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体育学的映画論「ローマの休日」

先日,『デスノート Light up the new world』っていう酷い駄作を,こともあろうに映画館で大金をはたいて見てしまいました.
体育学的映画論「デスノート Light up the new world」

駄作にも駄作なりの「見方」があるというのがその記事の趣旨でしたが,それでも駄作は駄作です.あれほどの駄作,作ろうと思ってもなかなか難しいんじゃないかと思ったりします.
なので,今度は口直しに名作映画を見ることにしたのです.

動画配信サイトであるHuluに,名作として有名な『ローマの休日』があります.
ローマの休日(wikipedia)
なんだかんだで,実はまだ一度も見たことがない映画でした.
不朽の名作と呼ばれるからには,それなりの見どころがあるものと期待して,この際に見ることにしました.

で,感想ですけど,ビックリするぐらいの名作でした.
いろいろな現代映画を見てきたつもりですが,ようするに “映画” って1953年の『ローマの休日』で完成していたんですね,ってことを思い知らされます.
その後に作られた映画というのは,結局のところ『ローマの休日』の派生作品と言っても過言ではありません.
ありとあらゆる映画らしい演出や展開が,既にこの作品で出来上がっているのです.

20代後半くらいになって,クラシック映画と呼ばれる作品を見るようになりました.
それまでは,古い映画を見ても「退屈だなぁ」と思えど,面白いとは思えなかったからです.
まあ,自分で言うものなんですが,若いうちはそんなものではないでしょうか.子供だったり二十歳そこそこの奴が,「クラシック映画が好きだ」なんて気味が悪いですしね.

そうは言いましても,昔からクラシック映画の良さを全く知らなかったわけではありません.
大学2年生の頃,英語の授業で『風と共に去りぬ』を教材として見せられたことがあります.
担当教員としては,体育しか知らないバカで勉強へのモチベーション・ゼロであった我々のため,少しでも「英語」に親しんでもらおうという苦肉の策だったのでしょう.
私たちとしても,とてもじゃないですが授業で取り上げてもらわなければ「風と共に去りぬ」なんて映画を自発的に見るような連中じゃないし,長い目で見たら非常に有益な教育だったと思います.
お陰で,少なくとも私はこの時「へぇ〜,これが名作って言われる映画なのかぁ.ほぇ〜」って間抜け面しながら見ていたものの,何かのスイッチが入った気がします.

なかなか説明が難しいんですけど,なんというか「映画を見るための物差しのバリエーションが増えた」というのでしょうか.

その先生が映画好きでアメリカ文学がご専門だったというのもあるのでしょうけど,映画を途中で止めながら,作品の歴史的背景や日本との文化の違いなど,適宜解説を入れてくれたのも作品を楽しむ上で助かりました.たんに映画を見ていただけじゃないんです.ちゃんと授業をしていました.

じゃあその後「不朽の名作映画」を好んで見たのかと言われればそうではなく.
でも,上述したように何年か前からクラシック映画とか不朽の名作と呼ばれる作品を見るようになったわけです.あの授業で『風と共に去りぬ』を見てなかったら,いまだに普通の映画ばっかり見ていたと思います.

勘違いされてはいけないので念のため言っておくと,私は別に「クラシック映画こそが至高」と言っているわけではありません.
さまざまな作品に,それなりの魅力があります.身の丈にあった見方をすればいい.
このあたりの話は,最近では,
じゃあ,どのラーメンが一番うまいのか?
で論じたので,お暇だったら読んでみてください.

ちなみに,現時点でHuluで見れる邦画では『羅生門』や『切腹』なんかがお気に入りです.どっしりとした時代劇っていいですね.

クラシック映画を食わず嫌いにしている人って多いと思います.
思い切って何本か見てみることをオススメします.映画の見方が変わるかもしれませんよ.