2017年2月14日火曜日

若手研究者用:スーツの上手な買い方・着方

見た目は若いと言われますが,どうせお世辞だろうし,もうそろそろ「若者用」とされるファッションから外れていくであろう年齢になってきました.

今回は,薄給・無給でありながら忙しく動き回ることの多い「若手研究者」のための,スーツその他に関する記事です.
これらについて,徐々に先輩になってきた私からのアドバイスをと思っております.

「学会のときくらいで,普段スーツなんて着ない」という人が多いでしょうし,着る機会が多いとしてもアレコレ考えるのも面倒だというのが若手研究者というものです.
それでも,一応それなりの格好をしないといけないと思いつつネット検索してみるも,巷に流れているのは一般ビジネスマンを対象とした「おしゃれなスーツの着こなし術」とか「最近の流行スーツ」です.
挙句,10万円以上のスーツ,1万円以上の革靴,5千円を越えるネクタイがオススメ商品とか,俺にそんな余裕ねぇからというのが実情でしょう.できるだけ学会出張費とか書籍,研修費などに回したいですよね.

この記事ではそんな若手研究者,もしくは薄給ビジネスマンを対象とします.


(1)前提
まず,スーツ購入・着用を云々する前に大事なことがあります.
何事もそうかと思いますが,「ファッション」も,その人の姿勢や態度,考え方や行動パターン,職場や生活スタイルに馴染んでいるかどうかが大事です.
どんなにカッコ良いスーツを着ていても,姿勢や動作と釣り合っていなかったら台無しになります.

この記事では安物スーツの着こなしを紹介しますが,そもそも,20代の若造が高額で豪華なスーツを着ていても,ホストクラブの兄ちゃんか詐欺師にしか見えません.20代の若造にはそれなりのスーツが必要です.
間違ってもらっては困るのは,これは「20代の若造は何十万もするスーツや靴を買ってはいけない」と言っているのではありません.何十万もするスーツであっても,そんなふうに見えないスーツを選ぶことが「20代のスーツ選び」には大事だということです.
これについて俗物根性のある人は「どうせ高額なスーツを買うんだったら,安物と同じような見た目のものを選んじゃダメだろ」などと言いますが,こんな人とはできるだけ付き合いたくないですね.「値段相応の見た目」こそが大事だと思ってるんですから.
そんな奴に限って,スーツは豪華な質感なのにワイシャツやネクタイがいかにも安物なので,見る人が見たら気持ち悪い格好になってたりします.

結局のところ,着ているもの全体の調和が大事なんです.
3万円クラスのスーツなら,1万円くらいに見える革靴,2千円くらいに見えるワイシャツとネクタイを合わせる必要があります.
どこか一つに奮発することで満足してはいけません.こういうのを一点豪華主義と言うそうですが,これはファッションに限らず全てに言えます.

若手研究者やビジネスマンなら,たとえ10万円以上するスーツを買うにしても,他のものを同クラスで揃えられないなら「安物に見える高額スーツ」を購入すべきです.

でも,どうやって選べばいいのか分からない,ということになりますから,その対策が以下のものになります.


(2)店はなんでもいいから,どこか一つに絞る
私は一人暮らしをはじめた学生の頃から,ずっとAOKIを使っています.かれこれ15年のお付き合いです.引っ越しのたび,AOKIの近くにアパートを借りるようにしています.
AOKIが格別良いお店というわけではありません(AOKIの方には申し訳ないんですけど).一つの店に絞った方がいい理由は,自分の着る服に統一感が出るからです.私の場合,服は全部AOKIで購入することにしています.
※ちなみに,スポーツウェアや下着は別の所で買ってます.

別に百貨店でも「しまむら」でも「青山」でもいいんです.継続して通える,そんなお店を選定してください.どういうお店にするかは,ご自身の給料と相談しましょう.

これまた誤解してもらっては困るのですが,何から何まで「一つに絞る」こと自体が良いということではありません.あくまでこれは,ファッションにそこまでエネルギーを注ぎたくない人のための「ファッション対策」です.


(3)店員と相談して決めてもらう
この記事を読むくらいですから,自分のファッションセンスに自信が無い人が多いでしょう.私もそうです.
ファッションにエネルギーを注ぎたくない人が多いのがこの業界ですからね.
であれば,自分でコーディネートしなければいいのです.

店員は一応アパレル業界やファッションに詳しい人です.外からの客観的な目にもなってくれます.
とにかく店員を使いまくりましょう.
中には研修中だったり詳しくない店員もいますが,それでも気になるところをしつこく聞きます.店員にしても,困ったら他の店員にヘルプを頼んだり,こちらのスキをみて対応マニュアルを読んだりしています.

以前,百貨店の服飾部門の店員をやっていた人にお聞きしたことがあるのですが,ご自身の仕事内容や重要視していることを伝えて,あとは店員に「おまかせ」することを推奨していました.

客の見た目や体型,身振り,仕事,最近の流行などを考慮して,適切なものを選んでくれます.こちらが気にすることとしては,着心地くらいですかね.


(4)事例
私は大学院を修了して,大学の事務職員をする時,初めてスーツを買い替えました.
そこでAOKIの店員さんと相談しながら購入したのですが,そこで対応してくれた人がかなり配慮の利いた方だったんです.真の意味での「ハイスペック・ババア」でした.
この時,スーツに関していろいろ詳しくお聞きしました.

「普段スーツは着ないとおっしゃるけど,着るとしたらどんな機会ですか?」っていうんで,「事務仕事だけじゃなく,荷物持って走り回ることもあります.大学の授業の補佐とかやる時もあります.あと,学会発表とか」っていうことを伝えたら,それに合うように選んでくれました.

覚えている範囲では,曰く,
格調高いところでの仕事が多いようなので(実際はそうでもないんだけど),色はブラック.だけども生地の織り方で縦縞模様をみせてフォーマルさを抑える.その上で,汚れがつきにくく,痛みにくい,メンテナンスが楽な生地から選ぶ.
あきらかに「若者」らしい見た目なので,奇抜さをおさえたデザイン,かつ,当時流行が始まった「2つボタン」から選ぶ.襟の形にも流行があるという説明を受けましたが,詳細は忘れました.
人前に出て発表したり,肉体労働をするようなので袖丈は短め.標準よりワイシャツがやや長めにはみ出るようにする.
ジャケットの丈も標準より短めに仕立てられたものを選定.肩幅のある私にはその方がフィットする製品が多いとか言ってました.
スラックスはワンタックを選択.「タック」なんてものがあったんですね.当時は知りませんでした.別料金だけど,そこから体型に合わせてウエスト部分をいろいろ裁断調整しています.

「時間はありますか?」というので「大丈夫です」と答えたら,候補をどっさり持ってきてくれるので,あれこれ着せ替え人形のように試着が始まります.
なんでも,いわゆる「サイズ表記」って目安みたいのもので,商品のデザインや体型,見た目などによって適切なものが違うから,いろいろ実際に試着しまくった方がいいんだそうです.
着心地と動きやすさだけ伝え,あとはこの店員さんに任せます.
着せては眺め,着せては眺めを繰り返し,「では,この組み合わせでいきましょう」ということで決定.

後になって改めて驚いたのが,2005年頃にしてはえらく「タイト」なものを勧めてくれたので,なんだかキザったらしくお洒落すぎやしないかと思っていたのですが,結局,その後も長く使えました.まだ捨てられず置いていますが,現在でも十分通用するデザインです.
もっとも,ハイスペック・ババア曰く,体型に沿っているものを選ぶのが大事なんだそうで,「合うもの」を探していれば自然とこうなるものだそうです.

既製品とは言え,ここまでやればある意味「オーダーメイド」ですね.体型にピッタリで似合うものを選定してくれるんだから.

買って帰ってきて,以前のものと比べましたが,たしかに違う.やっぱり以前のものはいかにも古い感じがしますし,フィット感も段違いです.なにより,シワがほとんどよらないのにビックリしました.
あと,私の感覚では派手に見えたのですが,周りに聞けばそうじゃないらしい.
自分の感覚は信用できません.


(5)ワイシャツはたくさん買っておく
ワイシャツも時代に応じて変化があります.
でも,購入するものは自分が持っているスーツの質感と合わせる必要があります.
安いスーツなら安いワイシャツ,高いスーツなら高いワイシャツが似合います.

私は20代の頃はずっと2千円クラスのものを購入していました.明らかに安物感が漂いますが,この歳頃あれば,それがちょうど良いと思うんです.
最近,ちょっと値の張るスーツを購入したんですけど,やっぱり2千円ワイシャツではダメです.同じように見えるのに,不思議なものですね.仕方ないので,このスーツを着る時は5000円超クラスのものにしています.

アドバイスとしては,安物スーツを着ている若手の頃であれば,自分の体格にピッタリくる安物ワイシャツを見つけ,それを大量購入しておくに限ります.
だいたい10着は持っておいたほうがいいです.2着よりどり三千円とかもありますので,そういう機会に大量購入です.

どうせファッションのコーディネートに関心がないのですから,無地の白のワイシャツをたくさん持っておくのです.それをローテーションすれば,かなり余裕をもって生活できます.無地の白なら,慶弔時でも問題ありません.
「ほとんど着る機会がないから」とケチっていたら,思わぬ所でみすぼらしいワイシャツを着なきゃいけないケースが出てきます.
くたびれてきたり,黄ばみが出始めたらすぐに廃棄.見切りをつけて消耗品のように使います.
突然の出張や連泊などのために,緊急登板用のものを3着ほどキープしておきましょう.


(6)危険なネクタイ
ワイシャツと同様,気をつけなければいけないのがネクタイです.
研究室の後輩が,私の誕生日に高級ネクタイをプレゼントしてくれたことがあります.
アルマーニの艶々でクールな柄のネクタイでした.

喜んで受け取るも,試着してみて愕然.やっぱり私のスーツとワイシャツに合わないんです.特にワイシャツとの相性が全然ダメ.
ネクタイだけが異様に浮くんです.
ネクタイに負けないだけのハリとツヤがあるワイシャツが必要になります.

結局7年ほどお蔵入りしていて,この度のスーツのクラスアップに伴い,ようやく付けられるようになった次第です.

ネクタイは思わず高級なものに手を出しがちです.お値段としても手を出しやすいですから.
でも,やめておきましょう.一番危険なアイテムです.


(7)革靴はメンテナンス次第
革靴については以前,■入学試験クツこれと■続・入学試験クツこれでお話したことがあります.そちらもご参照ください.
安物スーツには1万円以下の革靴で十分です.
こだわりの高級革靴を購入するにしても,シンプルなものを選びましょう.
むしろ,安物に見えるようなものを選定する必要があります.

実際,オーソドックスなものであれば値段が違っても見た目は変わりません.
ただ,安い革靴で問題となるのは履き心地.安物は履き心地を犠牲にしがちなので,先程のリンク先で紹介しているような革靴がオススメです.

毎日革靴を履くような仕事についた場合,ローテーションで履くことになるので2足用意しておきます.
1万円未満の商品なら3足ほど用意することもできるでしょう.

それより,革靴で大事なのはメンテナンスです.
安物に見えても,みすぼらしく見えてはいけません.
安物の革靴は,メンテナンスを怠るとすぐにみすぼらしく見えてくるので注意が必要です.

頻繁に靴磨きをしましょう.
でも,ちゃんとした道具を使ってください.簡易的なものではきれいになりません.
そうすれば,手入れを怠った高級革靴よりよっぽど上質な質感が現れてきます.手入れを怠った高級革靴ほど憐れなものはありません.

あんまり磨くと艶々になり過ぎるので,ほどほどにしておきます.


(8)着用環境に馴染むものを選ぶ
冒頭で述べたことを繰り返すようですが,結局のところ本人の雰囲気や着用する状況・条件に合わせて服装は決まるもののように思います.
これは決して「個性を消す」ということではありません.

むしろ,本人の雰囲気,体型,動作,仕事内容に合わせるということは,非常に豊富なバリエーションを持つことを意味します.
逆に,「こういう服装にしたい」と望む事自体,実は個性を消していることになるのではないでしょうか.
そしてこれは,研究や教育,さらには政治経済にも同じことが言えるのだと思ったりしています.


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※最後の部分を書いてて思ったんですけど,今回の内容,過去記事のこれに似ています.
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