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さて,例の大学の話でもしましょうか

今,世間をお騒がせしている理事長がいる大学について


「大学ガバナンス改革の申し子」

私は彼のことをそのように解釈していますが,まあ,そんなに簡単に説明できるような話ではないこともたしかです.


今回,あの例の大学とその理事長がニュース等で取り沙汰されて,「N大学はこんなに酷いところだったのか!」などと連日の大騒ぎでしたが,私たちからすれば....

「うん,知ってた」


っていう認識です.

私はSNSとか全くやらないので,その他の大学関係者の方々の反応は分かりませんけど,概ねそんな情報発信をしている人ばかりなのではないかと察しています.
つまり,
「あの大学が理事長ワンマン体制で傲慢な経営をしているっていうのは,大学業界では常識だよ」
っていう感じ.

手負いの猛獣に石を投げるが如く,ここぞとばかりにN大学関連の疑義ネタを放り込んでいる大学人も多いんじゃないかと推察しています.

せっかくなので私も記念に一石投じておくと..,例えば,あの大学って「N大学附属〜〜」などという関連機関・施設が多いじゃないですか.
あれって,人事で気に入らない教職員をとばすための箱だとも言われています.
意に沿わない職員がいたら,中央から遠ざけてしまえとばかりに,僻地勤務を命じちゃうのがN大方式とのこと.


本件に関連して,あの大学では「派閥抗争」が半端じゃないことも有名で,これも私達大学教員・職員の間では常識でした.
権力を握った人のところに,ヒト・モノ・カネが集まる仕組みになっているからです.

なんでそんなこと知ってるのか? って?
そりゃ,内部の人とか,その激戦地から這い出てきた人,あとは脱北者から「本当にヤバいN大」を聞かされるからです.

私は,そんな中の「激戦地から這い出てきた人」と仲良くする機会がありました.
この人は,派閥抗争の真っ只中で右往左往していたけど,それに辟易して大学を移ってきたという身の上です.

この人曰く,N大に着任してしばらくすると,同学科の先生から「勉強会」に誘われたそうなんです.
大学事情に明るくない新任ということもあって,勉強会というからには出ておいた方がいいのだろうと思い,指定された場所に向かいます.
ところが,不思議なことに行き先は「ホテルのレストラン」.
とはいえ,その時は「いやぁー,さすが大学の先生達の『勉強会』というのは,開催する場所も豪華だなぁ」としか思わなかったそうです.
うん,私もそう思うだろうな.

ところが,会場に案内されたら,大きなテーブルを囲んでの会食(時間帯は朝食だったそうです).
てっきり「勉強会」をするもんだと思って,ノートと鉛筆を取り出してみたものの,そのテーブルには豪華な朝食セットがぎっしりと並べられます.

会場には20〜30人くらいが出席しており,おそらく教員ではなく,職員(秘書?)と思しき人が,出席チェックを入念にしています.
食事の準備が整うと,集まった人の中でも一番偉そうな人が挨拶.
まったく意味不明な状態のまま,普通に豪華な朝食を食べて,それで終了.

一体これはなんなのでしょうか? って,この勉強会に誘ってきた先生に尋ねてみるものの,なんだかはぐらかされたような回答.

というわけで,知らず識らずのうちに「その派閥」へと組み込まれてしまった瞬間です.

この「勉強会」は定期的に開催され,その都度,しっかりと出席チェックが入ります.
出席率が悪いと,「要注意人物」にされて,最終的には「裏切り者」としていじめられることもあるとか.
一方,出席率が高ければ,一番偉そうな先生からのご寵愛を受けることができて,学内活動が円滑になるという便益を受けることができるというシステム.


もちろん,あの大学における「すべての教職員」が派閥抗争をしているわけじゃありません.
なんというか,派閥抗争に巻き込まれやすい人とか,どうしても巻き込まれちゃう立場の人っていうのがいるんですよ.
好きで抗争したり,派閥作ったりしている人もいるでしょうしね.

「派閥抗争」について,別の先生(N大に奉職している先生)に尋ねてみましたが,その人は,「僕はそんなのには巻き込まれていないよ」と言ってました.
ただ,巻き込まれちゃっている人のなかには,本当に大変な目にあっている人がいることもたしかなようでして.


選挙とか人事に係ることであれば,平気で「実弾」が飛ぶこともあった,という内部情報もあります.
まさに絵に描いたような「お菓子の下に現金」をもらったこともあるとか.
「越後屋,お主も悪よのぉ〜」が目の前で繰り広げられていて驚いたそうです.


ところで,この大学および理事長に関するニュースにおいて,どっかのテレビ番組で,
「こうした状態は,N大学特有のものなのでしょうか? 他の大学でも似たような状況があるのではないでしょうか?」
などというコメントをしていた人がいます.

「そんなの,他の大学でもあるに決まってるじゃないか」


って感じです.

もちろん,あの大学は特別に「有名」なんですけど,他の大学も五十歩百歩です.
むしろ,小規模経営難大学ほど,もっと過酷な話があったりするわけで.

なお,N大の次に有名なのは,T大ですかね.
あそこもハチャメチャ経営がまかり通ってるから,そのうちスキャンダルが出てくる予感.

っていうか,こうした
「理事長の胸三寸で大学が経営されている」
「大学が経営陣に私物化されている」
というベクトルをより強化するのが昨今の大学改革だよね,っていう話題をこのブログでずっと展開してきたわけです.

ですから,この記事の冒頭で述べたように,今回の事件というのは,
「大学理事長に強力な権限が付与され,そのトップダウン式の経営方式を推奨」
している,
「大学ガバナンス改革」
が見事に,それはそれはまことに見事に機能していることが公になったというニュースでもあるわけです.

実際,私はN大の理事長の話を聞いたときは,
「なるほど,大学ガバナンス改革を忠実に実現しているんだなぁ」
としか思わなかったし.


ちなみに,私がかつて奉職していた大学でも,理事長によるハッピーな経営がなされていました.
その一端を,小説で書いたこともありますんで,お暇だったらこちらもどうぞ.

なお,この小説では「理事長派閥 v.s. 学長派閥」という構図になっておりますが,小規模経営難大学においては,もはや「派閥」などというものは存在せず,理事長の意のままに大学が操られているという現状を描いています.

で,そこで暗躍するのが「スパイ」であり,「金魚のフン」なのです.


この小説を昨年公開してから,ずっと「続編」を書こう書こうとするものの,ついに放置状態になって今に至ります.
で,続編では,前作と同じ時間軸で「職員目線」によるものにしようかなって構想中.
主人公は,学生課の高石課長と鈴原美紀を予定.
前作のあの場面を,この2人の目線で見るとこんな感じでした,っていうやつ.

しかも,そのメインテーマを「活動的なバカ理事長ほど恐ろしいものはない」っていうのにしようと思っていたので,今回のN大学理事長事件は,かなりタイムリーかなって.

例えば,その「バカ理事長」を垣間見れる前作の一部分としては,こんなところでしょうか↓


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