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太陽の蓋|フクシマフィフティ|ウクライナとロシア

視点が変われば捉え方も変わる


ずっと「見なきゃ見なきゃ」と思いつつ,スルーしてきた映画が「太陽の蓋」です.
福島第一原発事故をテーマにした,2016年の作品.

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関連して,「フクシマフィフティ(Fukushima 50)」っていう,ちょっと残念な映画がありました.
これをレビューした記事も書いてます.


前評判通り,フクシマフィフティよりも太陽の蓋の方が出来が良いですね.
フクシマフィフティはエンタメであり,ポップコーンムービー.
太陽の蓋は硬派な映画です.


ただ,世間には逆の感想を持っている方々もいて.
っていうか,ネット上では圧倒的にフクシマフィフティの方が高評価ではあるのですが.

典型的なものでは,フクシマフィフティの方が豪華キャストで,しかも映像のクオリティが高いというもの.
まあ,これは制作費が違うんでしょうがないか.

あと,太陽の蓋は,当時の政権であった民主党を擁護的に解釈していることに批判が多いという感じでしょうか.
私はそうは思いませんでしたけど.

ただ,これに関しては,
「太陽の蓋は,福島第一原発事故の最終報告書をそのまま映像化しただけで,ドラマとしての面白みが無い」
っていう別角度からの批判もあったりするわけで.

そんなわけで,私見としては,フクシマフィフティが「ヒロイズム(英雄賛美)」的なところから,有る事無い事をごっちゃにしてエンタメに振っているのに対して,太陽の蓋は事実ベースで作られたメッセージ性の高い映画だと思います.

原発事故について後世に語り継ぐためには,おそらく太陽の蓋の方が重要な映画になるはずです.


ちなみに,フクシマフィフティの方が豪華キャストで映像クオリティも高い,ということでしたが,私としては「演技(演出)」も「映像」も,映画としてのクオリティは太陽の蓋の方が高いと思います.

特に,カメラワークが地味ながらも秀逸です.
撮影に関わった人の頑張りがよく感じ取れます.


演者の方々も,大げさな演技をせずに淡々と「各自の仕事」を演じているところが良いです.
袴田吉彦と北村有起哉は絶妙だったし,三田村邦彦の菅直人首相も違和感がありませんでした.


それでちょっとこの製作年である「2016年」で思ったんですが,この年ってちょうど「シン・ゴジラ」が公開された年でもあります.
太陽の蓋のすぐあとにシン・ゴジラが公開になっていますね.

「太陽の蓋」を見た人は,ぜひ「シン・ゴジラ」も合わせて見ることをオススメします.
なんかすごく両者がシンクロしてて面白いですから.
実際,この両者があまりにも似ているってことを指摘するレビューもあるようです.


シン・ゴジラのキャッチコピーが「現実対虚構」というものでしたが,太陽の蓋は「現実対現実」として見ることも出来ます.
つまり,シン・ゴジラの「無修正版」が太陽の蓋といったところでしょうか.



そんななか,この「太陽の蓋」を熱心に批判する人の多くが,
「民主党の言い訳映画になっている」
「民主党政権や菅直人を擁護する内容になっている」
というもので,まるでプロパガンダ映画だと主張する向きもあるようです.

ですが,この映画の別角度からの批判にもあるように,
「福島第一原発事故の最終的な事故調査報告をそのまま映画にしているだけ」
というものでして...
福島第一原発事故の最終報告書は2015年に出ているんですが,これが映画の原作みたいなものなんですね.

なので,「民主党を擁護している」っていう指摘はちょっと違うかなと.
言い換えれば,この映画を見て民主党擁護だと思う人が多いってことは,それだけ誤った事実認識が広まってるってことなのでしょう.

だから,フクシマフィフティだけを見てしまって,
「民主党政権と菅直人首相があまりにも無能だったため事故が悪化した」
などと思ってしまうようだったら,注意が必要です.

私なんぞは,フクシマフィフティという映画の何が気に入らないのかって,まさにこの,
「事故現場だけが英雄的な活躍をして,それ以外は全部クソだった」
という,多くの一般の人々が持っている認識にのっかって,その認識を強化する方向で作られた映画だという点です.

人間というのは,自分の認識を強化してくれる物語には満足感を得やすいものですから.


でも,実際のところは,結構な勢いで「東京電力本部と事故現場」が連携していなきゃならないのにそれが出来ておらず,しかも官邸や官庁への情報共有を怠っていたことが分かっています.

そもそも,この原発事故の根本的な原因は「地震・津波対策を甘くみていた」ことであり,それを過去の国会でも再三再四指摘されていたにも関わらず,放置していたのです.
事故に対する訓練も不足していたとされています.

で,そうやって放置していた役者が,時の与党・自民党であり,当時の安倍晋三首相であり,そしてフクシマフィフティの主人公である吉田所長だった,というのが事実です.

もちろん,事故に向き合った民主党政権の責任もあるのですが,「そもそも事の発端はなにかと言うと」となると,かなり解釈が難しいわけです.


それと似たようなことが,今,世界最大の関心事であるロシアによるウクライナ侵攻にも言えると思うんですよね.

私自身,このウクライナ侵攻については,なるべくボーッと見るように心がけています.

なんて冷酷な奴だと思われるかもしれませんが,これは心がけの問題です.
逆に気になるのは,侵攻しているロシアが「悪」で防衛しているウクライナが「善」という見方でしか報道しない日本国内の在り方です.

これって結構やばいと思いますけどね.

もちろん,事の発端はウクライナがロシアに対し挑発的な軍事活動をしたからじゃないのか? っていう報道やコメントも見かけることはあるんですが,それをかき消すように「ウクライナが可哀想」な空気ですよね.

日本って,なんやかんやで,ヨーロッパやアメリカと比べれば,本件については対岸の火事度が高いと思うんです.
だからこそ,あんまり当事者に感情的にならず,ボーッと見ることが大事かなと.
そりゃ,ウクライナ人に友人がいるとか,ウクライナと関わりが深いっていう日本人もいるでしょうから,全員が同じことをしろというわけではありませんが.

それよりも,ロシアとウクライナが衝突することで,日本や自分にどのような悪影響が発生するのか? っていう視点をブラさない方が,この問題を考える上で重要だと思います.
さしあたって,私には輸入原料やエネルギーコストの高騰が痛いです.

ウクライナ募金に小銭を投じることも悪くないのですが,それよりも,このウクライナ侵攻問題からどのような教訓を得られるかがポイントではないでしょうか.

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