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最近の「いじめ」事情について

いじめ問題を取り上げ続けているブログですから


Yahoo!ニュースのモバイルアプリ版を使っているのですけど,そこでニュースタグの「テーマ」を選択できる機能があって,私もそのひとつに「いじめ」を選んでいます.
そしたら,以前はそうでもなかったのに,ここ数年は毎日複数の「いじめ」をテーマ,キーワードにしたニュースが出るようになりました.
「いじめ」に関するニュースは,PVを稼ぐことができるコンテンツとして発展しているようです.

最近ではもっぱら,
「生徒や社員の自殺原因が,裁判で『いじめ』として認められたか否か」
とか,
「こんな『いじめ方』が最近話題になっている」
についてのものが多く,それまでに散見されていた,
「どうすれば『いじめ防止』ができるか」
といった類のニュースは消えつつあります.

まあ,日本におけるいじめ問題なんて,そんなもんですよね.

だいぶ前の過去記事でも述べたことがありますが,

「いじめ防止対策推進法なんてクソみたいな法律は,実際には機能しない」

という趣旨と,どうしてそうなるかと言うと,
「こんな法律や条例を作ったら最後,世間や現場は,何をもって『いじめ』と認定するか? いじめといじめではない境界は何か? といったことに終始するようになり,肝心要の『いじめとどうやって向き合えばいいか』が蔑ろになるだろう」
という話をしたことがあります.

例えばこんな記事で,それらしい事をしゃべってました.


で,現在.
本当にそうなっちゃってる,っていうことです.

だからあれほど言ったのに.

「いじめ」という曖昧な問題を法律で扱うということは,教育現場と法律家にそういう影響と反応と対応を惹起させるということです.
当時の日本で,この点に警鐘を鳴らしていたメディアは少なかったですね.
教育現場からの警鐘はたくさん見られましたが,たいていの場合,
「現場の教員は,自分たちの都合が悪くなるから反対しているのだ」
という調子で軽んじられていました.

人間なんて,実のところ「いじめ問題」を改善することに興味はありません.
「いじめを解決したい!」
とか言っちゃって,実際のところはそうやって「加害者」や「犯人」などの悪者を,絶対的正義の立場から「いじめてやりたい」と思っているのです.
そして,そういう大衆の興味をそそるニュースばかりが出るようになり,そっちの方に目が向いてる「今」があるわけ.


いじめの認知件数ですが,過去最多を更新し続けており,今ではこんな状態.
いじめ最多61万件、小学校で大幅増 積極認知、6年で3倍―文科省・問題行動調査(時事ドットコム 2020.10.22)

このデータ,とても複雑で解釈が難しいのですが,結論としては「価値の無いデータ」「意味不明なデータ」として扱っていいと思います.
詳細は,このブログをきっかけに知り合った,教育評論家の和田先生がアゴラの記事にしてくれていますので,そちらをどうぞ.
いじめ防止対策推進法と文科省調査が招く「いじめ問題」の泥沼化(アゴラ 2020.10.24)



いじめの質についても変化があるようです.
知り合いの学校教員から話を聞くと,最近はどんどん内容が「陰湿化」と「オープン化」しているというのです.
「陰湿」と「オープン」では矛盾しているのではないか? って思うでしょうが,それを端的に言い表せばこういうこと.
すなわち,
周囲の生徒,および大人たちから明確に「それはいじめだよ」と指摘されない程度の嫌がらせを,公開の場で(主にSNSなどを通じて)堂々と行う
という「いじめ」になっているというのです.
つまり,手口が陰湿で,手法がオープンという意味.


大人たちが,「何がいじめで,何がいじめでないのか」で盛り上がるようになった結果,子供はその間隙を突くようになった.
それだけのことです.
環境変化と適応という,生物の基本ですね.



「自殺原因はいじめと認定されなかった」というニュースへの反応について


あと,余談ですけど,Yahoo!ニュースとかのいじめ関連のニュースで,
「裁判では,自殺原因はいじめと認定されなかった」
というものへの読者コメントですが,結構ぶっ飛んだものが散見されます.

曰く,
「だったら何が自殺原因だったのか言ってみろ!」
とか,
「加害者が守られ過ぎている!」
とか.

これ,一人でほざいているならまだしも,それに何百という関連コメント・賛同コメントが付いてたりする.
世も末です.


裁判では,自殺原因が「いじめ」ではないと認定されただけのこと.
当たり前ですけど,裁判所は自殺した人の自殺原因を特定する機関ではありません.

例えば,AさんがBさんを殺害した容疑で裁判にかけられたとして,その結果,Aさんは無罪という判決が出たとします.
そこで傍聴人が,
「こんな判決は納得できない! じゃあ誰がBさんを殺害したのか言ってみろ!」
と怒鳴りつけたところでどうしようもない.
だって,裁判所はBさんを殺害した人を探し出す機関ではないのですから.
傍聴人が納得できないからって,とりあえず容疑者のAさんを有罪にしとけ,っていうのは乱暴過ぎるにも程があるでしょう.

だいたい,いじめ問題とかで声高に叫ばれることの多い,
「加害者が守られ過ぎている」
っていうのも,結構な勢いで乱暴です.

いじめ問題を扱った経験のある人なら分かるかと思いますが,「いじめ」という状況は非常に複雑なものがあって,簡単に誰それを「加害者」,それ以外を「無関係者」と線引き・認定することは難しいのです.

そもそも,ニュース程度の情報源から「納得できない!」などと言い出す事自体,極めて乱暴です.
この人達は,本当に「加害者」とされる人間の詳細を知っているのでしょうか?
事件の実態や詳細を知っているのでしょうか?

知るわけがない.

なのに,「この生徒が自殺したのはお前のせいだ.その罪を背負って一生をかけて償え」と言い放つことを良しとするのは,あまりにも稚拙です.

こんな事言うと,「いじめ加害者を擁護するのか!」とか言い出す人も出てきますが,そんな幼稚な言いがかりに反論するのは面倒なので,以下省略でお願いします.

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