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思い出の楽曲|cargo-For The Light|blogger共有


私が通っていた大学は,比較的クオリティの高いトレーニングジムがありました.
体育会のクラブはもちろんのこと,個人利用も可能です.

「クオリティが高い」というのはホントにホントで,ある世界的なスポーツイベントが日本で開催された際,超有名チームが本学をキャンプ地として利用したこともあります.
その選択理由が「トレーニングジムのクオリティが高かったから」というのは事実です.

そんなクオリティの高いトレーニングジムは,学生の間では「トレーニング室」,通称
「トレ室」としてよく利用されていました.
クオリティが高いといっても,街のスポーツクラブのような一般人向けのチャラチャラしたものではなく,ガチのアスリートがパフォーマンスアップのために必要とするものが揃っているというスタイルです.

なんせ置いてるもののクオリティが高いわけですので,利用方法もクオリティが高い.
エチケットが悪い学生を完全排除するため,守らなければいけない「鉄の掟」がたくさんありました.

鉄の掟を用意したとしても,実際に守らせなければ意味がありません.
鉄の掟を守らせる,その管理スタッフもクオリティが高い人が用意されていたのです.

たいてい,卒業生のなかから就職浪人的な扱いで採用されることが多かったので,一人が1〜2年ほど勤めたら,次の卒業生から新しく管理スタッフが採用される,という感じでした.
常時2名が採用されており,ほとんどの場合,1年違いの先輩後輩関係で構成されているというケースが多いですね.
まあ,ちょっと複雑なように思えますが,大学関係者の方々なら,なんとなくこの人事システムはイメージできるかと.


そんな管理スタッフの一人に,伝説の鬼スタッフがいます.
鬼っていうか,ヤクザっていうか,暴君っていうか.
実際,元投擲選手だったこともあって,巨漢による威圧感も半端ないし,ルックスも怖い.
仮に,この人をAさんとします.

とにかく,トレ室に用意されている「鉄の掟」を学生たちに守らせるため,「私達の大学の先輩」という圧倒的な権力と,実力行使という名の,ようするに暴力が用いられていました.


例えば,ある体育会のクラブの部員の一人が,トレ室のルールを守らず利用したことがあったんです.
たしか,利用申請した時間帯を守らず使っていた,といったことでした.

これに激怒したAさんは,今後このようなことが発生しないように厳重注意するため,そのクラブの部員全員をトレ室に呼び出し,その全員に一斉に土下座をさせたらしいんです.
いわゆる,連帯責任というやつですね.

その場に居合わせた学生曰く,50人くらいがトレ室で一斉に土下座する光景は圧巻の一言だったそうです.
まさに「暴君」,もはや「皇帝」.
水戸黄門が印籠を出しても,これほどの数の土下座は拝めないでしょう.

もちろん,暴君と呼ばれる人なのですから,土下座させただけでは終わりません.
Aさんは,土下座している部員一人ひとり,その頭を足で踏み潰していったわけ.
床に顔をぶつけて鼻血とか出した人もいるんじゃないかな.
当然ですが,掟を破った当該部員は,個別に血祭りになっています.


他にも,トレ室内でガム噛んでるような学生には,容赦無く回し蹴りやラリアットをくらわすし,トレ室利用カードを提出せずに入室していた学生は,十六文キックで退出させられます.

なんでそんなに厳しいのか? って思われるかもしれませんが,実のところ,これくらいの恐怖政治を展開しないと,学生は舐めてきてしまい利用方法がルーズになってしまう,っていうところがあったんです.


トレ室利用カードで思い出したんですけど,私もAさんの制裁にあったことがあります.
Aさんが勤務していた時は,私がまだ学生だったんですが,人生で後にも先にも,
「胸ぐら掴まれて,壁に押し当てられて宙吊りにされた」
という経験はあれが初めてでしょう.

そんときは,友人と一緒にトレ室を使っていたんですが,どうやらそいつが,トレ室利用カードを出さずに入室していたようで.
それがAさんにバレたので,友人は髪の毛を鷲掴みにされて引きづられていきました.
あとはお察しください.

で,一緒にいた私も連帯責任ですよ.
違反の当該者ではないものの,「一緒に入室していたから,お前も悪い」ということで,胸ぐら掴まれてトレ室の壁にぶつけられ,宙吊り状態にさせられました.
後頭部を強打して痛かったし,リアルにクビが締まって苦しかった.

これが私の大学の「壁ドン」です.

で,「お前,今度やったらぶっ殺すからな!」って厳重注意されたのです.

すごくファンキーな大学でしょ?


え?
いったいこれまで何の話をしてるのか? って?

そうですね.「思い出の楽曲」とのつながりが見えませんね.

いやね,このトレ室の管理スタッフって,別にAさんだけが特殊だったわけじゃなくて,基本的に毎年・例年いつもこんなオッカナい人材が採用されるんですが,その流れがある時からプッツリと切れたんです.

時に,21世紀に入って既に数年が経っており.
さすがに今どき恐怖政治で支配するのは時代錯誤だという認識が大学内に発生したことと,このトレ室管理の委員長として,私の指導教員が任命されたことが発端です.

私の指導教員はとても紳士的な人なので,それまでの恐怖政治に訴える管理体制にはもともと反対の立場でした.

そんなわけで,うちの指導教員が人事権を握った後は,ヤクザや半グレの素質たっぷりの卒業生ではなく,比較的まじめで誠実な人物が採用されるようになったのです.

そしたらあら不思議.
学生たちもまじめに誠実に利用するようになったのです.

なんだか人間社会一般に通じるものがあります.
興味深いですね.


ところで,このトレ室は,その営業中には館内でBGMが流れていました.
このBGMの選曲は,基本的には管理スタッフの「個人的な好み」によるものです.

で,それまでの恐怖政治を担っていたスタッフの好みっていうと,いかにもな男臭い曲ばかりが選曲されており.
しかも,トレーニングジムなわけですから,特にそれっぽい曲(トレーニング的に気合が入りそうな曲)が流れることが多かったんです.
例えば,典型的なものとしてはウルフルズの「ガッツだぜ!」とか,氣志團の「One Night Carnival」とか.あとはよくわかんないメタル系の音楽とか.蝶野正洋の入場曲みたいなのもあったかな.年末に山崎邦正がビンタを喰らう時に流れてるやつね.

どうせなら,定番である映画ロッキーの「ロードワーク」とか「アイ・オブ・ザ・タイガー」とかにすればいいのにと思いますが,結構な勢いでポップミュージックがチョイスされる.


そんな汗臭い選曲による爆音営業が日常になっていたトレ室に,ある時から突如として,

「Everytime I search for the light I find the dark that's standing face to face.....」

というキラキラしたオシャレな音楽が流れてきたのです.

カルチャーショックという言葉がありますね.
まさに,このこと.

恐怖と暴力で支配されていた空間が,BGMひとつでこんなにも雰囲気が変わるなんて.
きっと,ベルリンの壁崩壊とかアパルトヘイト体制崩壊に際して,その街中で流れていた音楽と似た何かがあるんだと思う.

故に,私の人生にとって,思い出深い一曲となっています.


どういう訳かと言うと,管理スタッフとして女性の卒業生が登用されたんです.
これは画期的でした.
回し蹴りもラリアットも壁ドンもしない,まじめで誠実な女性スタッフが新たに採用され,トレ室には平和が訪れたのです.

「これ,なんていう曲ですか?」
って聞いたら,教えてくれたのが,冒頭のYouTube共有しているcargoの「For The Light」というわけです.

メロディもダンス調なので,トレーニングジムのBGMとしてぴったりですね.
ジョギングやウォーキングするにもいいと思います.


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