2016年2月21日日曜日

大学のこれから(4)

大学のこれから(1)
大学のこれから(2)
大学のこれから(3)
の続きです.

「大学のこれから」と題しているのに,現状の話ばかりで「これから」の話が書かれていないではないか,そんな声が聞こえてきそうな記事ばかりでした.

なので今回は,「これからの大学はこうなるだろうな」というものを書いておこうと思います.
大学の広報戦略の話でして,今回のそのツボは,
「明るくフレンドリー」が通用しなくなったら「シックでフォーマル」に変わってゆくでしょう
というものです.

今回の話,できれば予備知識・関連知識として以下の
こんなホームページの大学は危ない
こんなパンフレットの大学は危ない 
こんなパンフレットの大学は・・,おっと危ない
を読んでおくことをオススメします.

現在の大学では,学生募集が必要なところもそうでないところも,民間企業のマネゴトとしての広報をがんばってやっています.
マジで学生募集を本気でやらないと潰れる大学は,それなりの広報をやっております.が,その他多くの大学は周りの大学の手法をマネたり,もしくは広告会社のアドバイスを聞きながらのんびりやっているのが実情です.

今のところ,学生募集が気になり始めた大学の主流は「明るくフレンドリーな雰囲気を広報することで,高校生に親近感を持ってもらう」ということを狙っています.
ためしに,有名と言えるほどではない大学のホームページ等を見てみましょう.どこもかしこも「明るくフレンドリー」なアピールで溢れていますよね.

たしかに,明るくフレンドリーな雰囲気を提示すれば,世の高校生の大多数の感覚としては好まれることと思います.
しかし,好ましく思われることと入学したいと思わせることとは違います.

民間のマネゴトを楽しんでるだけで済まされる大学では,そんな「好感触」を得てもらう広報でも十分かもしれません.さしずめ広報委員会なんかのミーティングでは,
「えぇ〜と,来年のパンフのデザインですが,今日の朝にメールで業者から案が挙がってきましてですね.まず文学部のページについてですけど,そちらにお配りしているA案とB案なんですが,どうでしょう? どちらがいいですかねぇ」
「うーん,そうですねぇ.A案の方が見やすいし綺麗なんだけど,B案の方がうちの学部らしいですよ.うん,そう,なんだかホンワカした感じがするし」
などと,なんともホンワカした感じで決められていくものです.

ところが,学生募集に危機感をもってあたっている大学では,たしかに数年前ならホンワカしたミーティングをしていたかもしれませんが,どうやらそんな悠長なことをしてられないぞ,と.そういう結論に至る教職員が現れるようになるはずです.

で,そんな大学ではもはや教員主体の広報委員会みたいなものは組織されなくなります.大学教員の意向を反映しているほど余裕がなくなるからです.
代わりに,自分たちの大学に入学してくれそうな生徒層の分析を行ない,その層の入学意欲をそそる広報を作成するようになります.
もはやそこに大学教員達の「学生をこういうふうに教育したいんだ」とか「うちではこんな研究をしているんですよ」といったことを素直に示すページはありません.
生徒募集用に特化するわけですね.

先日,駅で見かけた看護系専門学校の広告は「それ」として見事なものでした.
10代後半に見えるかわいい女の子がナースの格好で微笑んでいる写真,それを前面に出しているポスターなんですけど,「◯◯看護専門学校」という文字がなければ,風俗店の前に貼ってあるものと同じです.その代わりに「今宵も貴方を “お大事に”  1時間 ¥25,000〜」って書かれててもおかしくない.
そしてこのポスターは,そういう嗜好センスのある女子,およびそれにむらがる男子学生を引っ張るために強力に機能するはずです.
狙ってやっているのかどうか定かではありませんが,もし私が経営難の専門学校の広報担当なら迷わずやります.背に腹は代えられない.

それと同じことが大学の広報でも見られるようになるでしょう,ということです.
そう遠くない将来,大学においてもナースやスチュワーデスの格好をさせた卒業生,はたまたチアリーディングや競泳水着姿の学生を,パンフやポスター,HPといったところにデカデカと掲載するようになるのです.

もちろん堂々と厭らしく載せるのではなく,それとなくエロく載せるはずです.
当然のことながら,女子学生も対象にしたものを用意するはず.
男女両方を引っ掛ける釣り針の具体例としては,こんなのが考えられます.
※以下,大学パンフ or HPを想定し,じっくり想像しながらお読み下さい.

【フィリピン短期留学】などというページを用意して,そこに綺麗な浜辺をバックにした「留学中の様子」と称したポートレート写真を用意します.美人系の3人娘を肌露出多めにして中央に配置し,元気で満面の笑顔をみせる.そしてその両サイドをイケメン2人で挟んでおき,その後列にはブサイク気味な男子学生を3人配置させます.
これにより,大学生活におけるポジティブなキーワードを確保できます.つまり,
「楽しそう」「爽やか」「海外体験」「異性関係」「ワクワク感」
ブサイク気味な男子学生も隅っこに入れておくことで,ブサイク気味な男子学生がその写真を見た時に「何かしらの可能性」を感じさせるものにしておきます.
これで大抵のバカは興味を持つので,学生募集の足しになるわけです.

以前の記事で扱ったことのある,
こんなパンフレットの大学は・・,おっと危ない
での事例は,上記のような戦略の前段階と言えるでしょう.しかしそれも「それほど危なくない大学」の域を出ていません.

もっと言うなら,本当に危ない大学においては,そういう「性」に頼ることもあきらめるでしょう.
それが冒頭にお話した「明るくフレンドリー」から「シックでフォーマル」というものです.

たしかに大学は,「若々しい強いエネルギー」をイメージしやすいところですから,「明るくフレンドリー」なものと親和しやすい.それゆえ,エロスとバイタリティの風味がある広報戦略に走りがちです.

ですが,経営難に陥っている上に運営思想も危ない大学においては,このような戦略はとれなくなります.
明るくフレンドリーとは対象的とも思える,シックでフォーマルな雰囲気を見せるようになっていくはずなのです.
具体的に言えば,学生の写真を出すにしても,「笑顔でカラフルな私服」ではなく,「真顔でスーツ」になります.ジャンプしたり談笑している写真ではなく,整列して落ち着いている写真になります.
なぜか?

経営難に陥っている危ない大学に入学するような学生は,どうしても学力が低く,高卒でもいいから「やりたいことがある」といった信念や希望を持っていない生徒が多くなるわけです.
で,その親や教師も「とりあえず大学くらいは出ておきなさい(今は入ろうと思えばどこかに入学できるし)」といった指導をしている場合が多いことが予想されるのです.

とすると,そんな生徒と親,教師にとってはエロスとバイタリティといったものは魅力的に映らないことは想像に難くないですね.
じゃあ何なら魅力的なのか?

私(この子)は学力も低いし,やる気もない.だけど専門学校みたいな所じゃなくて,大学を出ておきたい.大学に行って,就職とか将来にとってなんか良いものを得て卒業したい.
とりあえず大学に行きたいんだけど,私(この子)が入れるところの中で,どれが一番無難かなぁ?
と,そう考えていることと思われます.

このような人達は,華やかで野心的な話をしても釣れません.
「人材スペック」における偏差値としては,自分が下位集団に分布しているという自覚があるので,そんな人達が目指すのは「尖った能力」よりも「人並み」「平均」なのです.
つまり,本当に危ない大学における広報戦略とは,大風呂敷を広げたハッタリ話を展開するのではなく,「貴方(その子)を “普通” の仲間入りにさせますよ」と見せることにあります.
「大学は専門学校とは違うんです.ワンランク上のステータスがあります.それがこれなのですよ」というアピールと言ってよいでしょう.

話が長くなりそうなので,まとめます.
それほど経営難ではない大学においては,「明るくフレンドリー」を基調とした,エロスとバイタリティをイメージさせる広報戦略がますます強くなっていくでしょう.
近い将来,もしかすると「いくらなんでもそりゃやり過ぎじゃないか」と思われるような,卑猥なアピールをする大学ホームページに出会うかもしれません.
その時はネットニュースなんかでも話題になると思うので乞うご期待です.

その一方で,本当に経営難の大学になってくると,シックでフォーマルな雰囲気を見せることによって,入学生を「普通の一般人」へと導くことをアピールするようになります.きっとそうなるので,乞うご期待です.

今は明るくフレンドリーな雰囲気を出すことに苦心している大学の皆様,マジで危なくなってきたら「明るくフレンドリー」じゃダメになるので,今のうちから準備しておきましょう.
もう既に危ない大学ではその方向で話し合われているかもしれませんけどね.


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