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鳥無き島の蝙蝠たち(4)空海
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鳥無き島の蝙蝠.四国・香川県代表の筆頭と言える一人です.
■空海(wikipedia)
「弘法大師」や「遍照金剛」の名でも知られている,四国・讃岐国(香川)出身の僧侶.
空海が開いた仏教の宗派が「真言宗」です.
また,中国からうどんの作り方を伝えた人ともされ,讃岐うどんを愛する人々の間では「讃岐うどんの開祖」としても著名です.
ちなみに,讃岐うどん好きの私は真言宗です.
幼少の頃,この空海にまつわる霊場・四国八十八ヶ所の寺の一つに住んでいたこともあります.叔父がその寺の住職なんです.
小さい頃に,お遍路さん(八十八ヶ所巡りをしている人のこと)に境内で遊び相手をしてもらっていた覚えがあります.あと,賽銭も入れずに鐘を突きまくって遊んでいたことも.よく住職から怒られていました.
小学生のころ,四国八十八ヶ所を全て回ったこともあります.なので空海に対しては思い入れが強いわけで.
私にとっては身近だった空海ですが,実はその存在を知らない人が圧倒的に多いんです.
前回の「三好長慶」もそうですね.戦国最強武将の筆頭なのに,「地味」ってだけで天下人ですらなかったことにされています.やっぱり四国は歴史の闇です.
さて,そんな空海は無類の天才でした.もう既に伝説的存在となっているので誇張や歪曲が入っているでしょうが,それを差し引いても圧倒的な才能の持ち主であったことは間違いないでしょう.
こういう人は千年に一人誕生します.その一人が空海です.
何が凄いって,抜群のネーミングセンスです.
「空海」
なんと抑制の効いた,それでいて雄大な名前でしょう.
これだけで格の違いが分かります.
「革新的イノベーション」とか「スーパーグローバル大学」,「生活の党と山本太郎となかまたち」などとネーミングする人たちに爪の垢を煎じて飲ませたいものです.
804年の遣唐使・留学僧の一人に空海が選ばれます.この時,空海は一般学生でしたが,その他の留学僧は皆,エリート中のエリート達でした.
なぜこの留学計画に空海が選ばれたのかは謎だとされています.
いずれにせよ,中国に渡った空海は,20年計画だった仏教留学を2年で終わらせます.
ホームシックで帰ってきたわけではありません.中国の先生たちが「空海君,君はもう免許皆伝じゃぁ」と言って帰した恐るべき留学生なのです.
20年かけるところを2年で帰るのはもったいないということで,空海は中国で土木建築や薬学,気象学,うどんの作り方など様々な知識や教養を身につけて帰国します.
そんな空海は,この留学を自己評価して「虚しく往きて実ちて帰る」と言います.
何も無いところからスタートして一転,実り豊かに帰国したという意味です.
空海がどのような人物だったのか考える上で,非常に参考になるが河原宏 著『空海 民衆と共に』です.
河原氏は,空海の業績の一つが「都市型住民」を宗教によって統一させたことだと考えます.
国際的な大都市だった唐・長安での留学体験が,空海にそれをさせたのではないかというのです.
もったいぶってないでダイレクトに言いましょう.
「都市型住民」とは「大衆」のことです.
都市は大衆を生みます.
■東京を諦める
都市に住む人々は独特の病理にかかっています.
ホセ・オルテガいわく「バカ」,福田恆存いわく「悪性の俗物」です.
この病理を緩和しなければいけない,そう考えたのが空海です.
おそらく,空海は唐の都・長安にはびこる大衆を見てきた.これから大都市になるであろう日本にも,このバカと悪性の俗物が蔓延するに違いない.
だから空海は「バカにつける薬」として,「綜芸種智院」を開設しました.
いわゆる大学です.
■綜芸種智院(wikipedia)
当時の学芸研究の実態は,それぞれの専門の枠に閉じこもってしまい,僧侶は経典を,大学では世俗学芸のみを追求していました.
これでは世を救い人を利する学問の根本目的が忘れ去られていると空海は嘆きます.
なんだかデジャヴな状況だったんですね.
空海は言います.
「九流六芸は世を済ふの舟梁,十蔵五明は人を利するの惟れ宝なり」
九流と六芸とは世俗の技芸で,実学的・テクノロジカルなものを指します.
十蔵五明とは仏教の教えのことです.
空海が大学教育を通して伝えたかったこととは,
「実学だけではダメ.仏教だけでもダメ.あまねくテクノロジーを活かすには,その科学技術をどのように用いるべきかという思想哲学を学ぶ必要がある」
ということです.
涙が出そうなくらい感動する『開学の理念』ですね.
何度も言いますが,空海は千年に一度の天才でした.
四国山中での修行と中国留学によって,ありとあらゆる領域の真髄をマスターした人です.
そんな人が大都市・平安京に必要性を感じたのが,大衆対策でした.
人はテクノロジーに依存しようとします.
特定のイデオロギーに寄ろうとします.
讃岐うどんよりもタピオカ澱粉入りのうどんの方が白くてプリプリで美味しいと言い出す.
都市型住民はそれが顕著です.
これではダメだと説いたのが空海なのです.
事実,綜芸種智院では仏教や学問の宗派派閥に関係なく教師を招いて授業をさせています.
宗派だ派閥だ関係ぇねぇ,っていうのが空海です.
現代日本のウヨクに聞かせてやりたいですね.
綜芸種智院が「大衆対策」だったことは,この大学が「給食・給費制」だということからも窺えます.
飯を食わせながら勉強させていました.
運営費は天皇や貴族,高僧といった人からの協力で賄われていたのです.
国をあげて大衆対策をしなければいけない,そんな空海の気迫が伝わります.
この綜芸種智院ですが,空海が没してから10年で廃校になります.
理由は経営難だったからとのこと.
「今後も運営を続けたければ自立経営できるようにしろ」
などと言われたのでしょうか.
さもありなん.
さてさて,歴史は繰り返されています・・・.
関連記事
■この国難をなんとかするために大学教育
■大学教育を諦める
■空海(wikipedia)
「弘法大師」や「遍照金剛」の名でも知られている,四国・讃岐国(香川)出身の僧侶.
空海が開いた仏教の宗派が「真言宗」です.
また,中国からうどんの作り方を伝えた人ともされ,讃岐うどんを愛する人々の間では「讃岐うどんの開祖」としても著名です.
幼少の頃,この空海にまつわる霊場・四国八十八ヶ所の寺の一つに住んでいたこともあります.叔父がその寺の住職なんです.
小さい頃に,お遍路さん(八十八ヶ所巡りをしている人のこと)に境内で遊び相手をしてもらっていた覚えがあります.あと,賽銭も入れずに鐘を突きまくって遊んでいたことも.よく住職から怒られていました.
小学生のころ,四国八十八ヶ所を全て回ったこともあります.なので空海に対しては思い入れが強いわけで.
私にとっては身近だった空海ですが,実はその存在を知らない人が圧倒的に多いんです.
前回の「三好長慶」もそうですね.戦国最強武将の筆頭なのに,「地味」ってだけで天下人ですらなかったことにされています.やっぱり四国は歴史の闇です.
さて,そんな空海は無類の天才でした.もう既に伝説的存在となっているので誇張や歪曲が入っているでしょうが,それを差し引いても圧倒的な才能の持ち主であったことは間違いないでしょう.
こういう人は千年に一人誕生します.その一人が空海です.
何が凄いって,抜群のネーミングセンスです.
「空海」
なんと抑制の効いた,それでいて雄大な名前でしょう.
これだけで格の違いが分かります.
「革新的イノベーション」とか「スーパーグローバル大学」,「生活の党と山本太郎となかまたち」などとネーミングする人たちに爪の垢を煎じて飲ませたいものです.
804年の遣唐使・留学僧の一人に空海が選ばれます.この時,空海は一般学生でしたが,その他の留学僧は皆,エリート中のエリート達でした.
なぜこの留学計画に空海が選ばれたのかは謎だとされています.
いずれにせよ,中国に渡った空海は,20年計画だった仏教留学を2年で終わらせます.
ホームシックで帰ってきたわけではありません.中国の先生たちが「空海君,君はもう免許皆伝じゃぁ」と言って帰した恐るべき留学生なのです.
20年かけるところを2年で帰るのはもったいないということで,空海は中国で土木建築や薬学,気象学,うどんの作り方など様々な知識や教養を身につけて帰国します.
そんな空海は,この留学を自己評価して「虚しく往きて実ちて帰る」と言います.
何も無いところからスタートして一転,実り豊かに帰国したという意味です.
空海がどのような人物だったのか考える上で,非常に参考になるが河原宏 著『空海 民衆と共に』です.
河原氏は,空海の業績の一つが「都市型住民」を宗教によって統一させたことだと考えます.
国際的な大都市だった唐・長安での留学体験が,空海にそれをさせたのではないかというのです.
もったいぶってないでダイレクトに言いましょう.
「都市型住民」とは「大衆」のことです.
都市は大衆を生みます.
■東京を諦める
都市に住む人々は独特の病理にかかっています.
ホセ・オルテガいわく「バカ」,福田恆存いわく「悪性の俗物」です.
この病理を緩和しなければいけない,そう考えたのが空海です.
おそらく,空海は唐の都・長安にはびこる大衆を見てきた.これから大都市になるであろう日本にも,このバカと悪性の俗物が蔓延するに違いない.
だから空海は「バカにつける薬」として,「綜芸種智院」を開設しました.
いわゆる大学です.
■綜芸種智院(wikipedia)
当時の学芸研究の実態は,それぞれの専門の枠に閉じこもってしまい,僧侶は経典を,大学では世俗学芸のみを追求していました.
これでは世を救い人を利する学問の根本目的が忘れ去られていると空海は嘆きます.
なんだかデジャヴな状況だったんですね.
空海は言います.
「九流六芸は世を済ふの舟梁,十蔵五明は人を利するの惟れ宝なり」
九流と六芸とは世俗の技芸で,実学的・テクノロジカルなものを指します.
十蔵五明とは仏教の教えのことです.
空海が大学教育を通して伝えたかったこととは,
「実学だけではダメ.仏教だけでもダメ.あまねくテクノロジーを活かすには,その科学技術をどのように用いるべきかという思想哲学を学ぶ必要がある」
ということです.
涙が出そうなくらい感動する『開学の理念』ですね.
何度も言いますが,空海は千年に一度の天才でした.
四国山中での修行と中国留学によって,ありとあらゆる領域の真髄をマスターした人です.
そんな人が大都市・平安京に必要性を感じたのが,大衆対策でした.
人はテクノロジーに依存しようとします.
特定のイデオロギーに寄ろうとします.
讃岐うどんよりもタピオカ澱粉入りのうどんの方が白くてプリプリで美味しいと言い出す.
都市型住民はそれが顕著です.
これではダメだと説いたのが空海なのです.
事実,綜芸種智院では仏教や学問の宗派派閥に関係なく教師を招いて授業をさせています.
宗派だ派閥だ関係ぇねぇ,っていうのが空海です.
現代日本のウヨクに聞かせてやりたいですね.
綜芸種智院が「大衆対策」だったことは,この大学が「給食・給費制」だということからも窺えます.
飯を食わせながら勉強させていました.
運営費は天皇や貴族,高僧といった人からの協力で賄われていたのです.
国をあげて大衆対策をしなければいけない,そんな空海の気迫が伝わります.
この綜芸種智院ですが,空海が没してから10年で廃校になります.
理由は経営難だったからとのこと.
「今後も運営を続けたければ自立経営できるようにしろ」
などと言われたのでしょうか.
さもありなん.
さてさて,歴史は繰り返されています・・・.
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