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沖縄基地問題|もうそろそろ補助金漬けで優遇されているわけではないことを知るべき

沖縄の基地関連補助金は多くない,っていうか少ないという話


昨日,ニコニコ動画を見ていたら,

「沖縄は,補助金漬けで優遇されていることを隠すための詭弁を弄している」

という趣旨の動画がアップされていました.
YouTubeとかにもアップされているのかもしれませんが,いちいち探してここに貼るのも面倒なので割愛します.


ただ,こうした沖縄の財政に対する,
「基地問題を盾にして補助金にたかっている,優遇されている」
という主張は以前から根強くあります.


これまでに多くの識者が,
「実際のところ,沖縄は補助金などで優遇されているわけではない」
という議論を丁寧に展開してきたので,さすがにまともな政治家やマスコミはこの話題を口にすることはなくなりました.


しかし,未だに多くの人が,
「沖縄は基地問題で過度に優遇されている」
と論陣を張っているのを見かけます.





まだ言ってる「沖縄は基地問題で優遇されている」


21世紀になって,そろそろ20年が経とうとしています.
それでもまだ「沖縄は補助金漬け」と言う人がいるのです.

これはもはや,今どき,
「スポーツや運動中には,水を飲んではいけない」
というくらいズレまくっている認識です.


参考までに,例えば以下のようなサイトがあります.
「沖縄は国から過度に大きな経済支援を受けていない」説を検証する(個人ブログ:マスメディア報道のメソドロジー 2017.2.13)



そのブログでは,沖縄県庁がホームページにグラフ付きで主張している,

「沖縄は決して多くの補助金をもらっているわけではない」

(よくある質問)沖縄振興予算について(沖縄県庁ホームページ)






ということについて,

「沖縄県は国庫支出金が突出して多い」

ことを検証し,

「それゆえに優遇されている」

という議論を展開しているんです.


このブログの著者は,
この一連の作業はかなり面倒なので、ほとんど誰もやろうとは思わないと思いますが、私は面倒なことが大好きなので、やってしまった次第です(笑)
と言っていますし,たしかに著者なりに面倒くさい作業を頑張ったのかもしれません.


しかし,もし学生がこの程度の作業量でレポートや論文を出してきたら,間違いなく私は不合格を出します.


ちなみに,冒頭のニコニコ動画の主張も同様です.

彼らの主張は以下のようなもの.



沖縄は地方交付税が少ない.

ということは,沖縄は税収が多く,潤っている県のはずだ.

それなのに国庫支出金が多いということは,補助金が優遇されているはずだ.

沖縄県庁が出している積上げ棒グラフは,「国庫支出金」を下に,「地方交付税」を上に示すことで,それを誤魔化している.



という趣旨.

議論展開として,かなりツッコミどころが満載なのですが,まずは,

「沖縄県に地方交付税が少ないのは,沖縄県は税収が多くて潤っているから」


を検証したいと思います.


例のブログの著者が「頑張って調べた」という総務省のホームページに,各都道府県の財政データがあります.

今回のデータは,
平成29年度都道府県決算状況調(総務省)
を使いました.


そこに全国・都道府県の地方税があるのでお示しします.

図が小さくなっちゃうので見にくいと思いますが,左端が北端の「北海道」で,「沖縄県」は一番右端なので分かりやすいかと思います.



ご覧のように,沖縄県は税収が多くて潤っている県ではありません.
東京以外の各地域は,人口あたりの税収に大きな差はないのです.

ついでに言うと,沖縄県は最下位です.



では次に行きます.
上述した動画もブログも,その他多くの人も言っているのが,

「地方交付税は,税収が少ないところに配分しているはず」

という主張.

根本的な話をすれば,税収が最下位の沖縄が「地方交付税が少ない」という時点で彼らの議論は破綻するのですけど・・・.

しかも,それが推測という時点で噴飯ものですが,一応,都道府県ごとに地方交付税を上乗せしたグラフを作ったのでご覧ください.


彼らの主張からすれば,地方交付税によって各都道府県の財政は均衡化するはずです.
では実際はどうなのか?




そもそも,地方交付税とは,各都道府県の財政を「均す」ためのものではありません.

共産主義者が言うならまだしも,国家観の弱いエセ保守・エセ右翼に多い勘違いと言えます.


地方交付税については,総務省ホームページやウィキペディアを調べれば労せず知ることができます.
地方交付税は、地方公共団体の運営の自主性を損なうことなくその財源の均衡化を図り、国が必要な財源の確保と交付基準の設定を行い、地方行政の計画的な運営を保障することによって地方自治の本旨の実現と地方公共団体の独立性を強化することを目的としている。(出典は総務省)

つまり,目的は「財源の均衡化」ではなく,
「地方自治の本旨の実現と地方公共団体の独立性を強化すること」
です.

単純に,
「税収が多いところには配分せず,税収が少ないところにたくさん配分する」
というものではないことがわかります.

地方交付税の目的が「財源の均衡化」だと勘違いしている人が多いのでしょう.
でもそれは手段の一つであって,目的ではありません.


もっと言えば,税収が少ない沖縄県にとって,
「地方交付税(自治体が自由に使えるお金)が少なく,国庫支出金(自治体が自由に使えないお金)の配分が多い」
という状況は,地方自治という観点から極めて重大な問題なのですが,それについては場を変えて論じたいと思います.


おまけデータとして,地方税と地方交付税の相関関係もお示しします.
R二乗値は0.2774(相関係数: r = -0.5267)ですから,有意な相関関係ではありますが,ちょっと弱いです.

なお,沖縄県を赤くマークしておきました.
沖縄県はこの位置にあります.




さて次は,地方税と地方交付税と国庫支出金を積み上げたグラフです.

この国庫支出金が,「沖縄県への補助金」と呼ばれているお金です.




あなたはこれを見て,それでも,

「沖縄県は他の都道府県よりも優遇されている!」

と主張しますか?


っていうか,もうこの事実は,多くのメジャーなマスコミや,政治家(少なくとも秘書)の方々は知っていると思います.

なので,「沖縄県は補助金で優遇されている」という主張をする人を,最近は見なくなったのです.


ではなぜ,一般の人の多くは「沖縄は補助金漬けだ」と思っているのか?


その点について,沖縄県の政治家・仲里利信氏が,衆議院に質問書を提出しています.

この政治家の活動やイデオロギーはこの際脇に置いといて,これまでに,

「沖縄は,他の都道府県よりも補助金をたくさんもらっているんだろ?」

と思っていた人は,ご自身の胸に手をおいて読んでみてください.

沖縄関係予算については、これまで政府はあたかも基地があるが故に沖縄だけを特別扱いし、他県と別枠の上乗せ予算が特別にあるが如く取り繕ってきたことは周知の事実であり、誠に遺憾である。政府のそのような取り組みの最たる証左が、政府が恣意的に用いている「沖縄振興予算」なる呼称であり、また高等学校公民科現代社会等における「沖縄の経済や沖縄振興予算、米軍基地等」に関する意図的で、事実に反した記述に他ならない。

質問書の詳細はこちら.
沖縄関係予算に対して政府が恣意的に使用する振興予算の呼称と国直轄事業等の計上を是正することに関する質問主意書(衆議院 平成二十八年十月十三日提出 質問第六〇号)


私もこの質問書を読んで,「それだ!」と思わされました.

上述した国庫支出金のところでも,わざわざ,

この国庫支出金が「沖縄県への補助金」と呼ばれているお金です

と書かなければいけないと思うほど,「沖縄県振興予算」の財源や仕組みを知らない人が多いかと思います(と私は直感しています).


以前も,このブログで以下の記事を紹介しましたよね.
参考までにご覧ください.
沖縄県(に限らず地方)の財政について有益な示唆を得られます.

「沖縄振興予算」という呼称が、誤解を招いている(明治ネット 2017.3.15)
ところが沖縄県は、沖縄振興特別措置法に基づき内閣府沖縄担当部局予算として一括して計上される仕組みになっています。この一括計上される国庫支出金、及び国直轄事業費の合計が、いわゆる沖縄振興予算と呼ばれているものです。つまり、呼称が沖縄振興予算というだけで、中身は全ての都道府県に交付されている国庫支出金、及び国直轄事業費と変わらないのです。


たしかに,メディアでは「沖縄振興予算」とだけ称して,それが「国庫支出金」であることを明示しません.

それに,その他の都道府県に分配されている国庫支出金との比較もされず,ただ単に「◯◯億円の補助がある」というニュースだけを流します.

そんなことが続いたら,

「沖縄は過度に優遇されている」

と勘違いする人が出てきてもおかしくないのです.


っていうか,むしろ沖縄は補助金が足らないだろ


実際,私も全国データで比較するまでは,
「沖縄は他のところよりも少しくらいは優遇されているのでは」
と思っていました.

もっと言えば,優遇されて然りの地域だと思っていたからです.


ところが,想像以上に補助金が少なかった.

ちなみに,人口あたりにしていない純粋な金額で比較したのがこちらです.

これはイコール,各都道府県の財政規模を意味するグラフです.


「 え? マジ? 」

って思った人多いんじゃないですか.


沖縄に米軍基地を負担させている

沖縄は極東安全保障の要衝だ


という割には,あまりにもお粗末な国家体制ではないでしょうか.


私はてっきり,北海道や沖縄,あとは長野や石川といった地域は,なんだかんだ言って国家安全保障のためにも,特別に優遇しているものだと思っていたからです.


特に沖縄は,広範囲に広がる離島で構成されていますし,何かあるたびにイチャモンをつけてくる国々(中国,韓国,台湾,フィリピン)と隣接しているから,かなり優遇されていて然りです.

だって沖縄って,改めて示すまでもないけど,こういう場所ですよ.



「そりゃ,ウヨクの奴らは『補助金漬けのたかり根性がある』って言ってるけどさぁ.あそこ,なんだかんだで莫大なお金を払ってでも維持しなきゃいけない場所だもんね」

って思うじゃん!

ところが,実際のところ補助金はあれっポッチしか出してない.


他のところをちょっとずつ削って,せめて,国庫支出金を今の2倍の金額は出して優遇しなきゃいけないんじゃないの?

もちろん北海道もそうだけど.

そりゃ,住民の「不満」も溜まるってものです.


ちなみに,
「そんなに嫌なら住まなければいい」
って言い出すバカウヨもいますけど,よくそんな発想で保守・右翼をやってられるなって思います.


【参考資料】


参考までにご覧ください.


「地方税+地方交付税+国庫支出金の合算値」について


各都道府県の財政規模を示すものとして,この記事では本文の趣旨に合わせて,
「地方税+地方交付税+国庫支出金の合算値」
を用いました.

ですが,厳密にはこれら以外の財布(地方譲与税とか地方消費税とか)もあります.
しかし,この3つ(地方税,地方交付税,国庫支出金)が,各都道府県の主要な財源であることは間違いないことです.

その参考までに,各都道府県の予算総額と「地方税+地方交付税+国庫支出金の合算値」を比較したグラフが以下です.



これについて,外れ値である「東京都」を除いた,総額と「地方税+地方交付税+国庫支出金の合算値」の相関関係はこちらです.

総額とほぼ一致していますので,上述してきた「地方税+地方交付税+国庫支出金の合算値」の大小が,各都道府県の財政規模を反映していると言えます.




沖縄は「国庫支出金(沖縄振興予算)の割合が極端に大きい」について


その観点から作成したグラフがこちらです.
以下を見て,どう解釈するかはお任せします.






人口あたりではない,生の値はこちらです.





意味があるか不明ですが,一応,素直に両者の「割合」として示したのがこちらです.





ついでに,「地方税*地方交付税*国庫支出金による割合」はこちらです.






同じ「人口」同士で割っているので,上図とほぼ同じ結果になりますが,生データで作成した財源の割合はこちらです.


この「財源の割合」を見れば,

「沖縄は国庫支出金が他県よりも多い傾向にある」

と言えなくもないのですが,もともと絶対的な金額が多くないですし,税収が少ない上に「地方交付税」が同条件の他県よりも少額なのですから,必然的に国庫支出金の割合は大きくなります.
っていうか,根本的なこととして,突出して多くはないですし.

そもそも,この「割合」というデータにどんな意味を見出すせるかは極めて疑問です.

なぜなら,「補助金」で問題視されているのは「金額や規模」であって,「割合」ではないからです.


例えば,同じ1万円を渡すにしても,お金持ちと貧乏人では意味が違います.
割合で考えれば,もともと財布に1万円が入っている人にとっては50%ですが,1000円しか入っていない人では91%.

これについて,

「私は50%なのに,あなたは91%も受け取るのは多すぎる!」

という話にはならないでしょ,ということ.

数字ばかり見て物事を考えると,大切なものを失います.



今回用いたデータは,
によるものです.


コメント

  1. 補助金漬けというのは交付金や国家支出金に現れない部分のように思います。
    例えば、沖縄では酒税が減免されてましたよね?

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