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さらに前回記事の補足|JAを介した農作物の価格の妥当性について
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前回の記事で書き忘れていたこととか,冗長になるのではと省略してしまったことを書きます.
という2つの記事の補足ですので,上記を読んでいないと理解不能なところが出てきますので,そちらもお読みください.
まず,米価高騰による「米騒動」ですが,その「犯人」として名指しされている存在として,政府,財務省,JA,悪徳卸業者,転売ヤーなどがあります.
そのなかでも「JA(農業協同組合)」については,実態としての仕組みを理解していない人がトンデモな理屈をつけて批判しているのを見かけますので,■前回記事の補足|JAを介した農作物の価格について という記事で補足しておきました.
ただ,そこで書いた内容だけだと不十分かと思いましたので,もうちょっと理解を深めてもらうために,さらなる補足をしておきます.
またここで今回も予防線を張らせていただきますが,私はJAの回し者ではありませんし,JAを擁護したい立場の者でもありません.
どちらかというと,JAさんにはもうちょっと経営努力というか,仕事を頑張ってもらいたいなと注文をつけたいくらいです.
ですが,まったく意味不明な批判をされているのを見ると,さすがに適切な議論や考察の妨げになるだろうと思い,なるべく農業関係以外の方々にも,その実態を知っていただければと考えて筆をとっている次第です.
もっと言えば,前回の記事にもしたように,JAに出荷している農家の方々のなかにも,JAを介した農作物の価格設定と支払いの仕組みを知らない人がいたりするもんですから.
さて,■前回記事の補足|JAを介した農作物の価格について でお話ししたように,JAに出荷した農家がJAを介して受け取る金額は,市場で決まった商品価格による販売金額のことです.
より詳細に言えば,その販売金額から,JAの集荷・販売手数料を差し引いたものを受け取っています.
なお,米の場合は一般の野菜・果物とは少し違います.
米農家が受け取るお金については,上記記事の中で紹介している,
■『令和のコメ騒動』(2)コメ価格の一般的な決まり方 食料自給率と安全保障 第11回(三井総合研究所コラム)
というネット記事でも解説されていますが,ここでは農林水産省のHPから抜粋しておきます.
まず,米農家(生産者)はお近くのJAに出荷すると,「概算金」という仮渡金を受け取ります.
ここで受け取る概算金の金額は,各県の全農本部と経済連が話し合って決めています.
下図を見ながら説明を読んでいってください.
ここで支払われる「概算金」ですが,この部分を指して,
「JAが米の価格を決めている」
とか,
「JAが米の買取価格を理不尽に低くして農家を困らせている」
と言ってみたかと思えば,逆に,
「JAが米の買取価格を不当に引き上げて米価を釣り上げている」
などと言われたりするんですけど...
概算金というのは,あくまでも農家に対する仮渡金です.
出荷した時点で,早めにお金が農家に入るようにしている配慮なんです.
JAは米を農家から集荷したあと,卸売業者との販売・契約作業に入ります.
そこで実際の取引価格が決まるわけですが,これを相対取引価格と言います.
この相対取引価格が決まるまで待っていたら,米農家のなかには資金繰りに困る人が出てくるので,「とりあえず今年はこれくらいの価格で取引されるだろう」という概算の金額を農家に渡しているわけです.
お米の販売の見通しが立った時点で(相対取引価格が決まった時点で),農家は追加払いを受け取るのです.
概算金と相対取引価格がほぼ同じであれば,追加払いはほとんど無いことになりますし,昨年みたいに相対取引価格が高くなれば,追加払いの金額はメチャクチャ跳ね上がります.
つまり,ちょっと複雑な経過をするものの,米においても通常のJA出荷された農作物と同様に,
生産者は,卸業者が提示した金額を受け取っている
ということをご理解いただけるかと思います.
繰り返しますが,JAが米価を決めているわけではないし,農家に渡す金額を決定しているわけではないのです.
でもまあ,概算金を出している過程で,ある程度は「JAがその年の日本の米価を決めている」という側面はあるのかもしれません.
ですが,JAは概算金としての米価を決めるための材料として,その年の生産状況を踏まえつつ,その年の販売・契約営業状況などを参考にしているとされています.
ようするに,「今年はだいたいこれくらいの金額で販売できそうだ」という市場調査をあらかじめやっていて,それに基づいて決めているというわけ.
なので,やっぱり小売店の要望や卸業者の提示金額から決定しているのが実態なのです.
それに,JAが概算金を決めるタイミング(7〜9月)よりも先に,卸業者と直接契約販売をしている米農家がすでに米価を決めていますよね.
早い米農家だと,今年(2025年度)秋の収穫分を前年末くらいに契約で決めていたりします.
特に今年度は,昨年からの米価格高騰を受けて,早いタイミングで米農家の契約が進んだことがニュースになっていますよね.
私の身の回りの米農家さんも,既に来年の契約が済んでいる人もいます.
いろいろ聞く限り,60kg(一俵)あたり2万円〜3万円くらいで取引されているようです.
これを小売店価格にすると,5kgで3000円〜4000円くらいです.
なんのことはない,今年と同程度だという予想になります.
ということは,各JAとしても,今年と同じような2万4000円くらいの販売価格を予想して,概算金を決めるのではないでしょうか?
JAを介した農作物の価格の妥当性
最後にこの話をしておきます.
JAを介した農作物の価格の妥当性ですね.
これ,生産者からすれば安過ぎると言われ,消費者からは高過ぎるとか言われますが,まぁ,どっちなんだよというところです.
なんにしても,繰り返しますがこの価格はJAが決めているわけではありません.
市場で卸業者が決めているのであり,その卸業者は小売店や消費者の動向をみて判断しているのです.
生産者が買い叩かれている感じがするのは,JAに出荷していない農家や農業企業の商品が,高値で取り扱われているように “見える” からです.
でもこれ,「隣の芝生は青い」なんですよ.
実際,私も一部の商品についてはJAを介さず,自分とこで全部やって販売していますが,その「儲け」と「労力」は,JA出荷と比較してメリ・デメがしっかりとあります.
実態としては,メインの稼ぎはJA出荷じゃないとダメですね.
JA出荷では販売価格が安めだし,手数料もたくさんとられるものの,さばける量が全然違います.
特に私がいるような地方ではなおさらです.
JAに出荷してしまえば,あとはJAが県内だけじゃなく県外へも販売してくれます.
JAのシステムを使って,なるべく高価で取引されているところに出してくれるし,なにより毎日どんな量でも受け取ってくれるのが圧倒的に便利です.
こういう作業は自分とこではやれませんし,たとえ取り組んだとしてもJAの販売手数料よりも遥かに多額のお金が必要になります.
たしかに,自分とこで流通も販売もやってしまえば,高い金額で販売できます.
でも,さばける量が断然少ないです.
今は一人で営業している段階ですが,それだと取引先との細かい連絡が煩わしいですよ.
誰かその担当者を雇えばいいのかもしれませんが,そしたら人件費が増えます.
その人件費の分を超える販売規模にするには,また栽培規模を増やさなければいけないし,そうなるとまた労働者を雇って,機械を増やして設備投資をして....,のループです.
ためしに最適な経営サイズを計算してみたら,かなり大規模になってしまいます.
冗談ではなく,数億円の追加投資が必要になるので,やっぱりこの規模でJA出荷でいいや,となるわけです.
JAの販売価格や手数料の妥当性については,いろいろな意見があります.
実際のところ,地域や商品によっても事情は違うでしょう.
でも,だいたい妥当なところでやっているものだと思いますよ.
むしろ,JAの販売価格と規格でやっていけるように栽培技術を高め,経費削減の工夫をこらすことが小規模農家の努力の方向性なんだと思うんですが.
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