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いまだに「海外流出を防ぐための種苗法改正」と吹聴されている

種苗法を改正しても海外流出に歯止めはかかりません


こんなニュースがありました.

サツマ「べにはるか」 無断流通 韓国で拡大 栽培面積の4割 輸出競合に懸念(日本農業新聞 2020.11.15)
韓国で、日本のサツマイモ「べにはるか」が無断で栽培され、広く流通している実態が明らかになった。既に韓国ではサツマイモ栽培面積の4割を同品種が占める。日本の農産物輸出の有望な品目・品種であるだけに、国内産地からは海外に売り込む際、競合することを心配する声も上がっている。
(中略)
海外で育成者権を行使するためには、現地での品種登録が必要。ただ、新品種保護に関する国際条約(UPOV)では、韓国を含めた多くの国で登録の出願要件が「譲渡が始まってから4年以内」とされているため、「べにはるか」は期限を過ぎており、品種登録ができない。 
海外への持ち出しを規制することを盛り込んだ種苗法の改正については、現在、国会で審議している。

この記事から読み取れるのは,
「今までの日本政府がアホだった」
ということです.

これに懲りて,今後はしっかりと対応してもらいたいものですね.
今は私も農家の一人ですから,これは切に願うところです.


今国会で,種苗法改正が継続審議になっています.
それに関連する話題なのですが.

ただ,こういうニュースのコメント欄を見ていると,やっぱり出てくるのが「柴咲コウによる種苗法へのクレーム問題」です.

「せっかく海外流出を防ぐための法律改正だったのに,不勉強な女性タレントがツイートしたせいで廃案になった」
という趣旨のものがよく出てきます.

でもこれ,過去記事でも取り上げましたが,まったくのデタラメです.
過去記事はこちら.


あのさぁ,普通に考えてみてくださいよ.
たかが女性タレントの一人がTwitterでつぶやいたからって,国会での法案却下に影響するわけがないでしょう.
柴咲コウって,日本の政界にどんなだけの影響力をもってんだよ,と.

私も種苗法の改正案を読んでみましたが,あれって安倍政権らしい典型的な,
「売国法」
でした.

だから,「柴咲コウの指摘は至極真っ当です」という趣旨の記事を書いたのです.
実際のところ,国内世論を喚起したという実績はあるのですから,これは「柴咲コウ Good job !!」といったところでしょうか.

なので以前の国会では却下されて,もっとマシなものをあげてこい,ってことになったんだと思いますよ.

なお,改正案だった種苗法については,上述の過去記事を参照してください.


現実的には,上述の記事でも触れられているように「品種登録しないと海外流出は防げない」のですから,件の種苗法の改正というのは,「育成者」の権力を強くするための改正ということになります.

この種苗法改正には前日譚があります.
種苗法に先立ち,安倍政権では2017年に「農業競争力強化支援法」が成立し,2018年に「種子法廃止」が決まりました.

いずれの法律改正も,その趣旨は,
「農業を権利者ビジネスに変える」
ことと,
「日本農業の知的財産を民間(外国企業を含む)にオープンにする」
というものです.

信じられないかもしれませんが,法律の趣旨をみれば実際そうなんだから仕方がない.
そうすれば「日本の農業は活性化する」というのです.

ここから言えるのは,安倍政権は明らかに
「日本の農業市場を海外に売り渡す計画だった」
ということです.

おそらく,安倍政権は日本の農業を改善するのが面倒くさかったのでしょう.
いまいちパッとしない地方創生政策,抵抗の強い農協,自然相手の非効率な産業,ハイリスク・ローリターンな業界.
そんなものを,政府が時間をかけて考えたくなかったんです.
安倍晋三の知性からして,そんなところ.

だから,いっそのこと日本国家としては農業政策を諦めて,海外のメジャー企業が経営する場所提供の立場になろうとしたんじゃないか,そんな気がするんです.


種苗法改正に賛成する人の論拠は,
「現状,種苗ビジネスで儲けている企業はないし,農家への影響も小さい」
というものです.

私としては,
「へ〜,そうなんですか.だったら,わざわざ改正しなきゃ良いじゃない?」
っていう結論になるのですが,いかがでしょうか?

そして,現状は大丈夫であっても,この法改正をきっかけに,品種登録戦略や権利ビジネスに乗り出す企業があってもおかしくないのです.
それを考慮していない時点で,賛成派は極めて不誠実だと言わざるを得ません.

だって,日本の農業を破壊しようと計画すれば,それが可能になる状態にもっていく政策を推進するって,ちょっと頭がどうかしているとしか思えないんですけど.


これを例えるなら,公務員として外国籍の人を採用できるようにする,っていうのと似ているでしょう.
現在,国家公務員は原則不可能で,地方公務員の場合は自治体による,というものになっています.

それを「地方創生の起爆剤とするため,能力第一主義にしよう.だから,地方公務員については,全国一律でどんな国籍でもOKにしよう」という法改正をするようなもの.
これについて賛成意見として,
「現状,採用している人はほとんどが日本国籍だし,たとえ外国籍の人であっても問題は発生していない」
などと言ったところで,それはあくまでも現状の話です.

もしその法改正を機に,「彼の国」が計画的に「日本の公務員として自国民を採用されるように仕向ける」という戦略を立てたら,どうなってしまうでしょうか.

それと同じことを,種苗法改正賛成派は唱えているのと一緒です.



反対派も,種苗の海外流出を防ぎたいことは一緒


これも,
で述べたことですけど,話題となった柴咲コウ氏も「種苗の海外流出は防ぎたい」という思いは一緒です.

そんなことをYouTubeの投稿動画で話していました.
柴咲氏の種苗法に対する見解は,20分08秒から聞けます.



お聞きになったら分かるように,彼女は海外流出を防ぎたいと考えています.
その一方で,農家の不安も払拭する法改正であってほしいという趣旨のことを述べているんです.

その行間を読めば,
「単純に,海外流出を防ぐ法律だけを作れば良いんじゃね?」
っていうものになります.

もっと言えば,国内で法律を作っても海外での栽培・販売は止められないのですから,
「しっかり外交しろよ」
「しっかり農家を支援しろよ」
っていう,極めてシンプルなものになります.


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