2016年4月4日月曜日

【追記】続・そう言えば,自転車取り締まり強化の影響はどうなった?

前回の記事に対し,こんなご意見をいただきました.
「そうは言っても,自転車取り締まり強化は,長い目で見たら危険運転防止のために重要なのではないか?それによって自転車事故が一時的に増えてしまったとしても,長期的な視点からすると通過しなければならない現象ではないか」

私は別に「自転車の危険運転防止の啓蒙をするな」と言っているわけではありません.
危険な運転は非難されなければいけないだろうし,そうした注意を呼びかけることは重要だと思います.
ですが,現状の道路交通状況において “正しい自転車運転のルールを徹底する” ということは,逆に危険な運転を増加させることになりはしないか? という推測を述べているのです.
ルール上の正しい運転をすることと,それによって安全になるか否かは別ですから.
※なので,この推測が本当かどうか,それに焦点を当てた研究調査が求められると思います.

過去記事で散発的に書いていることを,ここでもう一度まとめておきます.

以下の2つのグラフをご覧ください.
これは,交通事故死亡者数の割合を,年齢層別・状態別に示したものです.

平成27年 交通死亡事故の発生状況及び道路交通法違反取締り状況について 警察庁(2016)



平成27年 交通死亡事故の発生状況及び道路交通法違反取締り状況について 警察庁(2016)

このように,自転車に乗っている状態で事故って死亡した方について年齢層別に人数と割合をみると,圧倒的に子供と高齢者が多いのです.
※これは歩行者にも同じことが言えそうですが.

逆に,15歳以上から50代前半ではその数が一気に少なくなります.
これは「正しい自転車運転ができているか否か」という問題よりも,おそらくは運動能力や判断力といったものが影響していると考えるのが妥当ではないでしょうか.

ですから,「正しい自転車運転なるものが啓蒙された年(平成25年,平成27年)」には,自転車単独事故(自爆)による死亡者数(絶対数)が増加したのではないか? と推測したのが前回の記事です.
ルールに従い危険な車道に出てしまい,恐る恐る運転するものの操作を誤って事故るという可能性です.

とは言え.こういう状況下で国民全体に向けて「正しい自転車運転のルール徹底」を説くことが全く無意味だとは言いません.
しかし,そもそも自転車における事故を頻発させているのが子供と高齢者であることをみると,現状,
「自転車に対し不親切な運転をする自動車が多く,自転車にとって不親切な設計の車道」
に,
「運動能力と判断力に劣る子供と高齢者が乗る自転車」
を走らせるよう仕向ける事のほうが危険ではないか? ということなのです.

そしてさらに,今回の「自転車運転取り締まり強化」のニュースが踊る中で実は少なくない人が知ったであろう,
「な〜んだ,自転車って車道を堂々と走っていいんだ」
という認識を生じさせてしまい,でも,
「自転車と一緒に走ることに慣れていない自動車ドライバーが多い車道」
を走らせると,これまた重大事故が増えるのではないか? という懸念があるのです.
これは,自動車やバイクを運転している人にとっても厄介なものだと思われます.

ですから,昨年6月から始まった「自転車運転取り締まり強化」という方策は,かなり危険な動きではないかと思っていたのです.

そしてこれについて前回の記事で,
平成27年は自転車運転の取り締まり強化をしたにも関わらず,
自転車運転事故による死亡者数は増加し,
しかも「違反による事故」は低下せず,むしろ増加しており,
統計上増加した事故の発生パターンも,当初から懸念していたものと一致する.
ということを述べさせていただきました.

ここでポイントなのは,取り締まり強化によって,
「違反者が増えた」のではなく,
「違反して事故死する人が増えた」ということです.

それをグラフにしたのが以下.
平成27年 交通死亡事故の発生状況及び道路交通法違反取締り状況について 警察庁(2016)より作成

これを見て「いやいや,増加じゃなくて,横ばいだろ」と捉えてもらっても構いません.私が言いたいのは,「横ばい」でもダメだということです.
取り締まり強化したのですから,「違反者が増えた」のは分かります.
ですが,「違反して事故死する人」は,本来なら取り締まり強化によって減るはずなのです.それが取り締まり強化をする意義なのですから.
が,そうはなっていない.
これは結構な問題だと思いますよ.

そんな批判ばかり言って,ではどうすれば良かったのか? 
ということですが,過去記事にもあるように,まずは「歩道の拡充,道路・路肩の幅員増加」を進めることが先ではなかったかと思うのです.
もちろん,全国各地の道路をいきなり充実させるのは難しい話でしょうけど,いらぬ犠牲者が出る可能性をおさえつつ進めるためには,取り組む順番が逆ではなかったかと考えてしまいます.

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