピーが,
「悪とは、何だ。悪とは、誰だ。」
になっているのだと思います.

本作のラストである「ヒロインと怪人が,子供たちをそそのかしてテロリストを養成している」にケチをつけるコメントも散見されますが,これは「正義の味方」を描いた子供向け仮面ライダーではないのです.
私としては,ヒロインもまた悪の道を歩んでいくことになる,というラストとして解釈しています.

つまり,皆誰しもが誰かにとっての悪である.
それを自覚的に生きていくか,無自覚でいるのかの違いだと思うんです.

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