2016年5月11日水曜日

危ない大学に奉職してしまったとき:レポートの書かせ方

読んでくれた人の中には気づいた方もいるかもしれませんが,前回までの一連記事である,
は,大学教員の皆様,そのなかでも特に「危ない大学」に奉職されている方々に書いています.

もちろん,学生に向けたつもりでもいます.
ですが,あんな長ったらしい記事,本当に真摯にレポートを書けるようになりたいと願う学生しか読みません.
読んでほしいことはやまやまなのですが.

さて,
の最後の部分にも書いていることですが,それをここでも改めて書いておきます.

このレポート作成術によって得られる効果です.
私が担当している初年次教育では,一連の記事で示したレポートの書き方を覚えてもらうようにしています.すなわち,以下の内容を含むように書かせるのです.
1.問題意識の表明
2.自分の意見
3.自分の意見を裏付ける根拠
4.自分の意見を批判する意見
5.自分の意見を批判する意見への反論
6.再度,自分の意見または結論

以前,「消費税増税問題」をテーマに1年生に練習用レポートを書かせたことがあります.
私がこのテーマを勧めたわけではありません.むしろ「難しいから別のにしたほうがいいよ」って言ったのですが,学生達自身が選んだのです.

そして,上記の「1」〜「6」の構成を指示して書かせたところ,当初は増税賛成派の学生が多かったのですが,【自分の意見を批判する意見】と【自分の意見を批判する意見への反論】の作業をしているうちに,最終的には反対派の方が多数派になりました.

多くの学生は,財務省の言う「消費税増税した方がいい理由」を「自分の意見」にしてその反対論を読み探しているうちに,
「いくらなんでも「特定の者に負担が集中しない」ってのは嘘だろ」
「反対論をいろいろ読んでいくと,これじゃ消費税増税を弁護しきれない」
ってことが分かってきたようです.
とても興味深い現象でしたし,これが大学生の学びの一歩だと思いました.

別に消費税増税に反対することが正しいと言っているわけではありません.
もちろん,当初「反対派」だった者が賛成に回るケースもあります.
大事なのは,「テレビや新聞を見てなんとなく」ではなく,賛否の議論を踏まえ,自分できちんと考えて判断するようになったことです.
なぜ自分がそう考えるのか,上記の「1」〜「6」の手順を踏むことで自覚できるようになります.

その一方で,一連の記事で紹介したレポート作成術は,ともすれば「自分の感覚に近しい意見に寄り添う学生」を育てるように思えます.ネットで自分の意見をコピペしているとも捉えられるからです.
以前の記事,■コピペ・レポートの行き着く先はでも紹介したような「ネトウヨ」や「バカウヨ」の態度を助長するように見えるでしょう.

しかし,このレポート作成術でポイントとなるのは「自分を批判する意見」も検索し,それに対する的確な反論をしなければいけないという点です.

私が学生に求めているのは,「自分の意見を批判する見方や考え方」が必ずあることと,それらの考え方を咀嚼した上で「最終的な自分の意見」を作る習慣をつけてほしいことです.
この習慣が身につけば,学生の学ぶ姿勢が変わります.

残念ですが,「危ない大学」に通う学生の多くはこういう思考習慣が根付いていません.
それはもちろん基礎学力もあるのでしょうが,それ以上に大学教員側にそれを求める人が少ないという現実があります.

そもそも大学教員は「自分の意見を批判する意見」を踏まえた上で文章を書くことが当たり前だと思っていますし,もっと言えば,そのトレーニングをした覚えがないほど元々 “才能” があった人が多いはずです.
それ故,学生を前にすると「最近の学生はレポートすらまともに書けない」と言い出します.

さらには,「うちの学生には基礎学力が足りない」「大学での学びをするための準備がない」と言い出した挙句,勢い,
面倒見の良い先生になる方法:初年次教育
みたいなことをやり出す教員もいます.

そんなことするくらいなら,
でお示ししたようなレポート作成術を学生に身につけさせてはいかがでしょうか?

たしかに全員の能力開花は難しい.全ての学生に届くわけではありません.
でも,これを初年次教育として根気強く指導すれば,危ない大学でもアカデミックな議論ができる学生は育つはずです.

そしてそれは,大学で「実践的なスキル」や「ビジネスに役立つ知識」を教えるよりも,この国の社会を安定的に発展させることに寄与することと思います.


このレポート作成術を公開した理由ですが,これは私が前任校にいた頃(6年前)から実験的に1年生を対象に指導していた手法で,ネット検索を駆使してもその効果が確認できたからです.
「なにを偉そうに.普通の指導じゃないか」と言いたくなるほど極めて基礎的な論文作成法ですが,大学の先生方はどうしても「正統な論文作成の手続き」だけ指導してしまい,ついてこれる学生しか指導できていないというジレンマがありました.
ご紹介したものは,その簡略化モデルだと考えてください.

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これにより,やや危ない大学でも,少なくない学生が成長します.
例えばこんな感じに.
彼女に言ってやりたかったのは
迷わず行けよ 行けばわかるさ