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米価高騰問題は嚆矢にすぎない|農業全体が結構やばいのかも,少なくとも私の身辺では
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タイトルの件ですけど.
この話は農業界では日常的に言われていたことではありますが,今回の米騒動によってその危険性がさらに現実的になったことです.
もともと,「米」は農業の世界では「足りている」「余っている」とされていたものでした.
これは昨今のニュースで耳タコな話だと思います.
なので価格下落を防止する目的で「減反政策」がとられていたわけです.
この際,この政策の是非は論じるものではありません.
とにかく,「米はずっと生産過剰気味で,余っているから安くなっていたのだ」ということは事実だったわけです.
ところがそれについて,2023年度あたりから怪しい状態になっていた,という見解を見聞きすることが多いですよね.
減反政策(2018年以降は「事実上の減反政策」)が続いてきたことによって,ついに需要に対してギリギリの生産量になってきていて,これに「猛暑などの天候要因による流通米の減少」とか,「高齢者の体力の限界による離農」などが一気に重なり,米不足と米価高騰という形で現出するに至ったと.
しかし考えてみれば,こうした現象はなにも「米農家」に限ったことではありません.
農業全体が抱えている現象です.
つまり,なにかの拍子に,キャベツでもニンジンでもナスでもトマトでもピーマンでも,どれでも価格高騰や品不足は起きる可能性はあります,っていうか,すでに時々起きていますよね.
米と違って,その他の野菜というのは価格高騰とか品不足なら,「買う量を減らす」とか「食べない」といった対処ができていました.
ですが,ガチで「無い」っていう状態になることが十分に考えられる事態になってきているのです.
特に私のブログとか読んでくださっている方々は,きっと研究者とか大学生とかが多いことでしょう.
そんな皆様におかれましては,ぜひこのヤバい状況に覚悟をもって向き合ってもらいたいと思います.
当初,おそらく馬鹿騒ぎのような報道からスタートするでしょうけど,気を確かにもっていただき,冷静に事態の把握に努めていただきたいものです.
事業継承できない,つまり次世代の担い手がいない農家・農業事業者は多いものです.
多くは高齢者なので,あと何年も続けられないという状態です.
そして,爆上げが続く生産コストに,心が折れる事業者も多いことでしょう.
米農家が典型ですが,「兼業農家」の場合はほぼボランティア状態で生産活動をしています.
高齢者の場合は,年金生活のついでとして,農業をやっている人も多いです.
「先祖代々ずっと農家をやってきたのだから,この土地を守るためにも農業を続けている」とか,そもそも「自分は農業しかやれないから,生きがいとして農業をしている」という(特に高齢の)事業者は多いのです.
そんなタイプの農家・農業事業者さんは,採算ギリギリの売上であっても「生きがい」でなんとか続けていたわけです.
しかし,そこに「体力の限界」も加わってくると,いよいよ引退かなとなってきます.
そうした理由で一気に離農が進むと,野菜の品不足が急激に現出するようになります.
ましてや,昨今の異常気象です.
過去の経験と勘が通用しない状態にもなっていて,収穫量・流通量が急減する可能性は非常に高いです.
実際,私の生産物の業界では,昨年度は取引価格が急騰し,過去最大規模でした.
2024年の夏季・猛暑の影響で,品不足になったからです.
留意点として,当然のことながら,価格が上がっているからといって農家の儲けが増えているわけではありません.
品不足になっているのですから,収入は減っているわけです.
品不足と価格は1対1で連動していませんから,価格が高騰している時というのは,平均的な生産者の収入は減っています.
で,私の業界では離農も進みました.
ちなみに,この傾向は全国的なものですので,国も慌てて補助金(事業継続目的)をつけてくれています.
結構でかい補助金で,私のところでは約100万円いただきました.
でもまぁ,経費全体からしても誤差範囲くらいのものなんですけど,無いよりはマシです.
にしても,ちょっと補助金を出すタイミングが遅すぎですね.
本当なら3年前に出すべきものです.
もう離農ラッシュが始まった状態で補助金を出すと言っても,とどまる事業者は少ないんじゃないかなぁ.
離農を思いとどまるような金額でもないしね(交付金額は,生産規模によりますので,一律100万円とかではない.小規模なら数万円とかになる).
とにかく,そんな状態の農家や農業経営者が多くなっている,つまり,離農候補者があちこちでめちゃくちゃ溜まっているのが現在の日本です.
ある時から,堰を切ったように離農が始まって,品不足が深刻という状態で現れる日が近づいているのかもしれません.
おまけ
数年前に,こんな記事を書いていました.
だからあれほど言ったのに....,という事態になってしまいましたね.
教育業界といい,農業といい,そんなのばっかりです.
そういえば,かつて,女優の柴咲コウさんが警鐘を鳴らしていたのが,この「米問題」でしたね.
当時,彼女は叩かれまくっていましたが,今となってはどちらが正しかったのか.
この米騒動に至るまでの一連の流れ,そして,この騒動の只中にあって発せられている「言論」は,まさに日本の米ビジネスの支配権争いであることを疑うものになっています.
すなわち,「日本の米農家は非効率だから,輸入米に切り替えよう」とか「大規模資本企業に米生産を担わせよう」とか「海外で日本の米を生産して,日本に逆輸入させよう」とか.
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