注目の投稿

学術会議人事の話題,全然収まらないね

日本学術会議に「国民からの理解」や「国民への貢献」なんていらない


収まらん.
ぜんぜん収まらん.
あの日本学術会議の人事問題が全く収束しません.

菅首相や官邸にしても,早めに謝罪して訂正しておけば済んだものを.
意地になって話をややこしくしてしまったんでしょうね.

困ったもんだから,
「日本学術会議に存在意義はあるのか?」
とかいう意味不明な論点ずらしを画策し,これをネットサポーターを使って煽っているようです.

でも,言い訳が毎回ブレまくってて,なかなかスマートに収拾できていません.

もちろん,事の重大さを知る由もない一般大衆は,まんまとのせられて騒いでいます.

曰く,
「日本学術会議は解体して,民間団体にしろ!」
「推薦される会員の,推薦理由を開示しろ!」
「会員になる学者は,国家や国民にどのような貢献をしたのか?」
「国民から理解される団体になるべきだ」
などなど.

政権擁護を目的としているであろう,これらの言説には,どれ一つとして首肯できるものがありせん.

当たり前です.
そもそも,現政府の学術会議に対する向き合い方が根本から間違っているからです.
それを擁護しようとすれば,当然ながら全部間違います.

この際,それぞれについて整理しておきましょう.


(1)学術会議は,国民から理解されるべき
国民はもちろん,政府からも理解される必要はありません.
そういう組織ではないからです.

政府は国民の代表です.
国民の意思が埋め込まれています.

そういう政府や国民は,時に理性的ではない判断をし,合理的ではない計画を立てたり,科学的根拠のない話を始めるものです.
それに「待った」をかけるのが日本学術会議の仕事です.

国民や政府から疎まれているくらいが,丁度いいんです.
そして,そうやって疎まれる理性と論理の組織を敢えて用意しておくのが,現代の国家に必要なスタイルなのです.



(2)国家や国民に貢献する人が会員になるべき
バカ言っちゃいけません.
論外です.

国家や国民へ貢献するかどうかなんて,そんな短期的で短絡的な評価ができる組織ではありません.

国家や政府,そして国民の利益になるかどうか,貢献するかどうか,なんてこととは異なる価値基準,つまり「学術」として存在する必要があります.

「国家や国民の利益になっている」と解釈・評価される人が会員になるということは,国家や国民にとって都合のいい人を採用するということです.
それでは学術組織の意味がありません.



(3)拒否理由を求める前に,まずは推薦理由を開示しろ!
推薦理由は「優れた研究又は業績がある科学者」です.
それを同じ学術研究をしている人たちが話し合って推薦しています.

なにをもって「優れた研究又は業績」というのか,それを総理大臣や国民が判断できるのですか?

それができないから,特別な組織として「独立」されているんです.
専門的に判断や評価ができないのに,どうして政府や首相が人事できるというのか.
これは,考え方や論理が根本的におかしいからです.



(4)科学者の組織のはずなのに,なぜ文系の学者が入っているんだ!
ウィキペディアか辞書で「科学」や「科学者」を調べてください.



(5)会員に選ばれる人が偏っている
そんなことを菅首相が言っている,っていうニュースもありましたね.

でも,だからなんだというのでしょう?
繰り返しますが,日本学術会議は学術組織です.
偏っているかどうかなんて,どうでもいいことです.

若手が少ない,っていう意見もあるようです.
でも,「優れた研究又は業績がある科学者」であれば若手でもなれます.
ですが,一般的に言って,若手にそういう人は圧倒的に少ないでしょう.
それが原因だと思われます.



(6)解体して,民間団体にしろ!
してもいいけど,どうせ予算は国から出ることになりますよ.
今までと一緒です.

他国における「日本学術会議的な組織」,つまり国立アカデミーにしても,民間扱いになっていたり,独立組織になっていたりしますが,当然のことながら学術活動というのはお金設けができる活動ではありませんので,そのほとんどを国家負担でまかないます.
国立アカデミー(Wikipedia)

どうして国家負担なのかというと,そうしないと学術的な中立性が保てないからです.

かつて,学術活動は「王様の施し」であったり,「貴族の趣味」だったりしました.
つまり,スポンサー(パトロン)による活動だったんです.
でも,これだと安定した科学研究ができないし,特定の誰かの思惑が介入するのはダメだということで,国が資金援助することになっているんです.
そういう歴史的な経緯を踏まえてほしいですね.



(7)軍事研究を禁止にしている時代錯誤の組織だ!
これも歴史的な経緯を知らずに言ってること.
現在,世界の一般的な学術活動は「反軍事」と「平和」を掲げています.
日本のアカデミーである日本学術会議も,ただそれにならっているだけ.

先般注目されていた「ノーベル賞」なんかが典型ですね.
とても有名なことなのに,なぜかスルーしちゃうのが不思議です.

科学と軍事の関わりについては,第二次大戦後にさらにシビアになりました.
核兵器の開発に影響を与えたアインシュタインや,実際に核開発をしたオッペンハイマーが「学術活動の軍事への関与」について否定的な姿勢をとったことは,毎年8月くらいに聞かされ続けて,耳にタコができるくらい有名なエピソードです.

先日の記事にもしましたが,別に国家が軍事研究をするなと言ってるわけじゃありません.
一般的な学術活動としてではなく,国家が独自に軍事科学研究として取り組めばいいということ.
つまり,どうしても軍事研究をしたい人は,防衛省に勤めてやればいいということです.

むしろ,なんでこのご時世に,大学等の研究リソースを軍事研究に利用したがるのか?
結局,防衛費を増やさず,軍事研究がしたいだけなんじゃないのか? ってことです.




そうこうするうち,ついにこんな資料が出てきたようです.
04年政府文書「首相の任命拒否想定しない」 学術会議、現行の推薦方式導入時に(毎日新聞 2020.10.26)
「日本学術会議」の任命拒否問題を巡り、推薦方法を現行方式に変えた2004年に政府が「首相が任命を拒否することは想定されていない」と内部資料に明記していたことが分かった。政府は18年、任命拒否が可能になるよう内部文書で見解をまとめており、過去の答弁との整合性については推薦方式が変わった点を強調してきた。しかし、現行の推薦方式を導入した04年段階でも任命拒否を想定していなかったことが明らかになった。


これについて,加藤官房長官は,こんなことを言いました.

加藤官房長官、04年文書「将来の任命拒否の可能性排除するものでない」(毎日新聞2020.10.27)
加藤勝信官房長官は27日の記者会見で、日本学術会議の任命拒否問題を巡り、政府が現行の推薦方式を導入した2004年に「首相が任命を拒否することは想定されていない」と内部資料に明記していたことを認めた上で、「首相が推薦の通り任命しないことが、法的に許容されないことを述べたものではない」と述べ、任命拒否は法的に問題はないとの見解を示した。

そんなことを言い出したら,なんでもOKになっちゃうでしょ.
これじゃ独裁・君主政治です.


もうそろそろ観念して,素直に謝罪したほうがいいと思います.
そうじゃないと,いよいよヤバい事態に突入です.

コメント

  1. じゅうべい2020年11月2日 13:15

    tanukinohirune というブログサイトで”日本学術会議のこと”という題名で三回にわたって書かれているのを読みました。このブログの趣旨とも似通っているところがあるので、興味を持っていただけるかもしれないと思い、紹介することにしました。既にもうご覧になっているかもしれませんね。
    ”自己権益を守るため、国民を分断するために仕組んだことで、きわめて計画的、あの表情は決して狼狽している人のものではない”というのは納得させられました。

    返信削除
    返信
    1. コメントありがとうございます.tanukinohiruneというサイトですが,見たことはありませんでした.実のところ,私は他者のブログというものを意識して読むことがありません.なにかの情報収集時に検索でヒットしたものを見ることがあるくらいです.ブログの内容ですが,いろいろと同意できるところがたくさんあります.ただ,私はもう少し厭世的です.壊れ始めたビルや氷山を止めることができないのと同様に,この日本の崩壊を止めることはできないと思っています.とりあえず瓦礫の下敷きになることを避けて,一旦収まってから復旧作業にとりかかるべきかと思います.

      削除

コメントを投稿

常識の範疇でご記入ください。お問い合わせはメールでも受け付けています。その場合は「プロフィール」からお願いします。