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大学ホームページの閲覧数を上げる|大学ならではのおもしろトリビアを掲載する

かつて所属大学の先生方へ熱心に説いてまわったのですがボツになったアイデアです


大学のホームページ担当なんぞをやっていますと,とりあえず入試とかオープンキャンパスに関する情報を積極的に掲載し,その一方で学術活動に関する情報はというと,恥ずかしくないようにと周囲の大学の目を気にしつつ申し訳程度に載せとく,っていうパターンが多かったですね.

ましてや,学術活動に自信がないところだと,「ウチの大学が何をしているのか関心がある研究者なんていない」,そして,「どうせウチを志望するような高校生や保護者はそんなところに関心はないだろう」ということで,一切掲載しないっていう戦略に出ることもあります.

そんな感じでホームページと向き合っていると,そもそも大学のホームページを見ている人ってどんな人が多いのだろうか? もしかして入試希望者もろくに目を通していないんじゃないか? っていう気持ちにもなるものです.
つまり,自分の委員活動の意義を見失いかねないわけですよ.

とは言え,大学としてはホームページの閲覧数(ページビュー数:PV)の高さを気にするところもあって.
閲覧数が高いということは,それだけ大学の存在感の高さを反映しているわけだし,逆に言えば,そういう状況が大学の存在感をアピールしていることにもなります.
それがネットでの認知度というものです.


私がこのブログを始めたのは2009年からですが,当初は長めのツイッターみたいなものでした.
しかし,「閲覧数を意図的に上げてみたい」という気持ちになって,どうすればいいか試行錯誤していると,どうやら「ニッチであっても便利な情報」を掲載すると,オーガニック検索やリンク紹介などによって訪問する人が増えるようだ,ということがわかりました.

「エクセルで統計分析する方法」のシリーズは,そういうつもりで書き始めた記事です.
実際,今でもこれが私のブログで一番閲覧数が多い記事群です.

そのあと,他にも何かテーマはないかなと思い書いたのが,「大学教員になる方法」のシリーズです.

共通するのは,ニッチであっても便利な情報という点ですね.

これによって,しばらくすると,
「『エクセルの統計分析』を紹介したウェブサイトといえば,Deus ex machinaな日々っていうブログだよね」
とか,
「大学教員になる方法と,その関連情報を集めるにはDeus ex machinaな日々っていうブログが便利だな」
っていう状況になります.

で,そうなってくると,いろいろとコミュニケーションの輪が広がってくるし,もしかすると社会的に何かしらの影響を及ぼす存在になるかもしれません.
ネット内でブログの関心度が上がってくるので,エクセル統計の記事とか,大学教員になる方法の記事以外を読む人も増えてくるからです.
事実,そうやってこのブログを通じてオフラインでもつながりを持つようになった方々もいます.


ネットのこういう仕組み・特徴をつかんだのが,2010年くらいでした.
なので,これを大学ホームページにも活かせばいいじゃないかと思っていたのです.

実際,私は2010年から大学教員をはじめたのですけど,その勤務先の大学ではホームページのコンテンツをどうするか?っていうことで悩んでおりましたので.

だから,こう考えました.
「じゃあ,大学のホームページにも,私のブログの『エクセルで統計分析する方法』みたいなコンテンツを掲載すれば,徐々に『◯◯のことについて知りたければ××大学のホームページを見ればいい』っていう状況をつくれるよね.そうすれば,◯◯に関することを勉強したいなら××大学に通うのもいいかな? って考えてくれる高校生や保護者が出てくるかも」
っていうことです.

有名大や難関大なら,そんな工夫をしなくてもいいのでしょうけど,学生募集に困っている大学ではやってみる価値はあると思うんですよ.
そもそも,ネットを使った宣伝広告ってこういうのを指すのだと思いますし.


体育・スポーツ系学部学科用のアイデア


以下に話すことは,「体育・スポーツ系の学部学科」のためのものですが,考え方を応用すれば,ほとんど全ての大学および学部学科に採用することができるはずです.
そんなつもりで読んでみてください.

このアイデアは,もともと私の出身大学(体育・スポーツ専攻の大学です)で実現できたらいいなと考えていました.
なので,折に触れてそこの先生たちに提案していたのですが,あまりノリ気になってくれませんでした.
私はその業界から離れましたし,あとは興味のある人がこの記事を読んで,アイデアをそのまま使ってもらってもいいです.


どういうものかというと,
「人間の運動能力について,さまざまな状況・条件下で数十・数百名の被験者を使って測定評価し,これをホームページに統計データとして掲載する」
です.

一般的に知られている「人間の運動能力の測定評価」というと,体力テストがありますよね.
垂直跳びや立ち幅跳び,ハンドボール投げとかソフトボール投げ,反復横跳び,握力,背筋力,上体起こし(腹筋)などが有名どころでしょう.
これらは,どんな年齢層の対象者であっても,全国津々浦々で簡便に実施できるものとして考案されています.
学校でやったことがある,っていう人が多いでしょう.

これですね.
新体力テスト(文部科学省)

そして,これらは何百・何千人という対象者によって測定評価され,平均値や標準偏差とともに,どれくらいなら優秀な値なのかわかるように提示されているのです.

ですから,自分のジャンプ力とか筋力が全国データと比較してどれくらいに位置しているのか知ることも容易なのです.

しかし,こういう体力テストだけでは,人間の運動能力のわずかな部分しか知ることができません.

例えば「垂直跳び」だけで,その人のジャンプ力のすべてが分かるわけではないのです.
実際,垂直跳びが優れていても,立ち幅跳びがそれほどでもない,っていう場合もあり得ます.
また,垂直跳びは何回跳んでも似たような値が得られますが,立ち幅跳びの場合,反動の付け方や着地の上手さで距離が数十センチ伸び縮みします.なので,同じ人の1回目と2回目で記録が20センチくらい違うっていうことはざらにあります.
さらに言えば,履いているシューズによっても違ってきます.

ですから,ジャンプ力ひとつとっても,さまざまな状況・条件下で,個人間,個人内で差があるわけですよ.


私の出身大学は,体育・スポーツ専攻大学としての啓蒙ということもあって,なんと年に一度,全学生を対象に体力テストを実施しています.
凄い習慣でしょ?
これを利用して,一般的な体力テストだけでなく,もっと興味深い体力テストを考案して測定し,これを統計処理してホームページに掲載すればいいのに,っていうのが私の提案でした(ほぼ無視されたけど).
新たに体力テストのイベントを企画しなくても,現状で走っているイベントを活用できるから労力もかからない,っていうのも推しのポイントだったのです.

例えば,さきほどからのジャンプ力で言えば,シューズが違えばどれほど記録が変わるのか? とか,重さの異なるウエイトジャケット(おもり)を付けてジャンプすると,記録にどれくらい影響するのか? とか,サーフェイス(床面)が違うと記録にどれほど影響するのか? といったことに興味のある人っているんじゃないでしょうかね.
事実,こういった違いって記録にメチャクチャ影響しますよ.何度か試したことあります.


もちろん,そんな重箱の隅をつつくような話だけではありません.
前回の記事で,オリンピックの新種目について取り上げましたが,そこに「武装競争」というのがありましたよね.
「鎧甲冑を着て走る競争種目が,古代オリンピックにあった」というものでしたが,それを体力テストとしてやってみるのも面白いはず.
通常状態で50mを8秒で走れる人が,鎧甲冑を装着したら12秒になりました,みたいなことがわかるわけです.
体にいろいろなものを装着すると,ランニング動作にどんな影響があるのか関心のある人は知りたがるでしょう.

他にも,重い物(樽とかバッグを模したもの)を担いで走った場合とか,右と左で異なるタイプのシューズの場合とか,関節にテーピングを巻いた場合とか,怪我防止サポーターを装着した場合とか,いろいろバリエーションが考えられます.


考えだしたらキリがありません.
シンプルに,階段ダッシュの平均値を知りたい人もいるでしょう.
体育・スポーツ系の大学生は,一体どれくらいのスピードで階段を駆け上がることができるのか,その基準値が得られるのは面白いものです.
また,階段ダッシュも1段ずつ,1段飛ばし,2段飛ばし,3段飛ばしといった条件を課して,どういう違いが出るのか知ることもできます.

ハンドボール投げやソフトボール投げだけじゃなく,いろんなものを投げてみましょう.
日本人の「コンクリートブロックを投げた場合の平均値」とか,「コンクリートブロックを最も遠くへ投げることができる投げ方」なんてものが公開されるのもシュールです.

せっかく学内にプールがあるんだから,膝下くらいまで水を張っておいて,そこを走ってみるのもいいですね.
人が水深30センチのところを走ったら,いったいどれくらいのスピードになってしまうのか.
また,そこには体格(体重や脚長が影響する可能性大)や走り方,筋力などの影響があるのか? っていうことを分析できます.


「バカバカしい」って思われるテストほど面白いはずです.
そんなバカバカしいテストを,大まじめに統計処理して,その他の体力データとの相関関係や因子分析とかやっちゃうわけです.


こういうのを聞いて,「面白そうだけど,面倒くさいでしょ.忙しいのに,そんなことやってる時間はないよ」って思った人もいるかと思います.
実際,私がこれを提案した時にも,先生たちからそんな反応が返ってきました.

でもね,別に教員が率先して企画・分析する必要はないと思うんです.
こういうのは大学院生とか助手に任せればいいんです.

それに,就職浪人みたいな理由で大学院にきている学生もいるじゃないですか.
そういう院生って,研究がしたくて入学しているわけじゃないから,研究テーマを何にするか決めあぐねてたりする.
で,指導教員もそれで困ってたりする.

だから,こういう院生にこれらの測定データを渡して,修士論文にさせちゃうんですよ.
院生がダメなら,卒業論文とかゼミ論文とかでもいいです.


バカバカしいって思うかもしれませんが,案外,学術的にも興味深い分析ができる可能性があります.
あと,こういうデータをちゃんとウェブサイトに掲載しておけば,なにかの拍子に別分野で活用されることもあるやもしれない.

例えば,上述した「鎧甲冑を着て走る」っていうのにしても,歴史研究をやっている人とかが知りたがる可能性だってあるでしょ?
大鎧を着ていた武将はどれくらいで走れたのか? とか,ファランクス兵は最大でどれくらいの速度で移動できたのか? とかね.
実際,日本の大鎧とかヨーロッパのプレートメイルを着て短距離走とか長距離走,反復横跳びをしたらどうなるのか? っていうのが,ちゃんと数値として,しかも平均値±標準偏差で公開されていると,鎧甲冑を装着した場合の運動能力への影響を考える参考になるかもしれない.

他にも,関節にテーピングを施して体力テストをやったら,そうでない場合と比べて記録にどのような影響があるのか公開されていれば,それを参考に施術を検討するスポーツ指導者や選手もいるかもしれないですよね.


こういうのって,かつてなら「論文にならないから,やっても無駄」「学術研究としては低次だから恥ずかしい」で切り捨てられやすかったのですが,ホームページに掲載するトリビアという名目なら取り組みやすいですし,実際のところ,こういう情報のほうが一般的な関心を持ってくれやすいのです.
しかも,そういう一見バカバカしい測定データを大まじめに分析するというところに,学術を楽しむ大学らしさがあると思うのです.


ご紹介したのは体育・スポーツ系の話でしたが,同じことが他の学術分野にも言えるはずです.
興味のある人は,ご自身の大学ホームページのリニューアルの参考にしてみてください.

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