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子どもの権利条約(児童の権利に関する条約)を知らない教員が思いのほか多いらしい

そんなニュースが流れてた


今朝,仕事前にテレビをつけたらNHKでニュースをやっていました.
これがそのニュースです.
子どもの権利 教員の3割「名前だけ」「全く知らない」NGO調査(NHK 2022.4.23)


文章としてよくまとまっている新聞記事を引用しておきます.

子どもの権利条約、教員の3割が「内容知らない」 NGO調査(東京新聞 2022.4.22)
18歳未満の子どもの人権を保障する「子どもの権利条約」の内容を知らないと答えた教員が3割に上ることが、子ども支援の国際非政府組織(NGO)「セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン」(東京都千代田区)の調査で分かった。
(中略)
「子どもの権利を知っているか」との質問に「全く知らない」と回答したのは5・6%、「名前だけ知っている」は24・4%で、合わせて3割が内容を知らないことが分かった。一方、「内容までよく知っている」との回答は21・6%にとどまった。「内容について少し知っている」は48・5%だった。
子どもの権利としてふさわしい内容を複数選択で答える質問で「遊ぶ・休む権利」「意見を聴かれる権利」を正しく選んだ教員は約6割だった。子どもの権利は子どもが基本的人権として無条件にもっているのに「子どもは義務や責任を果たすことで権利を行使することができる」と誤った認識を持つ教員が27・6%いた。課題として「適切な教材がない」という声も多かった。

近年では,学校の先生になる教育を受けた人なら必ず教えられる「子どもの権利条約」.
学校の存在意義と,教員自身の存在意義にも通じる思想哲学だから,かなり重要なものです.
ところが,あまり認知されていないらしい.

世も末です.


私も中高の教員免許を持ってますので.
大学の頃に教えられた覚えはあるのですが,たしかに何条に何が書いてあってとか,条文の詳しい解説をしろって言われたら怪しいものです.
でも,とりあえず,教員免許をもらうためには勉強しなきゃいけなかったので勉強したわけで,「全く知らない」と回答するような程ではないかなと.

なので,こんな記事も過去に書いたことがあります.

「子どもの権利条約」の認知度が低いのと同様,「学校」が誕生した理由の認知度も低いのです.

細かいことを端折れば,いずれも「大人から子供を守るため」に存在し,誕生しました.

その理由が「大人」にとって耳が痛いものだから,どうしても大人向けに喧伝される情報が少なくなるものです.
だから両者の認知度は低いのです.

ためしに,学校が誕生した理由をネットとかで調べてみてください.
全然出てこないから.

それはもちろん「諸説ある」ということで確定的な誕生の歴史を語れないから,っていうのが主なものなのですが.
それでも,少なくとも「近代の公立学校」が誕生した理由はこれですよね,っていうものとしては,「大人社会(資本主義に基づく労働社会)から子供を守るため」というのが多くの賛同を得られる理由だと思います.
(嗅覚のいい人は分かると思いますが,ちょっと社会主義・共産主義チックな香ばしさがありますよね.実際,そんな流れを汲んでいるんですけど,面倒なのでここでは割愛します)

一方,多くの大人たちが勘違いしている「学校誕生の理由」とは,
「子供が社会に出るために必要な知識と技術を身につけるため」
というものです.

が,これは嘘です.

子供をテイのいい低賃金労働力と見做したがる悪い大人から子供を隔離するため,彼らに「子供を学校に通わせれば,将来,高い知識と技術を身に着けた労働者になってくれますよ」ということにして誤魔化すための口実です.

そうじゃないと,
「俺の息子は俺のものだ.俺が仕事を教えて,俺の仕事を継がせるのだ」
と言って家業の労働力にする親がいたり,
「労働技術は子供の頃から実際の仕事現場に入って身に着けた方が良いに決まっている.賃金も支払われるのだから,一石二鳥じゃないか」
などと言いくるめて,子供を奴隷労働として酷使したがる経営者があとを絶たなかった歴史があるのです.

学校で教えられることが「社会に出た時に役に立つ」だとか,学校教育によって「国民統合の思想を植え付ける」とかっていうのは,“ついで” の話であり,大人を騙すためのデタラメです.
それが主目的ではありません.
これは学校の先生以外の大人達も,本当なら知っておくべきことだと私は思います.

学校とは,「あなた」から子供を守るために存在しているのだということを.


で,時代は進み,子供の権利をもっとしっかり守ってあげようということで誕生したのが「子どもの権利条約」です.
その背景には,労働搾取,私的奴隷扱いといったものに加えて,戦争や飢餓,貧困などの影響をモロに受けやすい子供を守ろうという動きがあります.


ところで,たまに大人の方で見かけるのですが,この「子どもの権利条約」と聞くと,何を思ったのか,
「成熟していない人間が権利だけ主張するな.だったら子供には義務や責任もしっかり教え込め」
などとヒステリックに声をあげる人がいます.
実際,上述したニュース記事でも,そんな解釈をしている人がいましたね.
権利が欲しければ義務を負え,と.

そもそもその考え方が自由主義・民主主義社会として結構な勢いで危険だとは思うのですが,ともあれ,これまでの話を読んできてくれた人にはわかると思いますが,これは「そんな話」ではないのです.

「子供にも,大人と同様に人権がある.自由に自分らしく考え,生きる権利を持っている」
ということを宣言しているに過ぎません.
言い換えれば,世界の多くの子供は,依然として「大人の所有物」であり,「大人に都合のいいもの」として虐げられている場合が多いから,特に注意して守らなければいけない,ということです.

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