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自信が確信に

特にこれから大学院を目指している学生に向けた本の紹介です.
大学院生をやっている人も,これを読んだら共感してくれるところがあるでしょう.


「自信が確信に変わりました」と言ったのは,現在,メジャーリーグのボストン・レッドソックスで投手をやっている松坂大輔選手です.

面白い表現ですね.
「自分はできるはず」 という自信が,あの試合からは 「これでできる」 という確信に変わった.
「そうだろうと思っていたけど,やっぱりそうだった」というニュアンスなのでしょうけど,私もそれに近い感覚を得たのが 森博嗣 著 『喜嶋先生の静かな世界』 です.

大学院や “研究者” というものを漠然と目指している学生がいましたので一読を勧めました.
「どんな生活をしているんですか? どんなこと考えながらやっているんですか?」
という問いに,
「別に深いこと考えてなかったかな.ほとんど家に帰らず,一日中資料を漁ってる.◆参考記事 暇な時は夜中までフットサルしてて守衛に怒られたり.クリスマスの夜にはサンタクロースのトナカイの名前を調べて暗記してた.今でも全9頭の名前を言えるよ.えーっと,ダッシャー,ダンサー,ダンダー,プランサー,ヴィクセン,ブリュッツェン,コメット,キューピッド.そして一番有名なのが赤鼻のルドルフで・・・・」◆参考記事
という回答をしても,案の定
「???」
な状態です.

私自身の院生活の様子とか今の考えをしゃべってもいいのですが,いかんせん “ほぼ松坂世代(松坂のほうがちょっと先輩)” である私の青臭い声を聞いても説得力に欠けると思い,森博嗣先生のお言葉を借りることにしたのです.

というのも,この小説の登場人物たち(主人公とか喜嶋先生とか院生とか)は,研究者をやってるほぼ全ての人の学生生活や研究者生活の典型例ばかりだからです.
大学院生活や研究者とはどんなもんなのか?を詳しく知りたい人は,これを読めばよくわかります.

あまりに主人公の境遇が自分の学生時代とぴったりハマり過ぎてて,その感情移入が怖いくらいです.
同時に,「やっぱり他の分野の研究者もこんなふうに考えて研究してたんだ」
とか,「あぁ,他の大学の院生もおんなじことやってんだなぁ」
などと懐かしい部分もあったりで.
大学院生というのは,すべからく小説のような生活を送ることになるのでしょうね.

大学院の,それも理系の研究に携わっていた人には強烈なインパクトを残していくのでしょうが,まったくこの分野外の人達には「へぇー」で終わる小説なのかとも思います.

私も学生時代に指導教員から教わったことが本書でも随所に出てきます.
研究者をやる上で大事な考え方も学べる良書です.

それに,あらためて大学教育のあり方を考えさせられました.
これについては以前に記事にしたことがありましたので,そちらを参照してください.◆参考記事
今勤めている大学は,どちらかというと大人しい大学です.
必死になってキラキラさせようとしていますが,飾り立てなくても光る大学を目指していきたいものです.