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偏差値45の大学選び パート2

ほぼ1年ぶりとなる続編です.
パート1を見ていない人は,
偏差値45の大学選び パート1
をご覧ください.

パート1でも書きましたが,この記事で対象としているのはトップレベルの大学を目指している受験生ではなく,だいたい偏差値が40〜50くらいの枠の中で「大学のこと,あんま知らないし.どうしようかなぁ」「滑り止めとは言え,もしものために」と悩んでいる受験生です.

パート1でご紹介したのは,
(1)自宅からのアクセス
(2)図書館(パソコン室)まわり
(3)貸出備品
(4)ゆるさ
といったものでしたが,今回はこの中でも「(4)ゆるさ」について取り上げます.
良い大学において,なぜ「ゆるさ」がなぜ重要なのか,そこを解説してみたいと思うのです.

その「ゆるさ」というのは以下の様なものでした.
1)学内でお酒が呑めるか?ゼミ中や研究室で呑んでる先生がいるか?飲み会が開かれたりしてるか?
2)開門時間以外でも入校可能か?つまり,事実上24時間営業か?
3)軽い暴力(身体的・精神的)をふるう教員がいるか?で,その教員は,ちょっとした名物教員(つまり,解雇されずに済んでいる)か?
4)図書館の隅や未使用教室などで寝ている学生がいるか?
5)なんでもない時期に,2日以上連続で(さも当たり前のように)学内に宿泊している学生(または教職員)がいるか?
6)購買コーナーのおっちゃん・おばちゃんが,「えぇよ,えぇよ,なんとかしといたるから」っていう感じの融通がきくところか?(この場合,「お金がない時にツケがきいたりしますか?」なんていう質問で切り出してもいいでしょう)
7)大学職員が怖いか?学生を怒鳴りつける職員がいるか?
8)受講者の99%が寝てる授業があるか?
9)授業に行ったら先生が来なくて,そのまま何事も無く休講になることがあるか?
10)テストが全然できていないと思ったのに,高得点で単位が取れたことがあるか?

上記の中でも,高校生が確認(理解)しやすいものを優先的にご紹介しましょう.

●開門時間以外でも入校可能か?つまり,事実上24時間営業か?
勉強したい学生,仕事したい教員は好きな時に好きなようにやってください.という状態です.
最近はこれをコンセプトとして公言し,(ほぼ)24時間営業のように図書館や空き教室を提供する大学が増えてきておりますが,少なくない優良大学の多くはこれをストレートに宣言せず,“事実上の24時間営業” という状況にしていることがあります.
つまり,警備や経営上,本当は24時間営業じゃないんだけど,「ま,別に問題が発生しているわけじゃないんだし,放っとけばいいんじゃないの」ということで黙認しているということです.
私の母校もそういう状態でした.深夜に勝手に門を開け,寝てる警備員のオッチャンを横目に校内に入っていくということは日常茶飯事です.このゆるさが重要なのです.

このような状態になるためには,その大学において「大学とは勉強するところ」という認識が根付いており,「自習するのが当たり前」「放っといても学生が勝手に何かする」という文化があることが必要条件になります.
そんなの大学としては当たり前だろと思われる人もいるかもしれませんが,偏差値45くらいになると重要な判別材料になるのです.

逆に,教職員や学生について “営業時間” 以外での入校を制限しようとする大学は弱い(危ない)大学である可能性が高まります.
入校制限する理由としては,営業時間以外で学内に人を入れておきたくないからです.なぜ人を入れておきたくないかというと,営業時間以外で何か問題が発生した場合に責任を取りたくないという理由もありますが,もっと邪推すれば,
教職員目線として,休業日に堂々と出勤しない正当な理由がほしいからです.
言い換えれば,普段は勤務状況が厳しくチェックされている大学であることを示しており,且つ,授業と部活以外には学生が全く大学に来ない,来たがらないから閉門できちゃうというところにあります.

休業日は学生が来ない,だったら閉門したっていいじゃないか.いっそ,入校制限したっていいじゃないか.入校制限してるくらいだから,私も特に用事は無いから休んじゃお.
つまりこういう大学は,もともと学生を自習させる文化が無く,だから休業日に大学に来る学生はおらず,なら管理運営上も入校制限した方が楽でいいよね,っていうことなのです.
そういう大学はパスした方が無難です.あなたも勉強しない学生,それで良いと思ってしまう学生になる可能性があるからです.

●図書館の隅や未使用教室などで寝ている学生がいるか?
大学でハベる文化があるということを示しています.もちろん教職員は怒っていますし,学外の人からするとみっともないと思われるでしょうが,こういう大学は優良大学である可能性が高くなります.
部室や体育館の隅ではダメなのです.図書館や未使用教室であることが重要です.
どうせ寝るにしてもアカデミックな場所であることが判別材料になります.
弱い大学の学生は図書館では寝ません.図書館で寝るくらいなら家に帰るか,部室に行きます.

なんでもない時期に,2日以上連続で(さも当たり前のように)学内に宿泊している学生(または教職員)がいるか?
大掛かりなイベントや卒論・学位論文の作成,泊まりがけの実験などなど,そういうものが無いにも関わらず,ずっと学内に宿泊している学生や教職員がいるかどうか,そんな噂に耳を傾けてみましょう.そういう大学は優良大学である可能性が高くなります.
家に帰るくらいなら大学に泊まればいい,その方が楽.そんな感じで生活している人物がごく少数でも存在する場所には,知と共に生きる文化が自然と漂い,その空気が無意識下で多くの人々に影響を与えます.

これは上述したことと類似しますが,土日・盆正月など関係なく通学・出勤している人も同様です.
あらゆる時間帯,あらゆる時期において「この人,今日もいるよ」「この人,この時間もいるのかよ」という気合の入った人物を間近に見ることは「大学とはこういうところだ」ということを身を持って認識する上では重要なことなのです.
逆に,弱い大学ではそんな人はいません.そんな学生は除籍になりますし,そんな教職員を雇うこともありませんから.

購買コーナーのおっちゃん・おばちゃんが,「えぇよ,えぇよ,なんとかしといたるから」っていう感じの融通がきくところか?
最近の大学はコンビニが入っていることが多いのですが,そうではない大学の購買コーナーであれば判別材料のひとつとして考慮する価値はあります.
高校生にはイメージしづらいし複雑なので端折ってしまいますが,理由としては融通が効かない購買コーナーなんて大学内部にある必要がないから,というものです.
ちょっと具体例を出すと,講演会とか部活とかで今すぐ水やジュースが必要なんだけど,持ち合わせがない,って時に,「すみません!あとで払うんで,ここにあるやつ何本か持って行っていいですか!」って言うと,なんとかしてくれる.そんな感じ.

受講者の99%が寝てる授業があるか?
それでも授業として許されている.その時点で優良大学です.
こういうのを見ると思わず「うわぁ~っ,ほとんどの学生が寝てるなんて,きっとつまらない授業をやってるんだろう.そんな魅力のない授業をやっていても許されてるなんて,きっとダメな大学なんだろう」という感想を持つかもしれません.
ですが,大学の授業というのは学問をする上での「きっかけ」の一つに過ぎません.聞いていて勉強になった,なんていう講義の方が眉唾ものです.
講義を聞いて勉強になる程度の授業は,自習すれば同じように勉強できます.

全ての授業がそうだとは言いませんが,99%の学生が無関心であっても,1%の学生に引っかかるものであれば価値があるのです.
「そんなのレアケースだ.費用対効果が弱いじゃないか」という意見があって然りでしょう.それも重要です.
が,大学の授業というのはレアケースであろうと費用対効果が無かろうと,その道のプロである学者・研究者の考え方を学ぶところにあるのですから,そうした「学び」を何か統一された物差しで判断するわけにはいかない,という事情があります.

もちろん学生が魅力を感じ,満足してくれる授業を目指すことも重要ですが,それが優先的になると「大学での学び」が崩壊することになります.
※詳細は■反・大学改革論2(学生からの評価アンケート)等の記事をご覧ください.

逆に,弱い大学・高等教育ができていない大学ではそうした授業は許されません.統一された物差しで授業が計られます.
誰もが納得できるコンテンツ,ウケの良い授業が求められるのです.そして,受講者を寝かせないようにするための工夫が豊富に盛り込まれています.

1%の学術性よりも99%の満足を優先する大学.1%が覚醒しても99%に魅力を感じさせなければ「ダメな授業」だと見做す大学というのは,残念ながら弱い(危ない)大学であると言えるでしょう.
そんな大学に通うと,あなたも物事を費用対効果で見たり,キャッチーなものが優れたものだと認識する思考が身についてしまいます.
だからこういう大学はパスした方が無難なのです.


なお,「弱い大学」「危ない大学」を判別したい場合は,以下の記事をご参考に.