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大学の授業で中高の勉強の復習をさせてるらしいぞ,ってことについて
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今もたまにこういう話題には関心があって見ることがあります.
【大学教育】中高の勉強を復習させる授業ってアリ?平均の底上げ?専門人材の育成に注力?|アベプラ 2025/04/20
内容としては,一部の大学の授業において,極端に学力が低い学生のために四則演算や基本的な英語教育といった,義務教育レベルのことが展開されていることを問題視するというもの.
この話題はかれこれ20年以上議論されていることですが.
とりあえず以下のYouTube動画を御覧ください.
【大学教育】中高の勉強を復習させる授業ってアリ?平均の底上げ?専門人材の育成に注力?|アベプラ 2025/04/20
内容としては,一部の大学の授業において,極端に学力が低い学生のために四則演算や基本的な英語教育といった,義務教育レベルのことが展開されていることを問題視するというもの.
私としては,ゲストとして参加している大阪経済大学の秦先生の意見に,ほぼ全面的に同意です.
このテーマについての私の意見は,10年以上前から過去記事で大量に表明してきているので,よかったらサイト内で検索してそれっぽいものを御覧ください.
代表的なものを以下に示します.
他に本件について丁寧に書いた記事があったような気がするのですけど,もう記憶が定かでないので探し出すのが面倒になってしまいました.
...と思って諦めようとしましたが,思い直して探してみました.
以下が今回のテーマと類似している記事です.
さっき,この記事を読み返してみました.
これ,10年前に書いた記事なんですけど,当時からずっと「大変だ! 今の大学は中学校レベルの授業が行われている!」ということが問題視されているんです.
ぜんぜん事態は進捗してませんね.
もはや,当時の学生は今はもう30歳を越えているし,もっと言えば,さきほど述べたように「大学の授業のレベルが義務教育以下だ!」などという問題提起は,20年以上前からされているわけで.
なので当時の学生は,現在40歳〜50歳くらいということになります.
さて,前掲したYouTube動画内の話に入ります.
動画内で秦先生が訴えていることについて,コメンテーターがこのようなことを言います.
「大学とは一体何か? ということを一回考えなきゃいけないと思います.大学というのは高等教育機関なので,専門性を身につけるために行くところなんですよね.(中略)本来的な,もっと高等教育で身につけるべきもので,狭き門にして,卒業した人は専門性をもって活躍できるのが大学だということに,思いを馳せる必要があるんじゃないかと思うんです」
この人の言わんとすることはわかるんですが,大学教員経験者として言わせてもらうと,こういう趣旨の意見は多くの人の賛同を得やすいのかもしれませんが,大学教育の実態に即していないですね.
話している一つ一つのセンテンスには首肯できます.
ただ,その一つ一つのセンテンスはつながらないのです.
「大学は専門性を身につけるところだ」
ということには同意できますが,だからといって,
「狭き門にするべきだ」
というのはつながりません.
そして,
「狭き門にする」
ということと,それによって,
「卒業した人が専門性をもって活躍できるはずだ」
ということもつながりません.
秦先生がおっしゃりたい(と私が汲み取っている)ことや,少なくとも私みたいな考え方をしている大学教員の方々が「この類の意見」に感じている違和感は,まさにこの点です.
入学時点で義務教育レベルの技能を完璧に達成できている人でなくとも,大学で教育させれば社会貢献できる人物の育成は可能だ,ということです.
これに対し,
「それだと効率が悪いのではないか?」
という意見もあるでしょう.
たしかに効率は悪いでしょう.
実際,私もそんな学生の指導には苦労したことはあります.
しかし,そんな大学教員だった私の「苦労」の内容は,「義務教育レベルの再教育」とか「低学力の底上げ」によるものばかりだったかと言うと,そうではないのです.
非常に高い学力を有している学生であっても,(典型例として)卒業論文指導などで,
「なんでそんな簡単なことも分からないんだ!」
「どうしてこんな考え方になるんだ! 論理がメチャクチャだ!」
という不満をもって指導に苦労することもあるし.
一方で,入学時には野球やテニスばっかりやってきていて,全く基礎学力が無かった学生であっても,卒業時にはとても興味深い実験や調査をして,明快な論文を書き上げる学生もいます.
こういうのは,大学教員をしばらくやっていると,よく経験することだと思うんです.
なので,「入学・卒業の基準を狭めれば改善する」とか,「高偏差値の学生を選抜して教育することが良い」とは簡単に言えないのですよ.
それに,動画内で秦先生が述べている,
「大学ランクよりも学生の学ぶ意欲の方が問題」
というところも重要です.
私自身,低ランク大学出身でして,教員生活は低ランクの大学からスタートし,後に高ランクの大学に勤めるという経験をしています.
あと,その他複数のタイプの異なる大学に非常勤講師で授業をしてまわったりもしています.
つまり,いろいろなタイプの学生を見てきたわけです.
そんな私が感じたのは,高ランク大学の学生と比べると,自分の出身大学の学生の方が,卒業時においては専門知識や技能の高い人が多いということでした.
いやいや,それは言い過ぎでしょう.とか,買いかぶり過ぎだと言われることもありますが,これは正直な感想です.
もちろん,学生たち全体を見渡した上で,その「平均的な能力(そんなものに意味があればだが)」というものをなんとなく評価すれば,たしかに高ランク大学の学生の方が秀でているかもしれません.
いわゆる,「賢そうな人」「デキそうな人」は多いんです.
しかし,こと「専門性」とか「社会貢献力」ということになると,それは大学ランクでもってその学生たちを評価することは相応しくないと思います.
コメント
本当に私もそう思います。ATP も知らなかった学生が解剖生理学の講義で良い評価で単位取得したことがある一方で、自信満々の学生が結局は再試を受ける羽目になったりもしていました。財務省は大学教育、いえ教育全般を工業製品の生産のように捉えていて、人間を育てることについての配慮に乏しいことを感じています。大学にお金を与えず、過度に競争を強いているのも問題です。一方で、やる気が無いのに大学に入っちゃった、という学生は、無理せずに高校のツテで就職先を探す方が良いように感じてもいます。
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