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センター試験で嘔吐した人がいて,試験中断しなかったことがニュースになっています

センター試験でしたね.
毎年のことなので,今年も記事にします.

過去記事はこちら.
今年もセンター試験の感想
センター後日
センター試験とか入試におけるアレコレ
センター試験とか入試におけるアレコレ2016

センター試験が終わった本日,こんなニュースがありました.
センター試験 再試験対象者は49人に 試験中に嘔吐、中断せず(Yahooニュース2018.1.14[産経新聞より])
初日の13日に大阪学院大(大阪府吹田市)の会場で試験監督者による指示誤りがあったことも判明し、44人が新たに再試験の対象となった。再試験対象者は計49人。
センターによると、大阪学院大では13日、受験生1人が嘔吐した際、本来は試験室全体で中断すべきだったが、監督者が「周囲に影響はない」と判断していた。試験室にいた他の受験生は再試験を受けられる。
このニュースに対して,ヤフーでは「コメント」の所でいろいろな事が言われています.
私も試験監督者の一人なので,当ブログにてコメントしようと思いました.
これから語るのは,私の妄想であることを申し添えておいた上でお読みください.

多分ですけど,当該試験場(試験室)における「試験監督者(主任監督者)」は,その場だけで判断しちゃったんでしょうね.
だから記事では「指示誤り」という表現になっているんでしょう.

一般的な対応(但書:その対応マニュアルや大学ごとのマニュアルは試験後に回収されるので,私が記憶している限りですけど)としては,受験生の「嘔吐」が発生した場合,主任監督者は同室の他の監督者,または試験室の外にいる監督補助の人(うちの大学では学生バイトがやっている)に試験本部へ状況連絡をさせます.
(但書:私はそんな状況になったことがないから推測ですが)試験本部はこれに対し「汚物処理班」を向かわせることになっています.
そして,この状況を試験場の責任者(その会場の責任者)が試験の続行・中断および再開方法を判断することになるんです.
通常なら,嘔吐が発生した場合はその時間の試験は中断され,汚物処理班が対処してから後,同じ部屋または試験室を移して再開することになるでしょう.

でも,産経新聞の取材では「試験本部の判断ミス」ではなくて,「監督者の指示誤り」ということになっているので,おそらくは当該試験室にいた監督者だけで「あんまり吐いてないし周囲にも影響がなさそうだから,大丈夫なんじゃない?」という感じで対処しちゃってて,その後,どこぞからこの話が漏れて発覚したといったところかなって思います.
上記が私の推測する現場の状況.

Yahooニュースのコメント欄では「ノロウィルスが危ない」とか,「嘔吐ごときで中断するな」とか,「そもそも体調不良者が試験場に来るな」などとコメントがありますが,なんともつまらない話ですね.
別にノロウィルスだけが怖いわけじゃないでしょう.もしかすると,もっと危険な病原体かもしれないんだし.

その一方で,ノロウィルスごときで騒ぐこともないでしょう.
試験場では咳き込んだりクシャミをしている受験生はたくさんいますが,インフルエンザにかかっている人だったら大変ですね.インフルエンザはノロウィルスよりも感染力や死亡率が高いのですから.
実際,咳き込んだりクシャミしてる奴がいるからって試験は中断されません.体温を測ることもしないし,意識がおかしそうな受験生に「君,大丈夫?」って聞いても「大丈夫です」っていうに決まっている.別の意味で意識がおかしい受験生もいるんだから,こちらとしてもあまり構ってあげられません.

来場する受験生がインフルエンザやノロウィルスに罹っているかどうかなんて知りようがないんだから,「羅患している者は来るな」という要望はごもっともながら,試験に人生をかけ挑む受験生の耳には入りにくいでしょうね.
試験に集中している手前,自分が病気になっている自覚すらないだろうし.

現実問題として,センター試験会場で病原菌とかウイルスへの対応はできないんです.
あくまで会場では「公平な試験」ができているかどうか.そこに焦点が絞られます.
つまり,「テスト問題を解く上で条件が公平・公正になっているか」ということであり,嘔吐による感染の危険なんて副次的なもの.
嘔吐によって試験を中断するのは,解答に集中できず,公平性が損なわれるという理由からです.発狂して奇声を上げ始めた受験生への対応と本質的には一緒になります.
それに,細かいこと言い出したら,感染症対策を施されずに対処しなければいけない私たち監督者や補助学生はどうなるの?ってことになりますし.
(にしては試験監督者の報酬は安いな・・・)

ノロウィルスやインフルエンザに罹るのが怖くて,センター試験会場になんていけません.
その危険性を上回る価値がセンター試験にあるから受験しているという暗黙の了解が成り立っているんです.
これは,ケガが怖くてボクシングはできないし,遭難が怖くて登山はできないということと一緒です.

似た話として,こんな記事を書いたこともあります.
こちらもどうぞ.
井戸端スポーツ会議 part 43「小林秀雄が語るスポーツの精神」
井戸端スポーツ会議 part 44「スポーツの精神が大切なわけ」