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この本を読んじゃえば,このブログを読まなくてもいいですよ パート2

学校教育現場の凄惨な状況


以前にも,このタイトルで記事を書いたことがあります.
この本を読んじゃえば,このブログを読まなくていいですよ

その時は,戸田山和久 著『教養の書』を紹介しました.
大学教育の意義を説いたものです.
ちょうどこのブログでは,そういう話をたくさんしていましたので,いちいち過去記事を検索しなくても,同じようなことが本書に整理されてあるので便利です.


さて今回は,このブログで取り上げることの多い,
「学校教育問題」
「教育改革の顛末」
について,非常に参考になる本を紹介します.
中身も,私が過去記事で取り上げたことと同じものがたくさんあります.


妹尾昌俊 著『教師崩壊 先生の数が足りない、質も危ない』

とてもしっかりと取材,調査,分析されていて,特に「学校教育問題」について知りたい人にはオススメです.
タイトルが「教師崩壊」となっている通り,主に教師の現状について取り上げられており,その過酷な職場環境について述べられています.

妹尾氏は,本書では「ティーチャーズクライシス」と名付けて5つの危機を挙げて説明しています.
すなわち,
1:教師が足りない
2:教育の質が危ない
3:失われる先生の命
4:学びを放棄する教師たち
5:信頼されない教師たち

そして,こうしたティーチャーズクライシスを考える上で重要なのは,これらが「教師個人の力ではどうにもできない危機的状況と構造的な問題がある」ことを知ることだと言います.

私のブログでも述べてきましたが,教育問題というのは,それを語る人達が「ボクが考えた最強の教育」を語りたがるものです.
結果,感情論や根性論,経験談に基づく各々のイメージを,学校全体や国の政策に反映させようとしがちです.

このブログでよく登場する和田慎市先生もおっしゃっているのが,
「各種メディアに現れて,『これこそ理想の学校の在り方』を語りたがる人というのは,えてして恵まれた教育環境,稀有で幸運なめぐり合わせや出会い,エリートコースを経ている人が多いため,日本の平均的な学校現場,ましてや教育困難校における実情とはかけ離れたコメントを出す傾向にある」
というものです.
これについては,今回の本の著者である妹尾氏も類似したことを述べています.

こうした偏った見方や印象論を避けるためには,事実確認や調査データと,それらの慎重な分析が必要だと著者は説きます.
そして本書は,そうした点に配慮して「学校の教師が置かれている実情」をあぶり出しています.

特に,
「なぜ教師の質が下がってきているのか?(と言われているのか)」
「教師の仕事の何がそんなに過酷なのか?」
といった点について,かなり丁寧に分析しています.

私としても,「優秀な学生ほど教師を目指さなくなった」というのは実感としてあります.
そして,多彩な職能スキルや視野を持っている若手教師ほど,教育現場に幻滅し,すぐに民間へ職業転換してしまっているという状態があるのです.
それらについても,本書では資料やデータに基づいて論じられていました.


実質24時間体制の勤務状態で,毎年6人が過労死し,毎年5000人の精神疾患患者を発生させる職業,「教師」
そんな教師たちの問題点を,詳細に把握するために本書は最適です.



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