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井戸端スポーツ会議 part 4「自転車は車道を走らない方が安全だろう」

最近のニュースで,
「東京五輪までに倍増」 舛添知事が自転車専用レーン視察
というのがありました.
自転車通勤をしている私としても,こうしたことは自転車の利便性が高まる動きですので喜ばしいことだと思っています.

自転車専用レーンを増加させようという動きは,なにもオリンピックが決定したからではないことは,知る人ぞ知るところです.
昔から自転車専用レーンを望む動きはありまして,特にここ最近,「自転車と歩行者の事故」がクローズアップされたこともあって,それに拍車がかかっているように思えます.

自転車と歩行者の事故が増加している!」というニュースや記事をみることがあります.
例えば,この大阪市のホームページでも「急増している」ということになっているのですが.
さて,大阪市のHPを見る前に,ここで問題.
このように「急増している」と報じられる自転車と歩行者の事故件数,全国で一体どれくらいだと思いますか?

って,うちの学生にも聞いてみたんです.そういうニュースを良く聞くでしょってことで.
「1万件」とか「10万件」だとか答えていましたが.
正解は2605件(2013年)です.
んでさらに,死亡事故にまで至る事故はどれくらいか?って聞くと,
「200件」とか「1000件」だとか答えていましたが.
正解は3件(2013年)です.

これの重大性をどのように思うかですが,それはとりあえず置いといて.
次に,自転車事故全体を眺めてみますと,
自動車・バイクとの事故:約11万件(うち死亡:500件)
自転車同士の事故:約3000件(うち死亡:3件)
自爆(単独事故):約2500件(うち死亡:87件)
その他:約3800件(うち死亡:4件)
ということになっております.
※詳細は⇒警察庁の交通事故統計を御覧ください

ちなみに,この割合は年を追ってもそんなに大きな変化はなく,幸いなことに全体的には自転車事故は減少傾向にあります.
※自転車と歩行者の事故が増加したのは10年前までのことで,最近は減少傾向にあるわけです.

今回の記事で井戸端会議したいのは,
「自転車は車道を通る」を徹底させたり,
自動車道の直ぐ脇に自転車専用レーンを作っても,
死亡事故(重体に至る事故)を減らすことにはならない可能性がある
という点です.

「自転車専用レーンを作らない方がいい」などと言っているわけではありません.
自転車の利便性のためにも自転車専用レーンを増加させてほしいのは,私の願望でもあるわけで.
ただ,自転車専用レーンを「事故を減らすために作る」ということには,若干の考慮が必要ではないかと思うんです.

ここ数年,海外出張(という名の観光)をすることが多い私ですが(オーストラリア,イギリス,オランダ,中国といったところ).
体育系に身をおき,ヘビーサイクリストである私としては,各国の自転車事情を眺めてみることは多いものです.

そんな中でも自転車専用レーンが敷かれており,歩道との区分けが明確な国のひとつがオランダです.
自転車専用レーンを歩いていようものなら,20mくらい手前からベルを激しく鳴らされたり怒鳴りつけられ,歩行者の脇を結構なスピードで走り抜けていきます.
「おぉコワぁ」と思いながらビクビクしながら歩いていたことを思い出します.
こんな感じだと,自転車専用レーンがあっても事故は多いんじゃないかとネットを調べてみましたら,やっぱりそうでした.
それが分かるサイト⇒図録・自転車乗車中の死者(各国比較)

上記のサイトでは,「日本は自転車保有台数の割には事故死が多い」という考察ををしているものの,なんだかんだでオランダは日本よりも死亡事故は多いわけです.
しかも,日本よりも遥かに自転車用の管理やインフラ整備(専用道,専用信号,取り締まり等)がされているにもかかわらず,です.

さらに参考になるのが以下の内閣府のPDFサイトです.
交通安全対策:http://www8.cao.go.jp/koutu/chou-ken/h22/pdf/ref/1-1.pdf

上記の報告では,オランダにおける,
1)事故死のほとんどが「自動車・バイクとの接触」
2)事故死のほとんどが「高齢者」
3)事故死は1980年と2008年を比較すると6割減(!)
4)だが,全体的な自転車事故件数は減少していない(むしろ増加)
5)事故のパターンは日本と類似
ということです.

一方で,前述した自転車事故の国際比較をしたページ(図録・自転車乗車中の死者(各国比較))で,自転車事故が件数でも割合でも非常に低いのがイギリスです.
「イギリスではどんな感じだったかなぁ」と思い出してみましても,特に危険な目に合った覚えはないんですよね.
完全に私が見た限りの話でしかないんですが,イギリスは自転車専用レーンもあるにはあるものの,
歩道が広い
路肩に余裕がある
という特徴があるのかもしれません(客観的データは持ってない).
つまり,自動車と自転車の接触機会が低い可能性があるわけです.

というのも,イギリスって広い路肩や自転車専用レーンがあっても,そこに自動車が縦列駐車されているという現実がありまして.
なもんだから,結局,イギリスでも「歩道を自転車が走る」っていうのが常態化しているわけで.

それに,どれだけ自転車専用レーンを用意したところで,警察庁の交通事故統計にもあるように,事故は「出合い頭」と「右左折時」に自動車・バイクと衝突することが圧倒的に多いのです.
専用レーンを用意したところで,自転車がスピードを出すようになってしまって,結局,出合い頭や右左折時の事故が増えてしまう.なんてことになりはしないでしょうか.
ここんとこ,調査が必要かと思います.

今までの話をまとめますと,
1)自動車・バイクとの接触で死亡することが圧倒的に多い(全体の85%)
2)歩行者と自転車の事故は,云うても少ない(全自転車事故の2%)
3)死亡事故の多くは高齢者が起こしている(全体の65%)
ということでして,その改善策として当面は,
「歩道の拡充」
自転車通行量が多い箇所については専用レーンが必要なんでしょうけど,
予算が許すなら「自転車専用レーンは車道脇よりも,歩道寄りに併設」
冒頭のニュース記事の写真にあるような,車道と切り離されたものが理想
ということが効果的である可能性があります.

不用意に車道を通ることを徹底させたり,安易に簡易な専用レーンを用意するということは,むしろ死亡事故を増やすことになりはしないかと不安です.
そこには運転が不安な高齢者も入ってくるわけですから.

日本の自動車ドライバーは,なんだかんだで自転車に対して危険な運転をします.
自転車のすぐ脇をすり抜けたり,「危ない乗り方をする自転車側が悪い」という意識は強いものです.
ドライバーの仰りたい事も分かりますし,そりゃそうなんでしょうけど,ただ,事故った時に自動車側が重症を負ったりや死亡するようなことは100%無いわけですから,その意識の重大性を比較してみると,これは結構なことではないかと思ってしまうんです.
でも,こうしたドライバーの意識がおいそれと改善するなんてことは期待できません.
別に皮肉りたいわけでも絶望しているわけでもありません.私もドライバーのうちの一人ですから,気持ちは分かります.

なので,自動車から自転車を遠ざける方向でのインフラ整備をすることの方が,この日本では現実的なのではないかと思うんです.

井戸端スポーツ会議
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