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帰納的防災・減災思考法|今回の台風19号騒動で感じたこと

たしかに犠牲者が出ました.
それはそうなんですけど,冷静に分析して次に活かす必要があります.


台風19号、11県の33人死亡 19人不明、21河川で堤防決壊(ヤフー・ニュース・共同通信 2019.10.13)
東日本を縦断し、13日に温帯低気圧に変わった台風19号による猛烈な雨の影響で、長野県の千曲川など21河川の24カ所で堤防が決壊、住宅地などをのみ込む大規模な洪水被害が各地で発生した。土砂災害も相次ぎ、共同通信の集計によると11県で33人が死亡、19人が行方不明となった。負傷者も多数に上った。孤立状態になった地域も多く、警察や消防のほか、災害派遣要請を受けた自衛隊が捜索や救助を行った。

実際,今回の台風19号は想定よりも弱い台風でした.
昨日の時点で,私もそんな記事を書いています.


当初は「史上最大規模の台風が来る」ということで,警戒を呼びかけていたのですが,幸いなことに勢力が弱まって上陸してくれたのです.

なので,当初心配されていたほどの被害は発生しませんでした.
当初は1000人,8000人といった規模の犠牲者も覚悟されていたのです.

現在確認されている首都圏の犠牲者は5名ほどとのことです.
ただ,東北・北関東地域への被害が大きく,現在のところ33名の犠牲者が出ています.


不謹慎だと受け取る人もいるでしょうが,大型台風の災害では必ず死者・構造物破壊といった被害は発生するのです.
これはもう諦めるしかありません.


台風や大雨が多い西日本,特に九州・四国地域では,この手の災害は毎年のように発生しています.

その中でも最近は立て続けに大規模災害が発生していて,記憶に新しいのが昨年7月に発生した「西日本豪雨」や,2年前の九州北部豪雨でしょう.
死者・行方不明者あわせて西日本豪雨では271人,九州北部豪雨では42名を出しています.

いずれも,「台風の出来損ない」が脅威となりました.

高知県の水害対策


そんななか,かつては「大雨・台風被害の代表格」であった高知県が,最近ではめっきり被害者リストから外れるようになっています.

別に気候変動によって高知県に台風や豪雨が少なくなったわけではありません.
高知県の降水量は依然として,ブッチギリの全国トップです.
都道府県別・年間降水量ランキング(都道府県格付研究所)
ひたすら雨が降る土地と言っていいでしょう.

実際,西日本豪雨でも飛び抜けて雨が降ったのが高知県でした.

それについて取材されたAERAの記事もあります.
西日本豪雨で最も雨が降った高知県で被害が小さかった理由とは?(AERA dot. 2018.7.14)
上位5地点までに4地点でランクインしたのが高知県だ。1位の馬路村魚梁瀬(やなせ)が1319.5ミリ、2位の香美市繁藤が985.5ミリ、4位の香美市大栃が820.5ミリ、5位の本山町本山が829.5ミリと、他府県に比べて降雨量が抜きんでている。
それでも、高知県の被害は死者2人にとどまっている。広島の81人、岡山59人、愛媛26人に比べてはるかに少ない。避難者数は広島1662人、岡山3550人、愛媛525人に対して高知は24人だ(消防庁発表、13日現在)。
なぜ、西日本豪雨で最も雨が降った高知県が大きな被災地とならなかったのか。


https://dot.asahi.com/dot/2018071300080.html?page=1

先日の記事にも書きましたが,これは高知県民が大雨に慣れているからとか,台風への備えが優れているからではありません.

もともと水害が多い地域だったので,そのインフラ整備と対策をしっかりしているからです.

「対策」と言っても,万全なものは期待できません.
大雨や台風によってある程度の被害が出ることは諦め,その被害規模を小さくするための対策をとるしかないのです.

上記の記事でも,高知県危機管理部の課長がこのように答えています.
「高知県は、1998年の豪雨災害や1976年の台風17号による災害など、過去に豪雨やそれに伴う土砂災害で被害を受けてきました。そういったこともあり、大雨時の排水能力の向上や河川の改修など治水対策に長年取り組んできました。また、台風被害の多い県なので、県民の防災意識が高いことも大きいと思われます」

ここで勘違いしやすいのが,「県民の防災意識」というやつ.

具体的に,大雨や台風に対する「防災」のために何をしているのかというと,それは物凄くシンプルで,
「危ないところに住まない」
というものです.

感覚的なものなので県外の人には伝わりにくいかもしれませんが,大雨などで増水する可能性があったり,土砂崩れの危険がありそうなところに住もうとする人を,明確にバカにする空気があります.

私もその県民ですから,先日の記事でもどうしてもバカにした文章を書いてしまうくらいです.


不動産や土建,役所の人もそうした「県民」の一部ですから,そんな空気を感じ取って「ヤバい土地」を用意することを避ける風潮が有るんだと思います.


ただ,こうした空気は「毎年,水害に悩まされている」という土地柄から惹起されるもの.
大雨・台風被害が少ない他地域の人々とは異なるのは当然の事でしょう.


高知県では,よく,険しい山肌に一軒家で暮らす高齢者が多いものだから,
「あんなところに住んでいると,災害にあったら助けるのが困難になるから迷惑ではないか」
というのがありますよね.

例えば,以下のような風景が,これぞ「THE 高知県」として想起されやすいと思います.
画像:Wikipedia「大豊町」より

でもね,崩れやすい場所を避けさえすれれば,こういう土地に住んだほうが水災害そのものに合わなくて済むから安心なんですよ.

先日の記事でも書いた「排水」に対する意識です.

川の近くにいたら,大雨や台風で氾濫した時に手がつけられなくなるでしょ.
それよりも,まずは生き残ることを考えて水の近くを避けるのが高知流です.

高知県民なりに,帰納的に考えた末の防災・減災思考と言えます.

関東地域も,そろそろ「水没する場所をつくらない」という発想を持つべき


上述したAERAの記事は,最後にこのように締められています.

前出の高知県職員は、高知県で比較的被害が小さかったことについて、こう強調した。
「備えがすべてです。自然災害で想定以上のことはできませんから」

いやもう,これが至言でしょう.

被害に合わないようにするためには,被害に合いにくい状態で暮らすことが大事なのです.

今回の台風19号で被災した地域にしても,もともと大雨が来たら水没することが予想されていた地域です.
水没することが確実で,それでも「安価」で「便利」で「元々,発展していた」からということで売りに出されていた場所なんですよね.

であれば,災害に合うのも致し方ないことと諦めるしかありません.
「水没する」という事前の想定である以上,それを覆すことはできませんから.
あとは「いつ」災害に合うか,の問題でしかないのです.


今後,関東地域には「大地震」と「大雨・台風」の危険性が叫ばれているのですから,高知のように10年20年がかりで対策をとる動きが必要だと思います.

今回は大丈夫でしたが,昨日ゾッとしたのが「地震の併発」です.
夕方6時半頃に,千葉で地震がありましたよね.

もし大地震などで東京都心の排水ポンプや排水路が不調になったら,今回のような台風でなくても,とんでもない事態になっていた可能性があります.

地震は晴れの時に発生するわけではないのですから,排水ポンプが稼働しない事態になっても大丈夫な状態を用意しておくべきです.


さしあたって,「疎開」が必要でしょう.
東京・首都圏一極集中を避けて,人口を散らすことが,最も早くできる対策です.

一極集中していなければ,災害時の食糧問題も軽減できますし,死体が放置されることによる感染症も予防できます.
パニックや暴動が発生する確率も下げられるはずです.


こういう話は来年,再来年に達成できるものではありません.
何十年もかけた対策です.

しかし,踏ん切りをつけて始めなければ,永遠に達成できないことでもあります.


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