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そう言えば,あの先生はどうしてるんだろう

中島みゆきが大好きだった先生


私は体育・スポーツの研究者ですが,講義系だけじゃなくて実技の授業も受け持っていました.
なので,ときどきスポーツ実技の教員用研修会に参加することがあったんですが,そのうちの一つの研修会で,常連としてずっとお世話になっていた先生がいます.
合宿形式で行われていて,部屋も相部屋方式だったのですが,いつも同室にさせてもらっていました.

ちなみに,大学教員の研修会が相部屋での合宿だというと,結構驚かれる人が多いですね.

まぁ,そういうのが好きな人の集まりだったりもしますので.


で,この先生は実技授業の質が非常に高く,ご高齢で定年間近だというのに「動ける教員」として活躍されていました.
竹を割ったような性格の方で,若い私達にも親切に接してくれまして,とても尊敬できる方です.

実際のところ,こういう人は「研修会」なんかに来なくてもいいように思えますし,事実,講師として参加することもあるようですが,
「新しい知識や考え方を確認したい」
ということで,ずっと研修生として参加されているようです.


そんなこの先生は,「中島みゆき」が大のお気に入りらしく,何年か前からその話題をしてくれるようになりました.
以後,この合宿中の部屋では「中島みゆき論」で熱く盛り上がっていました.
曰く,「中島みゆきの歌には,魂をゆさぶるものがある」と.


とは言え,実は私の方はと言うと,中島みゆきをあまり知りません.
ポップ・ミュージック,歌謡曲,流行歌といった類のものから全く外れた生き方をしてきましたので.

中島みゆきと言われても,NHKのプロジェクトXの主題歌である「地上の星」と,あの伝説のドラマ「家なき子」の主題歌である「空と君のあいだに」を,なんとか知ってるくらいですね.


そんなわけで,その先生からは,
「これを機会に,中島みゆきを聞きましょうよ」
と言われ,合宿中は中島みゆきをずっと聞いていました.

ただ,帰ったら普段はほとんど聞かないですけど.


でも,この機会にということでじっくり聞いてみると,結構これが聴き応えがあることが分かりました.
今日はそんな与太話です.


『空と君のあいだに』は,「あの犬:リュウ」じゃなくて「内藤剛志:オヤジ」の心情として解釈する


中島みゆき論とは違うかもしれないんですけど,私が唯一きちんと聞いたことがある中島みゆきの歌が「空と君のあいだに」だったので,最初はこれについて討論してもらいました.

で,私としては「空と君のあいだに」っていう曲は,ドラマを見ていた最初の頃は,安達祐実演じる主人公の愛犬「リュウ」目線のものだと思っていたんです.
実際,これは中島みゆきさんもそのつもりで作成したようですので.
ウィキペディアにも,その事情が掲載されています.
歌詞は同ドラマの主人公すずの愛犬リュウの目線から歌ったもの。そのためミュージック・ビデオにも多数の犬が登場する。また、中島が主題歌を依頼された時点で設定が「犬を連れた家のない少女が主人公」しか決まっておらず、唯一の手掛かりである犬の写真だけでイメージを膨らませて曲を書いた。中島曰く「犬の気持ちで見れば、犬が見えているのは『空』と『君』しかないんです」。
でも,その後のドラマの展開や,この犬「リュウ」のキャラクター設定から考えて,実は内藤剛志演じる主人公の父親の心情とシンクロしているんじゃないかと思うようになりました.

これは,傑作脚本と傑作曲が生み出した必然的な関係なのかもしれません.

ドラマにおいて,この犬を「リュウ」と名付けたのは主人公の母親でした.
理由を聞かれたその母親は,
「あなたのお父さんが辰年生まれだったから」
と言うのです.

そうです.
あの犬:リュウというのは,ドラマにおいて主人公における「父親」の依代的な役割を担っているんです.

この歌詞のところなんか,まさに内藤剛志さんが演じる父親そのものです.
君を泣かせたあいつの正体を僕は知ってた
ひきとめた僕を君は振りはらった遠い夜
ここにいるよ 愛はまだ
ここにいるよ いつまでも
実際,ドラマでは当初,人間のクズのような父親でしたが,クライマックスでは素直になれないながらも娘のことを心から想う存在になっていました.
ただ,悲しい結末になりましたが.


このことをその先生に話すと,猛烈な勢いで賛同してくれました.


「命のリレー」「時代」「ヘッドライト・テールライト」は銀河鉄道の夜・宮沢賢治


その先生が特に好きな曲が「命のリレー」だというんです.
他にも,「時代」とか「ヘッドライト・テールライト」あたりも.

これらの曲をずっと聞かせてもらって思ったのは,どれも輪廻転生や,生命の本質といったものを歌っているということ.

「命のリレー」では,
この一生だけでは辿り着けないとしても
命のバトン掴んで
願いを引き継いで行け

「時代」では,
めぐるめぐるよ 時代はめぐる
別れと出会いをくり返し
今日は倒れた旅人たちも
生まれ変って歩き出すよ

「ヘッドライト・テールライト」では,
行く先を照らすのは
まだ咲かぬ見果てぬ夢
遥か後ろを照らすのは
あどけない夢
ヘッドライト・テールライト 旅はまだ終わらない

なんだか既視感のある生命観だなぁ...って思っていたのですが,いまいち整理できずにいたところ.
そこで,同室にいたもう一人の先生が,
「これって銀河鉄道の夜じゃないですか?」
って言うんです.

あぁなるほど! って感動しました.

なんのことはない,中島みゆきはそういう思想家のようです.
結構有名らしい.
「命のリレー」を出したアルバムなんか,「転生 TEN-SEI」ですから.
転生 TEN-SEI(Wikipedia)


卑近な話にすれば,これってLGBT問題とも関連があると思うんです.
よく,同性愛者は子孫を残そうとしないから生物的に欠陥品だと言われることがありますよね.
実際,それを世間に向けて堂々言う奴もいます.
同性愛が広がれば「足立区滅びる」 区議は議会でどんな発言した?(東京新聞 2020.10.5)

他にも,生殖器に異常があって子供を作れない人や,子供を欲しがらない人生を送っている人に対する差別的な見方は多いものです.

ですけど,生命というのは,果たして生物的な子孫を残すことを至上命題として存在しているのか? という疑問があります.
事実,生物の捉え方にしても,この考え方にしても,現代科学における一解釈に過ぎません.

極端なことを言えば,現代科学的に考えると,人は死んだらそこでプッツリと存在がなくなるのですから,どのような生き方をしようと,死んだら全部無くなるわけで.
いくら自分が子孫を残したとしても,その自分自身が死んだらその事実もこの世界から消えるとも言えます.


じゃあ,人はなんのために生きているのか.
それは,より善く生きることを目指すために,修行しているのではないかと思います.

ある人に言わせれば,生命というのは,誕生して死ぬまでの間に,魂を磨く時間を与えられているんだとか.
それが短かろうと長かろうと,とにかく魂を磨くことに専念すればいいのだそうです.

例えば,新生児がすぐに死んでしまうことがありますよね.
でも,その生命は,誕生してから精一杯生きようと努力し,周囲の生命(親や産婦人科医など)に影響を与えたことになります.
この生命は,それで十分に魂を磨く時間だったというのです.

「命のリレー」にこうあります.
この一生だけでは辿り着けないとしても
命のバトン掴んで
願いを引き継いで行け
どうせ人の一生1回分では足りないのです.
誕生と死をを何度も何度も繰り返して,生命が目指しているところに辿り着こうと努力すればいいのです.
自分の一生は,そのうちの一つに過ぎませんが,大事な一回ということ.
無駄にしてはいけません.

ちょっと怪しい思想・宗教観を語る記事になってきましたので,ここまでにしときます.


なんにせよ,あの先生には大変お世話になりました.
これからもご健康とご活躍を祈念しております.

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