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統計処理手法の選び方(2)多重比較の使い分け方法

今回の記事は,多重比較の使い分けについてです


前回の記事では概略的な話をしました.

統計処理手法の選び方(1)

誤解を恐れずにざっくり言えば,
「どの統計処理手法をどうやって使えば良いか? 」
なんて気にしなくていい
から,
「有意性が現れる統計処理手法」
「自分が言いたいことに合致した統計処理手法」
を選ぶという基準で,概ねOKだ.
というものです.


今回は,そうは言っても原則的なルールがあるし,

「自分が言いたいこと」

だけでなく,

「その統計処理手法であれば,ここまでしか言えない」

といった点について「多重比較法」に焦点を当てて解説します.





全ての群を比較したい場合


その状況とは,図で示せば以下のようなことです.

以下のように,A群〜D群の全ての群間の有意性を調べて,それを説明したい時に使う多重比較方法です.

一番複雑に見えますが,最も簡単な状況とも言えます.

多重比較と言えば,この状況(だけ)を指すと思っている人も多いのでは?


使用することができるポピュラーな多重比較法は以下のとおりです.

*テューキー法(テューキーHSD法)
*テューキー・クレーマー法
*シェッフェ法
*スティール・ドゥワス法
*フリードマンの検定
*ボンフェローニ修正法
*サイダックの方法
*ホルムの方法
*ライアンの方法

このブログでは,以下の記事を見ればエクセルでも検定できます.

テューキー法について
ExcelでTukey法による多重比較
繰り返し数(N数)が異なる群を,Excelを使ってTukey法で多重比較する


ノンパラメトリック型のテューキー法について
ノンパラメトリック版Tukey法による多重比較「Steel-Dwass法」


ノンパラメトリック型の分散分析的手順について
フリードマンの検定をエクセルでなんとかする
クラスカル・ウォリスの検定をエクセルでやる


t検定やマン・ホイットニーU検定のあとの多重比較法
Excelで多重比較まとめ|ボンフェローニ(Bonferroni)|サイダック(Sidak)|ホルム(holm)|ライアン(Ryan)
ノンパラメトリック検定で多重比較したいとき



上記のどれを使えばいいのか? が気になる人もいるでしょう.
しかし,「全ての群を比較したい」というのであれば,基本的にはどれを使ってもOKです.


多くの統計処理の専門家の方々がオススメしているのは,やっぱり,

テューキー法

です.

統計処理ソフトには必ず装備されているので,ソフトを持っている人はこの方法一択と言っても過言ではありません.


「エクセルで多重比較する」
という趣旨のブログを運営している私がオススメするのは,やっぱり,

ボンフェローニ修正タイプの多重比較

です.

t検定やノンパラメトリックの2群間比較をやってしまえば,
算出方法が果てしなく簡単という鬼のようなメリットを持っています.


ただし,強烈なまでに算出が簡単な「ボンフェローニ修正」ですが,その最大の欠点は,
比較する群数が4以上になると検出力が恐ろしく低下するということ.

4群以上で多重比較する場合は,テューキー法を使うことが推奨されています.


そういう意味では,4群以上のデータでも簡単な上に検出力が高い(有意差が出やすい)ボンフェローニ型の方法として,

ホルムの方法

がオススメできます.





基準となる特定の一つの群と,その他の群とを比較したい場合


それは以下のような状況です.

A群を基準として,他のB群,C群,D群とを比較したいという場合です.
こういうのを「対照群との比較」と呼びます.

例えば,全ての群が同じ被験者だとして,スタート時点であるA時点から,途中経過のB時点,C時点,そして最後のD時点まで何かの測定値を取り続けた場合などです.
そこで知りたいことは,
「最初の測定値であるA時点と有意差が現れる時点がどこか?」
という観点で考察するというもの.

他にも,基準となる試薬Aに対して,その試薬Aとの有意差がある試薬(B,C,D)はあるだろうか?という観点での考察をしたい場合です.


このタイプの多重比較には以下の方法が使用できます.

*ダネットの検定
*シェッフェ法
*ボンフェローニ修正法
*サイダックの方法
*ホルムの方法
*ライアンの方法


このブログでは,以下の記事を見ればエクセルでも検定できます.

エクセルでダネット(Dunnett)の検定をやる方法
Excelで多重比較まとめ|ボンフェローニ(Bonferroni)|サイダック(Sidak)|ホルム(holm)|ライアン(Ryan)
ノンパラメトリック検定で多重比較したいとき


その中でも最も有名なのは,

ダネットの検定

です.


統計処理ソフトが普及した現在,あまり使用されませんが,エクセルや電卓を使えばボンフェローニ修正が可能です.

さて,このボンフェローニ修正で「対照群との比較」をする場合の解説を少ししておきます.


対照群との比較をする場合のボンフェローニ修正について


このタイプ(対照群との比較)の多重比較であれば,ボンフェローニ修正をする際の「組み合わせ数」も減らすことができます.

つまり,例えば4群での多重比較を「全ての群で比較」するときには,
組み合わせ数=6
になるので,α値(p値)の補正には「6」を使いますが,

「対照群との比較」であれば,
「AとB」「AとC」「AとD」の3つ,つまり,
組み合わせ数=3
になるので,補正する値も「3」でOKです.

※ちなみに,3群であれば「2」,6群であれば「5」ということです.

ようするに,有意差が出やすくなるんですよ.


ここで何言ってるのか分からない場合は,
Excelで多重比較まとめ|ボンフェローニ(Bonferroni)|サイダック(Sidak)|ホルム(holm)|ライアン(Ryan)

を見ておいてください.

「組み合わせ数」
のところを変更するのです.


対照群との比較をする場合の注意点


ここで注意したいのは,論文執筆とか発表会で以下のように言ってはいけません.


例えば,以下のグラフのように,対照群(A群)との比較をして,
「A群とB群」
「A群とD群」
に有意差が現れたけど,

「A群とC群」
には有意差がなかったとします.


こういう結果をもとに,論文とか発表会などで,

「以上のことから,B群はC群よりも高値を示しD群はC群よりも低値であることが示唆されました」

とは言えません.

めっちゃ大事なことなので,そこの表現には注意してください.


この多重比較は,あくまでも,
A群とその他の群だけを比較し,
A群とその群との差を論ずることしかしない
ということが前提の処理方法です.

たしかにグラフを見ると,B群とC群には有意差があって,平均値もそのように見えるのですが,この多重比較を使った研究で言えるのは,

「C群は,A群とは有意差が認められなかった」

ということだけです.



多重比較しなてくもいい「多重比較」があります


詳細は別記事にしていますので,そちらも参考にしてください.

統計処理手法の選び方(3)多重比較が不要な多重比較?





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