注目の投稿
「今の政府は日本の農業を売り渡している」ってことについてピンとこない人のために
- リンクを取得
- ×
- メール
- 他のアプリ
種子法廃止とかTPPへの中国参入とかの何が問題なのか
これまでに,日本の農業問題について記事にすることがありました.
たとえばこちら.
■問題の本質は農家をバカにしていること古いものでは8年前のものです.
今では自分自身が農業をやってるんですから,人生とは分からないものですね.
さて,農業問題についてニュースやネット記事をみていると,時おり,
「たしかに日本の農業政策改革が進んでいるらしいのだが,それで具体的にどういうトラブルやデメリットが発生するのかイメージできない」
という趣旨のものを見かけます.
そもそも,日本の農業を守るための用意されている法律にわざわざ穴を作ること,それ自体が問題視されるべきなのであり,
「改正して何が問題になるのか?」
という疑問が愚問なんですけど,まあ,それはこの際無視するとしましょう.
特に,昨年まで猛威を奮った安倍政権において,徹底的に痛めつけられたのが農業です.
(別に農業に限らず,日本の産業全体がそうだったのですけど)
分かりやすいところでは,
「農業競争力強化支援法成立(2017年)」「種子法廃止(2018年)」
「種苗法改正(2020年)」
というトリプルコンボが強烈でした.
これにより,グローバル企業やどっかの国が,日本の農業に参入しやすくなったのです.
もちろん,こうした改革は「参入しやすくなった」だけですし,「日本政府がグローバル企業や外国勢力を排除しようと思えば排除する選択肢がある」ことは事実です.
しかし,考えてもみてください.
排除するつもりがあるのなら,どうしてわざわざ法改正なんかするのでしょうか.
例えば,2017年に成立した「農業競争力強化支援法」は,日本国内における農作物のデータを,外資系を含む民間企業に開示することによって,日本の農業競争力を強化させようという法律です.
実際,法律の条文はこうなっています↓
第二章 国が講ずべき施策
第八条
四 種子その他の種苗について、民間事業者が行う技術開発及び新品種の育成その他の種苗の生産及び供給を促進するとともに、独立行政法人の試験研究機関及び都道府県が有する種苗の生産に関する知見の民間事業者への提供を促進すること
■農業競争力強化支援法(PDFページ:農林水産省HP)
つまり,
「日本各地の研究機関や農協などが,長年に渡って研究してきた農産物データを民間企業にドンドン提供してあげれば,日本の農業は復活するのだ」
っていうことです.
バカですね.
喩え話をするのも馬鹿らしいですが,例えば「ソニー」っていう企業がありますよね.
このソニーが経営難に陥ったからって,自社の研究データを世界中の企業に提供してあげれば,競争力が強化されてソニーが復活するって考えるでしょうか.
それと同じことを,日本の農業でやることにしたんです.
いや,それだけじゃありません.
これに追加して,「種子法廃止」「種苗法改正」をしています.
同じくこれを企業で例えれば,種子法廃止は「自社製品を他社が作ってもOKにする」というものであり,種苗法改正は「自社が作った部品よりも,他社が作った部品を優先的に利用する」というものです.
これを売国と言わずして,何が売国なのか.
案の定,そういう売国の準備が整った日本を狙って,やっぱりあの国が動き出しました.
これについては,私も昨年の11月に記事にしています.
その記事に粗方書いていますけど,それでもイメージがつかないという人もいるでしょう.
だって,これでもまだ具体的に見えてこないから.
恥ずかしがる必要はありません.
農業に関心のある人なんて,あんまりいないんですから.
それに,この話を「農家」である私の家族や周囲の人たちにしても.頭にハテナマークが立ってる人が多いです.
グローバル企業や中国が狙っているのは,日本の市場ではなく,農業そのものです
冗談などではなく,おそらく日本の農家と農業を一掃して,自社・自国のコントロール下に置くことを狙っています.
特に,「米」が一番危ない.
っていうか,そのために種子法廃止したり,種苗法改正したりしたんでしょうから.
その一方で,日本はこんな事業を展開しています.
■スマート農業の展開について(令和2年12月更新(予算概算決定))(農林水産省HPより)栽培データや作業データなどを習得し,
「うまく育ったパターンは何か?」
「熟練者はどのような方法や判断をしているのか?」
といったことを定量的に記録・分析して,これをもとに農作業をしようというもの.
ところが,結構多くの農家の人がこれを,
「そんな科学的なデータに頼らなくても,最終的には経験と勘でやれるようになるんだ」
などと評するのです.
うちの父も,テレビのニュースでやっていたスマート農業の話題を見ながら,そんなことを言ってました.
残念ながら,発想が周回遅れです.
そして実際,日本の農業は世界と比べて,とりわけ中国と比べても周回遅れなのです.
いいですか.
今,世界の農業業界が取り組んでいるのは,
「農業従事者を出来るだけ少なくする」
ことです.
言い換えれば,一人あたりの生産性を徹底的に高めることに注力しています.
そう遠くない将来,「農業」というビジネス分野は激変するでしょう.
なかでも穀物系が.
しかし日本では,たとえば.
「日本人の若者の就農者を増やすために・・・」
などという思考パターンからスタートするものが多い.
いや,気持ちは分かるんです.
分かるんですけど,もう世界と時代は「農業って実は楽しい仕事なんだよ」っていうライフスタイルの次元じゃないんです.って私は考えています.
つまり,農業のデータ化の先に見据えているのは,AIやドローン,ロボットなどを用いた徹底した「自動化」です.
「経験と勘」なんか無くたって,どっかの管理オフィスで作業工程を監視し,不具合が発生したところをメンテナンスする,っていうのが近い将来の「農家」の仕事になります.
それはちょうど,かつての証券会社のトレーダーが,手作業による集計と,熟練したコミュニケーション技術で証券売買をしていたのが,のちのコンピューター化によって,パソコンの前に座るだけの仕事になったのと一緒です.
もちろん,一部の自動化が難しい農作物は,こだわりの農法が残るでしょう.
ですが,自動化された格安農産物が出回るようになった世界では,あくまでも特別な農産物としての位置づけにしかならないと思います.
この「農業の自動化」「スマート農業」については,日本は圧倒的に遅れています.
それは,これまでの国の農業戦略の失敗としか評することができません.
だって,実際に何もしなかったし,むしろ逆走しましたから.
特にこの分野において中国の躍進は凄まじく,もう世界を席巻しています.
これに乗っかっているのがヨーロッパであり,対立しているのがアメリカです.
これに乗っかっているのがヨーロッパであり,対立しているのがアメリカです.
日本はというと,上述したように「乗っ取られようとしてる」のです.
さすがですね.
■中国でスマート農業が急拡大している背景【特集・中国農業のキーワード 第4回】(スマートアグリ 2020.5.11)
■中国発スマート農業、環境観測から農薬散布まで自動化 IoT活用でコスト減と増益を両立(日本経済新聞 2020.12.1)
「日本の技術力があればこれに対抗できる・・・」
などというのは寝言レベルになっています.
御存知の方も多いと思いますが,こうした具体的な産業におけるIT技術では,日本はもう蚊帳の外と言っても過言ではありません.
むしろ,世界の農業は中国化していると言われており,ドローンも管理システムもロボットも,なにもかもが中国製です.
実際,私達の周りの農家の人達が使っている「栽培管理システム」の多くも中国製が目立つようになりました.
繰り返しますが,日本農業が中国の管理下に置かれるのは,法改正をした今となっては,もはや確定事項なのです.
あとは,いつまでにこの体制が完成するか,ということ.
最終的には,おそらく日本国内は「中国資本の米農家」ばかりになるでしょう.
なんせ,中国は富裕層が日本からお米を輸入している状態ですから.
ということは,当然ながらビジネスの発想で言えば,
「だったら,中国企業が日本でお米を作ったり,日本の農家を買収してしまえば,自分たちの儲けになる」
と考えるはずです.
もっと言えば,中国の広大な農地で「日本人好みの味に調整された格安のお米」がオートマティックに栽培される時代がくると思います.
そうすれば,日本にむけて輸出することもできるようなります.
でも日本には「米」に対しては高い関税があるから大丈夫・・・,ですって?
なので中国は,このタイミングでTPPに入って関税撤廃を目論んでるんじゃないでしょうか.
私はそう考えてますけど,どうでしょうかね.
それじゃマズイってことで,だから「種子法廃止」とか「種苗法改正」はダメだって言ってたんですけど,まあ,こんな複雑な話はなかなか世間一般にはウケないですからね.
- リンクを取得
- ×
- メール
- 他のアプリ
コメント
コメントを投稿
常識の範疇でご記入ください。お問い合わせはメールでも受け付けています。その場合は「プロフィール」からお願いします。