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学術会議人事に関するネットの政権擁護活動が,思いのほか激しくて笑った
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菅総理が学術会議の人事をいじった,っていう話について
昨日も話題にしたニュースです.
菅総理が,日本学術会議の人事で恣意的に「不採用」にした,っていう件.
これに日本学術会議が異議申し立てをしているという話です.
「いよいよ日本もこの段階に入ったか」と,ゾクゾクするような展開.
こうやって文明は滅んでいくんだなって,その状況をリアルタイムに見れていることに感謝です.
さっそくこのようなニュースになっているわけですけど.
■学術会議、首相に要望書 6人任命と説明求める日本学術会議(梶田隆章会長)は3日、新会員候補6人の任命を拒否した菅義偉首相に対し、理由の説明と6人の任命を求める要望書を幹事会で決定し、内閣府に送付した。極めて異例の対応。梶田氏は幹事会後、記者団に「質問して、しっかり理由を理解したい」と述べた。
どうせ自由民主党ネットサポーターズクラブあたりが政権擁護活動を展開するだろうな,って思っていたのですが,その活動に便乗する人たちが大量に溢れていて笑いました.
たしかに,
「学術=左翼」
「学者=左翼」
「科学=左翼」
っていう図式が成り立ちやすいので,それに引っかかるバカも多いのですが,あまりに単細胞な反応で呆れます.
曰く,
「もともと学術会議は左翼の巣窟」
「そもそも学術会議の方が,会員に推薦している理由を述べよ」
「税金を使っている団体なのだから,日本の国益にかなう会員が選ばれて当然」
といったコメントや反応が目立ちます.
嬉々として学術会議叩きに興じています.
「馬の耳に念仏」っていう諺がありますね.
それを理解できない人には,理解できない事をいくら言っても無駄だいう意味です.
これは真理です.
その上での話ですが,学術会議には左翼的な人が多いことも事実です.
しかし,それはもともと学術の世界に「左翼」と見做される人が多いからです.
それはそれで問題なのですが,だからといって学術の世界から左翼を一掃しろ,って話にはなりません.
それは,そもそも学術に右翼も左翼もないからです.
左翼系の研究者が優遇されているっていうのなら問題ですが,とりあえず現時点でそんな状態ではありません.
たしかに,「学術・学会は左翼的だ」と言われることもありますが,それは右翼系の人たちからの指摘と言挙げでしょう.
っていうか,別に研究者は右翼と左翼に分かれて戦っているわけではありません.
右翼系の研究者から,有効な研究が出ていないっていうだけのこと.
左翼的な視点からの学術研究が多いから問題だって言われたところで,だったら右翼的な視点からの研究をやればいいでしょ,っていう話です.
でも,繰り返しますが,こういう「右翼・左翼」で学術研究を分けるのは非常に困難です.
研究のことを右翼だ左翼だと分類するのは,物事について「これは右翼だ,そっちは左翼だ」などと気にして分類している人だけで,当の本人や周辺研究者からすれば,
「私の研究をそう解釈されるんならそうなんでしょうね.勝手に分類してればいいんじゃないですか,私はどうでもいいですから」
って感じだったりします.
以前勤めていた大学でお世話になっていた先生で,ある分野の「政策学」を研究している人がいたんですけど,その人なんかも,
「私は至って右翼的思想の持ち主なんですけど,私がやってる政策研究は,人からは『左翼』だって言われます」
と仰られていました.
そんなもんです.
もっと言えば,これは学者や研究者以外でも起こりうる話です.
本人は至って「国家のために」「国民のために」「左翼を打倒するために」と思って話をしても,それを「こいつは左翼だ!」などと言われることだってあります.
そう言えば,そんな言論ケースを安倍政権下ではよく見聞きしましたね.
話がちょっと逸れましたが,ここで言いたいのは,時の国家政府や世論の解釈で,
「こいつは左翼だ」
「反体制だ」
「国家のためにならない」
など学術研究や学者に対してレッテルを貼るのは,それこそ亡国への道です.
それに,私は日本学術会議の在り方に問題が無いと言っているわけでもありません.
そんなこと言い出したら,問題が無い組織なんて存在しないでしょう.
そもそも,前回の記事のタイトルにもしたように,日本学術会議のことを重要視している研究者はほとんどいないと思います.
なんなら,迷惑している人だって結構いる.
昨日の記事でも紹介した,
なんかも典型で,訳の分からない提言や検討をする組織でもあります.
けど,だからって国家政府が自分の都合に合わせて学術領域をコントロールしようとするのは言語道断です.
それが私が昨日のタイトルに込めた意図.
学術研究とその領域に,国家政府が関与し始めると碌なことになりません.
今はそれほどでもない,って思ってても,そのうち取り返しのつかない事態になってしまいます.
除外された人,除外されなかった人
ところで,今回の学術会議人事で菅首相に外された人を調べてみたんですけど,それが結構興味深いですよね.
憲法について自民党と反目している小沢隆一さん
戦争について自民党と反目している加藤陽子さん
共産党と懇意にしている松宮孝明さん
沖縄基地問題で自民党と反目している岡田正則さん
安保法制で自民党と反目している芦名定道さん
特定秘密保護法で自民党と反目している宇野重規さん
この人たちの,こうした政治的立場が任命拒否となった理由だとされています.
でも,それっておかしいですよね.
だって,会員に推薦されるための条件である学術研究の成果や功績とは,全然関係ないわけでしょ.
例えばですよ.もし,ノーベル物理学賞クラスの研究者が,戦争断固反対の平和主義者で,日本共産党を支持していたら,その人の研究業績は,日本学術会議の会員となるに相応しくないということでしょうか?
逆に,ゴリゴリの自民党信者で,反共産主義を掲げていれば,マック赤坂提唱のスマイル研究をしていても会員になれるのでしょうか.
公務員じゃあるまいし,学術研究の功績とは別の話ですよね.
※もし日本学術会議の会員を公務員相当の役職にするっていうのなら,それを明確に宣言した後,団体の名称を変え,学術研究ではなく公務員としての仕事をさせるべき.
それに,ちょっと意味不明な判断がされた人もいます.
例えば,政治学研究の宇野重規さんは,ガチガチの保守思想研究者なんですけどね.
その点,ネトウヨ(および自称・保守)の人たちはどう考えているんでしょうか.
保守思想の源流とされるアレクシ・ド・トクヴィルの研究で著名な方で,「トクヴィル〜平等と不平等の理論家」は2007年サントリー学芸賞を受賞し,「保守主義とは何か」という著書は,2017年度の新書大賞を受賞しています.
保守を自称する人たちなら,きっと宇野先生の著書を読んで勉強したことがある人も多いはずなんですけど.
その一方で,どうしてこんな人が除外されていないのか? って謎の人もいるようです.
文春オンラインがそれを報じています.
■菅義偉さん、日本学術会議に介入して面白がられる一部始終(Yahooニュース 文春オンライン2020.10.3)
例えば,平田オリザさんが華麗にスルーされていると指摘.
平田オリザさんと言えば、兵庫県豊岡市で来年2021年4月の開校を予定している「国際観光芸術専門職大学(仮称)」の学長になることが決まっており、この少子化の時代に結構なカネをかけて兵庫県立の専門職大学を僻地に立てるというので、学術的な裏付けが欲しかっただけなんじゃないかと思うんですよ。平田さん以外にも、周囲から見て「えっ、この人が学術団体の会員に任命されるの?」という人物がまともな学者さんに混ざって入り込んでいて、その割に宇野先生や加藤先生といった人が排除されてしまうというのは意外です。もうこれは、菅さんがみんなに面白がってもらうためにやっているネタであるとしか思えません。
ていうわけで,「国際観光芸術専門職大学」というのを調べてみました.
そもそも,専門職大学という教育機関について快く思っていない私ですが,そうでなくても超怪しい専門職大学.
まあ,それ以上のことは私からはありません.
志高く,頑張って設置準備をしている人たちには悪いし.
そう言えば,この大学を誘致しているのは,但馬地域3市2町(豊岡市・養父市・朝来市・香美町・新温泉町)とのことですが.
そのうちの養父市って,あの「国家戦略特区」になっている地域ですよね.
■国家戦略特区・養父市(養父市HP)
穿った見方をすれば,その効果が疑問視されることの多い「国家戦略特区」について,その優等生とされる養父市の成績にブーストをかけるために,危ない雰囲気満載の専門職大学を認可したんじゃないかとすら思ってしまう.
で,その学長就任予定である平田オリザさんを,学術会議の会員にしておけば政府直轄としての箔が付くと.
まあ,そうじゃないことを願いますが.
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