2015年6月8日月曜日

自転車の取り締まり強化後,一週間

6月1日から自転車運転についての取り締まり強化が始まっています.
改正道路交通法によるもので,詳細は以下の
警察庁:自転車運転者講習制度(PDF)
あたりをみてください.

改正されたというより,取り締まりの強化が実際のところで,以前から違反運転だとされていたものについて,今後はちゃんと警察がパクリに行きますよと,そういうことです.

6月1日以降,しばらくネットニュースでも違反して「捕まった!」とか「注意された!」という類のエピソードが飛び回っていました.
イヤホン・携帯使用,無灯火,あとは歩道走行とか,そういうのが多かったでしょうか.

比較的ちゃんと自転車を運転している私としては,たいして影響のない話なのですが,これで自転車の安全運動が啓蒙されるのであれば良いことではないかと思っています.

が,「安全運転が啓蒙される」ことと「実際に安全になる」かどうかは別物です.
今回の取り締まり強化によって実際に自転車の安全が確保されるか,そしてこれは自動車・バイクにとっても良いことなのか,私はこれらについてかなり懐疑的です.

もちろん,今後2〜3年の事故統計が出てからじゃないと正確な事は論じられないのですが,今のうちからどうなるか推察するのも大事だと思います.
※その予想ですけど,たぶん今年1年は宣伝効果があって自転車事故数は減ると思いますが,来年からは怪しいです.

以前,そんな記事を書いたこともあります.
お暇でしたら,やや紙面を多くとって書いた約1年前の過去記事を御覧ください.
「自転車は車道を走らない方が安全だろう」

リンク先を読むのが面倒な人のためにまとめますと,
1)自転車用のインフラが整っていない中で交通法を厳格にしても,自動車ドライバーの意識が変わっていない車道に自転車を出すと事故(特に重症・死亡)が増えてしまうのでは?
2)自転車による重症・死亡事故は非常に少ない.自転車を車道に出すのであれば,圧倒的に重症・死亡事故を起こしている自動車の取り締まり強化が先では?

ということです.
当然のことながら,自転車でイヤホンつけたり携帯見てたり,無灯火,飲酒状態での運転は厳しく注意されなければいけないことは重々承知の上で,それでももっと大事なことがあるだろうという話をしたいのです.
野球で言えば,失点を防ぐために盗塁や送りバント対策を講じることも大事ですが,やっぱりバッターに長打を打たれないことに注力した方がいい,というのと同じです.
別に盗塁や送りバント対策をしなくてもいいと言っているわけではありません.失点を防ぐ対策の優先順位を考えましょうということです.

結論としては「やっぱり自転車は車道を走らない方が安全でしょ?」ということなのですが.
今回は2014年の統計データを見ながら考えてみたいと思います.

基本的なところからいきましょう.
まず,自転車は年間どれくらい事故っているのか?
それがこれ↓.自動車と二輪車(バイク,原付)と一緒にグラフにしてみました.
状態別負傷者数の推移(警察庁2014年)
約12万件です.
割合としては,自転車は交通事故の15%を占めています.
(自動車事故は66%,二輪車は11%です.ちなみに歩行者は8%)

いずれも発生件数は低下していることが分かります.
(たまに見聞きする「最近は自転車事故が増加しているから云々」というのはガセです)

で,次に自転車事故の内訳です.
死傷事故として記録されたなかで,相手は何だったかを示したデータがこれ↓.
自転車事故の相手当事者(警察庁2014年)
以前の記事(上記)でも述べたように,死傷事故としては圧倒的に自動車との事故が多いのです.と同時に,死亡事故も最多であることも分かります.

あと,こう言ってはなんですが,昨今かなり騒がれている「歩行者とぶつかって死亡させてしまう」という事故はかなり全国的にレアなものであることが分かります(近年で最多だった歩行者との死亡事故は2007年の8件.他の年はだいたい4〜5件).

歩行者や自転車同士の事故を無視しろとは言いませんが,上記のことから推測できることは,自転車事故は歩行者が多い歩道で発生しているのではなく,自動車と交わる車道で起きているということです.
自動車との接点が重要であることが考えられます.

では,死亡事故へと発展することが多い自動車との事故ですが,どのようなシチュエーションで発生しているのでしょうか.
自転車事故における対車両事故についてのデータ,それがこちらです↓.
自転車事故の対車両事故の類型別件数(警察庁2014年)
突出しているのが「出会い頭衝突」と「左折・右折時衝突」です.

自転車事故でどのような法令違反がされているかを調べたものもあります.
自転車事故の法令違反別件数(警察庁2014年)
これを見るに,「交差点安全進行」と,「安全運転義務」のなかの「安全不確認」が特に多いことが分かります.

死傷事故として出会い頭や右左折時の衝突が多く,その安全不確認の違反をしている割合が多いということになりますと,そこから推察できる状況というのはかなりイメージしやすいものですね.

おそらく,曲がり角やなんかで「ま,大丈夫でしょ」って思いながら自転車をスイスイと軽快にとばして方向転換したら,そこに現れた自動車やバイクとぶつかって死亡.
と,そういう感じではないでしょうか.

以前の記事ではこの事について,自転車専用レーンを設置しても重大な事故は減らせないし,むしろそれによって自転車のスピードが上がってしまい,出会い頭や左右折時の衝突事故が起きやすくなるのではないか,というものでした.

例えば今回の取り締まり強化にしても,携帯使用とかイヤホンについての注意を徹底することが大事なのは認めた上で,自転車に車道を走らせることをも徹底してしまうと,重大事故が発生しやすくなる可能性が高いのではないか,と考えさせられます.

思いつくのはこんな展開です.
車道を走る自転車は,歩道を走るよりも速度が上がります.今年は恐る恐る走る人もいるでしょうが,実は自転車は車道を走っていいんだ,自動車よりも優先度が高いところもあるんだという認識と,それに慣れてきた来年再来年はさらに速度は上がるでしょう.
そんな状態になったら,出会い頭や左右折時の衝突の危険性は今以上に高まるというものです.

車道を気を張って走行するのが大変だという人については,歩道であっても安全な速度で走ることを許容するほうが,自転車にとっても自動車にとっても “現段階では” メリットが大きいと考えられます.

ただ,この公表されている統計データを分析する上での問題としては,ではどういうシチュエーションで死亡事故が起きているのかは不明なままであることです.

この点は自転車の交通安全を考える上でかなり重要だと思いますので,警察としても可能であれば詳細な内訳を公開してほしいのですが.

※より詳細な自転車事故の統計データが手に入ったら,追って分析してみたいと思います.

※そのすぐ後,そのデータを見つけましたので追記しました.
追記:自転車の取り締まり強化後,一週間


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