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【やったほうがいい】卒論・ゼミ論をまずまずの日数で書く方法 その1

【やってはいけない】卒論・ゼミ論をやらない学生のために


【やってはいけない】卒論・ゼミ論を1日で書く方法
から来た人もいるかと思います.

こちらはマジメな学生向けの記事です.

あの記事では,【やってはいけない】と銘打っているので,やってはいけない方法を紹介してるわけですから,ある意味では参考になると思います.

でも,実際のところは今回の記事や,
【卒論・ゼミ論】絶望的な君が無理矢理「急成長」する方法
のほうを参考にしてほしいものです.

では,マジメな卒論・ゼミ論の書き方を紹介します.




一回では書き切れないので,記事を分けさせていただきます.



この記事ですが,もともとは私が


『◯◯大学のゼミ論文・卒業論文の書き方―指導教員から怒られる数を減らすために』


として学部生や修士の学生に(マザー・テレサばりに無償の愛で)配ってあげていたものです.

実際のところは,一人一人いちいち指導するのが面倒くさいので,
「とりあえずこれを読んでから,分からないところを聞いてくれ」
というふうにしていたのですけどね.

以下のことを紹介しているブログ記事やサイトは多いのですが,まぁ,せっかくですから,どうぞ.

※当然のことながら,大学や学部学科によっては,そこの卒業論文作成規定と以下に紹介するものが当てはまらないこともあります.あくまでこれは私の母校や前任校での卒業論文です.
あと,私が渡り歩いた研究室用ですから,実験調査研究モノ用です.
それ以外の論文形式への参考になるかどうか,自信はありません.

というわけで,

【ゼミ論文・卒業論文の書き方―指導教員から怒られる数を減らすために】


第0章
この冊子を読み切るのがうっとうしい人のためのクイックスタート・ヒント

自分の研究とよく似た分野,参考にできる文献をよく読み,言い回しや体裁・構成を観察します.まずは論文を真似るところから始めるといいでしょう.書く内容が同じだと感じた個所は,丸写ししても構わないです (若干ニュアンス等を変えながら)
先輩の卒業論文,それも同じ研究室の卒業論文は必ず読んでおきましょう.それを参考にする(真似る)のが基本です.
フォントは明朝体を使うことが原則です.文字のサイズは1012ポイントを使用します.太字下線斜体といった文字飾りは使えませんので注意してください.
必ず参考文献を載せましょう.論文とは,先行研究があって初めて成り立つものであり,そして今後の研究のための礎にならなくてはいけません.


第1章


論文の構成
卒業論文を書けと言われても,どのように書けばいいかチンプンカンプンという人もいるかと思います.実際,「徒然草」よろしく思いつくままに書いてしまってはエッセイでしかありません.
論文は以下のような構成になっています.ページ順に示すと,


表紙・タイトル:論文のタイトルを書きます.ここに自分の所属や氏名,指導教員の名前を入れます.デザインは決まっているわけではありませんが,指導教員や大学から「こうしろ」と指示がある場合が多いです.


目次:以下の論文の構成と,それが何ページにあるのかを書いたページです.卒業論文は短いですから,「いらない」と言う指導教員もいるかもしれません.

緒言(序論):この論文で何を書きたいのかを示すところです.論じたいことの背景や目的を書きます.この部分は,以下の「目的」を含むことが多いです.


目的(ねらい):この論文で行なう調査や実験の目的を書くところです.「目的」として「緒言」の部分に含むことが多いです.


方法:この論文で行った調査や実験の方法を書きます.書く内容としては,被験者・対象者(対象動物)の特徴,測定方法,調査方法,使用器具,設備,環境条件,データの抽出方法,統計処理の方法や手順などです.
この部分を書く上で大事にしたいのは,「今回自分が行なった実験や調査を,この部分を読むことで別の人が同じように実施できるか?」ということです.


結果:この論文で行った調査や実験の結果を書きます.しばしば「考察」と同時並行的に記述されることもあります.その際は「結果と考察」と題して書くことが多いです.「結果」としてだけで書く場合は,得られたデータから考えられることは書かず,客観的に数値や傾向を記述することに徹すると良いでしょう.


考察:「結果」の部分で記述したことが「なぜそのような結果になったのか?」や,「この結果から何が言えるか?」を書きます.得られた結果やデータ以上の飛躍したことを述べてはいけません.あれもこれもと書いていくと収集がつかなくなります.何をどこまで書くのか?ということについては,指導教員の裁量によるところが大きいので,先生としっかりと議論しましょう.


結論:これまで書いてきたことをまとめ,文字通り結論を書くところです.ただ結果をまとめただけになる学生が多いので,「その結果からこういうことが言える」という記述にしましょう.この部分は「考察」のラストの部分として含まれることがあります.


謝辞:この論文を書く上で協力してくれた人・団体に感謝の意を伝える部分です.ゼミ論文や卒業論文では書かないこともあります.


参考文献:論文中に引用・参考にした論文をリスト化します.書き方は,文献リストの作り方(別の記事に掲載)を読んでください.


図表:学位論文(卒業論文や修士論文)などでは,図表は本文中に示さないことが多いです.学術雑誌では本文中の図表の参照箇所に近しい部分に示されていることが多いのですが,卒業論文などではこのやり方はあまり見られません.指導教員とどのようにするか打ち合わせておいてください.



第2章


文章のスタイル
文章のスタイルは論文を書く上で最も重要な要素の一つです.
論文に用いるのは,【~~である 調】の文章です.
【 ~~です・ます 調】 や【 ~~しましょう 調】の文章は避けます.
【~~なのだ】といった語りかける文章も,バカボンのパパかと思われるのでやめたほうがいいでしょう. 
ちなみに,この文章では主に【~~です・ます 調】を使用しています.
論文でなくても,どのような文章でも「スタイル」は統一します.

例えば,
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この文章がそうであるように,文章のスタイルをいろいろと変えることは読み手に違和感を与えます.これについては注意せねばならない.そう思いませんか?
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異なる文章のスタイルを混ぜた論文を書く学生は予想以上に多いものです.かつて私もそうでした.そういう文章はハネられてしまいますので気をつけましょう.

また,論文の文章では過度な修飾を避けたほうが良いでしょう.常に客観的な視点で文章をつづります.過度か適度かの線引きは曖昧ですが,現象や結果に対し善悪の区別をつけるような姿勢で (自分の意見を前面に出して) 書かないことが大切です.


以下に,良い例と悪い例を挙げます.

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■良い例
1)本研究はこれらのことを明らかにするため,体力測定とアンケート調査により犬の散歩と猫のなわばりの関係を調査することを目的とした.

2)1年生の体重が3年生よりも約2 kg多かったことは,生活習慣との関連が考えられた.

3)これらの結果のメカニズムについては現在のところ不明である.今後の研究が必要であろう.


■悪い例
1)本研究はこういったことを明らかにしたくて,体力測定とアンケート調査で犬の散歩と猫のなわばりの関係を調査することを目的にしました.

2)驚くべきことに,1年生の体重が3年生よりも2 kgも多かったことは,間違いなく生活習慣が関連していると言えるのではないか.

3)こういった結果のメカニズムについては残念ながら現在のところ不明である.これについては,なんとしてでも今後の研究が必要になるはずである.
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【良い例】を出してはいますが,一番の手本は実際に刊行されている論文の雑誌です.
それらを何度もしっかりと読むことが大切です.

しかし論文と言ってもいろいろあります.
適当な論文でも掲載する雑誌があります.

格調高い(レベルの高い)論文のほうが,きれいな日本語が使われています.
各々専門の先生などによい論文が載る雑誌を紹介してもらい,文章の書き方を真似してみましょう.



思わない方がよい
論文を書く上でのスタイルは言い出したら切りがないのですが,これだけはというものをひとつ.
推測を書く場合には【~~だと思う】という書き方はしない方がいいでしょう.
どうしても“思いたい”場合は【~~だと思われる】とします.
推測や憶測を述べる場合は,できるだけ【~~であると考えられる】や【~~であることが推察された】というスタイルを使用します.



第3章


フォント
いきなり聞き慣れない用語だと思う人もいるかもしれませんが,フォントは非常に重要です.
ゼミ論文や卒業論文を書く場合は,「明朝体」を使用します.
Windowsでは「MS 明朝」や「MS P明朝」を用います.
Macintoshでは「ヒラギノ明朝」を使って書いてください.
間違っても「MS ゴシック」や「英角ゴシック」「行書体」は使いません.

文中の文字には太字,下線,斜体,網掛けといった文字飾りはできません.
途中で文字サイズを変えることもできません.
通常の論文であれば,文字のサイズは1012ポイントを使います.

フォントについてもう少し詳しく述べておきます.
先ほど「MS ゴシック」は使用しない.と言いましたが,それは文章 (本文) のこと.
章のタイトルや強調したい項目などにはゴシック体 + 太字 を使用することが多く,この文章でも,章のタイトルにはMS ゴシック + 太字 (さらに囲み線)を使用しています.

一般的に,明朝体は可読性(読みやすさ)に優れ,ゴシック体は視認性(目立ちやすさ)に優れるといいます.
本文では明朝体を,タイトルや見出しにはゴシックを,という使い分けが一般的です.
ただし,本文中に目立たせたい単語があるからといって,目立たせたい単語をゴシックや太字にすることはできません.

MS 明朝とMS ゴシックはどっちもどっちという気はしますが,さらに大胆な「英角ゴシック」や「丸ゴシック」といった特徴的なフォントでは個性がたちます.
しかし,これらのフォントはパソコンによって利用できない場合があるため (環境依存と言う),どのパソコンでも表示可能なMS 明朝とMS ゴシックを使用するのが原則です.

“ ”がついている文字の特徴
MS 明朝とMS P明朝の違いは,打っている文字の間隔が若干異なることです.
MS P明朝のPはプロポーショナルフォントのPです.
プロポーショナルフォントは,文字の間隔を適度に調節したものです.
一方,PがないMS 明朝などのフォントは等幅フォントと呼ばれています.
例として,等幅フォントとプロポーショナルフォントを比べてみましょう.
上段が等幅フォント,下段がプロポーショナルフォントです.

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※ブログなので,ここに書いても違いが出ないです.
※これについては,実際にWordとかPagesで入力してみてください.
本当に違いますから.


どちらを使うかは,自分の好みに合わせて使い分けて構いません.
一般的な文章では見栄えの良さを重視してMS P明朝の方が使われます.
アルファベットや数字の見栄えはこちらの方が良いという特徴があります.

しかし,日本語では等幅に文字をつづることが基本とされていますので,等幅フォントであるMS 明朝でも悪いわけではありません.
また,文字数やレイアウトの感覚を掴み易い特徴があり,慣れると便利です.




数値の示し方

論文は文中で数値を示すことが非常に多い文章です.数値の示し方を以下に説明します.
測定値や個数,割合・パーセントといった何かしらのデータとして表す数値は,全て半角数字で書きます.これは非常に重要な約束事です.

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半角数字 123456
全角数字 123456
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見た目にもバレることはもちろんですが,これは論文のルールですので必ず守ります.
しかし,固有名詞に使っている数字,例えば,
「健康日本21」
といった場合には全角数字を用いても構いません.


時間・時刻を表す場合も半角数字を用います.時刻を示す場合は,

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A1010分から1030分まで
B345秒に開始した
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というように示します.
時刻は『コロン「:」』を使って示す場合がありますが (1010分」の場合,「10:10」といったように),日本語論文では一般的ではありません.
間違った読まれ方をする場合がありますので避けた方が無難です.

基本的なところですが,数字の小数点は半角ピリオドを使います.たまに全角ピリオドやカンマを使う人を見かけますが(身長は1756 cm~, 身長は175,6 cm),これは数値の意味や読まれ方が変わってきますので避けます.




句読点 。 、 . ,
論文には句読点にもルールがあります.非常に利用頻度が高い記号ですので,しっかりと使い分けできるようになりましょう.

通常,欧文スタイル (横書き) の場合は,句読点は 全角ピリオド.全角カンマ, を用いることが一般的です.
和文句読点 。 、を使っても構いませんが,文中ではどちらかに統一しましょう.

とにかくどちらかに統一することが肝心です.
句読点がバラバラな文章は致命的です.
よくあるミスとしては,どこからかコピー&ペーストしてきた文章が,自分が書いている文章と句読点のタイプ (欧文句読点と和文句読点) が違うというものです.また,全角ではなく半角のピリオドやカンマがところどころ入っている文章もみかけます.

項目を列記したい場合,その区切りにカンマや読点を使うことがあります.

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被験者は大学男子サッカー選手14 (年齢:21.5±0.7 歳,身長:171.3±3.2 cm,体重:63.3±4.6 kg) であった.
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上記では区切りに全角カンマを用いていますが,半角カンマを用いても構いません.
しかしその場合,(年齢:21.5±0.7 ,身長:171.3・・・)というように,窮屈な印象を与えてしまいますので,(年齢:21.5±0.7 , 身長:171.3・・・)このように,カンマの後に半角スペースを入れるようにします.
また,この区切りは下に示すように,読点でも構いません.

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被験者は大学男子サッカー選手14 (年齢:21.5±0.7 歳、身長:171.3±3.2 cm、体重:63.3±4.6 kg) であった。
-------------------

この場合,句点も統一していることになるので,文章の読点が「。」であることに注意してください.

また,列記した項目を区切る際は読点のみ用いることができます.ピリオドを使って区切っている文章もみかけますが,意味を取り違えて読まれる可能性があるので避けましょう.

年齢や身長といった項目名と,その数値データを分ける記号にはカンマや読点は用いません.上記では点が縦に二つ並ぶ記号『コロン「:」』を用いていますが,これについての説明は下記に譲ります.



コロン : セミコロン ;
コロン:セミコロン;は,流れがあるとはいえない文章の一部分で,文を区切る際に用います.例えば「男子:30名,女子:20」や,「実験前:20%,実験後:24%」といった場合です.
コロンの代わりに「は」,「が」,「すなわち」「~については」といった文字をはさんでしまうと煩雑になる,または違和感がある文章に用います.以下の2文を読み比べてみてください.

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A)男子:30名,女子:20
B)男子は30名,女子については20
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本来,コロンやセミコロンには ‘is’ という意味がありますので「男子:30名」という文章は「男子は30名である」という意味になります.コロンやセミコロンを使用する際はコロンをはさむ文章の前後関係にも注意しましょう.



引用符‘’ “” 「」
他の論文や書籍から文章を引用する際には欧文 (英文) であればアポストロフィ (クオーテーション) ‘’もしくは,ダブルクオーテーション “”を使用します.日本文の場合はカギカッコ「」を使用します.

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これについては,ルクス・グッドマン (2007) が「顔が良ければ人生はバラ色であり,そうでない者は生きる資格がない」と報告している.
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必ず引用している文章の‘最初から最後まで全てをアポストロフィではさみます.
文章の引用方法についての詳細は文献の引用で解説しています.

引用符 (アポストロフィやカギカッコ)は,文章の引用だけでなく強調したい用語や文字に使用することもできます.
「強調したい用語」に使用して,文章の中に連続して書くと埋もれてしまって読みづらくなるような場合に使用します.
フォントで紹介したように,本文では文字飾りが行なえません.このような中で強調したい用語や文字を浮き立たせるためにアポストロフィやカギカッコを使用します.

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1)このことは,人類が地球の重力から解き放たれて宇宙へ進出するためには“垂直跳び”が必要であることを示している.

2)「わかりにくい」と回答した者は「わかりやすい」と回答した者に比べ30名多かった.
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アポストロフィ‘とカギカッコ「」の使い分け
この2つの記号は使用方法が非常に似ていますが,カギカッコはその形状からも,文章の流れを止めてでも「大きく強調したい場合」に威力を発揮します.一方のアポストロフィは,形状が与える印象が小さいことからも,文の途中で‘少しだけ’または“中くらい”に強調する場合に使用するといいでしょう.ご参考までに.

なお,論文では環境依存した装飾が施されたカギカッコなどは用いません.
カギカッコは通常の日本語技法と同じ用法で使用します.すなわち,カッコの中の文の最後は句点 。.を使わず,一つの文中で改行は行ないません.



曲線カッコ ()
通常,論文で用いるカッコは半角カッコ()が一般的です.全角カッコ()を用いても構いませんが,利用はどちらかに統一しましょう.なお,半角カッコの前後には半角スペースを入れ,このように (半マス) 空けます.
半角スペースを入れないと,このように(窮屈)な印象になり,読みづらくなります.

曲線カッコは小カッコとして位置づけられていますので,補足説明 (一つの文章だけでは意味が伝わりにくい場合の説明) の文章を入れる場合や,見てほしい図表を指示する場合に用います.引用文や強調したい用語・文章には小カッコを使用しません.
文章の最後に曲線カッコを使用した場合,句点はカッコの後につけます (表や図を示す場合などで多い).間違っても句点の後にカッコはつけません。(このように,日本語として変です)

ですが,学生の論文の添削をしていますと,これを指摘することが非常に多く感じます.気をつけましょう.

使用例
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東京都出身 (30 %) は山形県出身 (25 %) よりも5ポイント高いことを示した (1)
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その他のカッコ <><>≪≫
 ≪≫<>などは,論文以外で使用するぶんにはいいのですが,これらの記号はそれ自体に意味を持っているので (例えば > は,右は左より小さい),数値データを扱う卒業論文のような文章で使用することは不適切です.



中点 (なかてん)
中点・は,2つ以上の等質で関連性が強い単語・用語を並べる際に用います.
関連性が低い・少ない場合には中点ではなく,カンマ,読点 、を使用します.例えば,男子・女子といった用語は等質で関連性が強い単語・用語ですが,男子,身長,握力という場合には中点ではなくカンマを使用することが妥当です.

外来語のカタカナ表記の際,語の切れ目にも中点を用います.
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レジスタンス・トレーニング
オリンピック・ムーブメント
セグメント・リサーチ
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などです.


また,外国人の名前をカタカナで表記する場合の姓と名の間に入れます.

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アイザック・ニュートン
ルネ・デカルト
TA・エジソン
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などです.

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この冊子,けっこう長いんですね.ブログとしてもかなり長くなってしまいました.
次回は「その2」として,学生からのFAQと参考文献の並べ方を取り上げます.

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