注目の投稿

「ブスは死ぬしかない」っていう映画|ミッション・ワイルド

久しぶりにメールをくれた友人がいてさ


大学院の後輩なんですけど,共通の友人の結婚式で会って以来のご無沙汰だったんです.
このブログを見てくれたらしく,それで連絡をくれました.

スポーツ現場関連の仕事をしており,このコロナ禍で大変なようですが元気にやっているそうです.
観光,飲食,芸能と合わせて,スポーツ業界も今年は逆風が吹いていますからね.

今の事態が終息したら,どっかで一席設けたいね,と話しております.


ところで,彼とは同じ大学院に所属していた頃に一緒にバカをやってきました.
久しぶりに連絡をとりあったら,いろいろと懐かしい思い出が現れるものです.


なかでも特に酷かったのが,
「強烈なキャラクターを有した女子学生をいじる」
というものでした.

そのいじられキャラだった女子学生は,お世辞にもまともな顔とは言えずっていうか強烈なブスで,しかしそのルックスのディスアドバンテージをものともしない快闊,且つエキセントリックな性格の持ち主でした.
まあ,こういう人ってどんな人間集団にも一人はいそうなんですけど,それが冗談抜きにメチャクチャ強烈なキャラなんですよ.
マジでホント,日本を代表するような.


もちろん反省しています.
あれって完全なハラスメントですよ.
今思えば,パワハラ,アカハラ,キャンハラ,セクハラ,モラハラなどなど,あらゆるハラスメントが該当しそうです.

いじめですね.

そして,よくある「いじめ問題」と同様,我々としては「いじめ」じゃなくて「いじり」だと思っていた.
「おい,そんなん自分の顔を鏡で見てから言えや」とか.
それに関西だから,ツッコミ力も高かったはず.


「いじりって言うけど,本人は深刻に捉えてたかもしれないじゃないか!」
というご批判覚悟で話しています.

あっ.
言っときますけど,私はそこまで酷くはなかったんですよ(笑).
上述した彼と,その周辺連中がヤバかった.

でも,そんな連中をニコニコして放置した私も同罪なのでしょう.
(昨今のいじめ問題風に言えば)

尤も,そんな悪党共からのハラスメントを意に介さず,我が道を行っていたのも彼女らしいとは思いますけど.
実際,全然気にしていなかったですね(って外からは見える).

一応どんな関係だったかフォローしておくと,その彼女も私の大学・大学院の後輩になるんですけど,学会とか研究とかで一緒に飲みに行くこともあったし,こちらから毅然と断っても,
「ちょっとぉ! そんなこと言わず一緒に飲みに行きましょうよぉ!」
って,激しく迫ってくる人でした.
だから多分,嫌われてるわけじゃないはず,少なくとも私は.
むしろ,私の方がハラスメントを受けていたのかもしれん,と思うくらいです(笑)

彼女と話してると,疲れるんです.笑い過ぎて.
ツッコミが追いつかないっていうか,浴びせられる情報量が過多で,こっちのCPUやメモリに甚大な負荷がかかります.

まあ,そんな感じの上手い付き合いをしていたんだと思います.

その彼女とも久しく会ってませんね.
まあ,私も仕事変えちゃったし.
風の便りで,私に会いたがっているというのを聞いていますので,仕方ないから会ってやるかと思っているところです.


『ミッション・ワイルド』っていう映画を思い出した


前置きが長くなっちゃいました.
そんな彼女との思い出を懐かしんでいたら,『ミッション・ワイルド』っていう映画も思い出したので,これを久しぶりに見てみました.

今,Amazonで無料で見れます.


興行的には赤字映画だったそうなので,いろいろな動画配信サービスにおいて無料視聴ができるものと思われます.
ミッション・ワイルド(Wikipedia)

トミー・リー・ジョーンズとヒラリー・スワンクが主演の西部劇.
ちなみに,トミー・リー・ジョーンズが監督しています.

アクションものだと間違えそうですが,全然違うので注意が必要です.

一言で言えば,精神障害者を護送する映画です.

そりゃ赤字になるわ.


ですが,映画好きからすれば満足のいく作品
西部開拓時代における,苦い部分,闇の部分を描いています.
まあ,トミー・リー・ジョーンズが本気出した映画はハズレません.

この映画に関するレビューを見てみると,「考えさせられる」というコメントが多いのですが,何がそうさせるのか説明しておきたいと思います.


【以降,ネタバレを含みますので注意してください】


ヒラリー・スワンク演じる女性メアリーは,一見,西部地域で成功している人物のように見えますが,「結婚したい」という目標だけは果たせていません.
これが彼女のコンプレックスで,これをどうにかしたいと焦っているんです.

「能力のある女性が毛嫌いされている,当時のアメリカの様子を描いている」
などと解釈するレビュアーもいるようですが,もうちょっと掘り下げる必要があります.


ヒラリー・スワンクは良い女優さんですが,誠に失礼ながら「美人」にはカテゴライズされないですよね.
そうです,このメアリーという女性の正体は,極度のブスなのです.

あまりにブス過ぎて,男から敬遠されているのです.
劇中,それを示す描写がそこかしこにあります.

そこで重要なのが,西部開拓時代の「女性」の扱われ方です.

ご案内の方も多いかもしれませんが,開拓時代の西部地域には「女性」がほとんどおらず,男女比が非常に歪でした.
はっきり言って「いれぐい」だったんです.

女性は,女であるという理由で恋愛・結婚対象になる存在で,西部において女性を手に入れられる男とは,すなわち成功者だったんです.


一方,西部におけるその他大勢の男性は,女性を手に入れられずに人生を終えていました.
彼らに鬱屈した「女性蔑視」,そして「女性への恨み」が募るのは当然のこと.

その結果として,西部地域を代表する土地「ハリウッド」を中心に隆盛した文化「ハリウッド映画」における,「女性の描かれ方」にも影響します.


ハリウッド映画における典型的な女性.
つまり,「頭が軽くて尻も軽く,男を簡単に裏切り,周囲に迷惑をかけまくるバカ」というステレオタイプ.
このステレオタイプの源流は,女性を手に入れられなかった西部の男性たちによる,「すっぱい葡萄」というわけ.
それをあの監督(トミー・リー・ジョーンズ)が知らないわけがない.

なお,この考え方は内田樹氏のハリウッド映画論から拝借しています.



そうした背景が分かっていれば,『ミッション・ワイルド』における中盤で,主要登場人物であるはずのメアリーが,唐突に自殺してしまうのも納得なのです.

考えてもみてください.
「女」というだけで結婚が簡単に出来る地域「西部」において,誰からも見向きされない.
それほどに自分がブスだという事実を,一人の女性はどうやって受け入れるのか.


演じているのが名優ヒラリー・スワンクだから,みんな騙されています.
あのメアリーという女性は,想像を絶するブスとして見なければいけません.

その上で,
「能力のある女性が毛嫌いされている,当時のアメリカの様子を描いている」
という解釈層も重ねられます.

もう,メアリーにとっては絶望しかないですよね.
そりゃ自殺するわ,って感じです.


映画のラストにおいて,トミー・リー・ジョーンズ演じる悪党ブリッグスは,メアリーのことを想って墓板を用意します.
彼女の安らかな眠りを願って.

ところが,なんとも呆気ない,そして誠に残念な最後を迎えるのです.

ブスは死ぬしかない.
そして忘れられるのだ.
これこそ,我々が生きている西部・ハリウッド映画の正体だ.

それが,監督トミー・リー・ジョーンズが訴えたいメッセージだと私は解釈しました.

しかし,映画のラストでブリッグスはこうも言います.
「俺たちは西部へ行くんだ.どんな困難があろうとも」



 

コメント