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センター試験|最後かもしれないだろ? だから、ぜんぶ話しておきたいんだ

センター試験改革「大学入学共通テスト事件」は,だいたい世論のせい


センター試験は今年で終了.
来年からは新しく「大学入学共通テスト(以降,共通テスト)」が始まります.

その共通テストに不備がたくさんあったという話が世間を賑わせており,英語試験の民間業者利用や,記述式問題が延期になったことが記憶に新しいことです.


本件については,それを論じるニュースがたくさん出てきました.
例えば,先日もこんな記事がヤフー・ニュースに出ています.

強引すぎた「大学入試改革」…その断念から考える「日本の難題」(現代ビジネス) - Y!ニュース(Yahoo!ニュース 2019.12.30)


この記事は昨年末に出ているので,1月16日現在で半月(18日)ほど経過しています.
しかし,この記事に対するヤフー・ニュースのコメントは138件

ニュースに対する世間の関心度を測る上で,ヤフー・ニュースのコメント投稿数は一つの指標になるでしょう.
そのニュースに対して物申したい人の数の多さを端的に表しているはずだからです.

そう考えると,この「大学入学共通テスト」は,他のニュースと比べて関心度が低いことがわかります.
(その他の世間を騒がせているニュースは,2000件〜3000件のコメントがつきます)


はっきり言って,大学入試に関するニュースなんて,ほとんどの人が関心が無いんですよ.
実際のところ,大学教育について正面きってエネルギーを注いでいる人なんて極少数.

そりゃ「大学入試」に関心がある人からすれば気になる話でしょうけど,世間の大多数からすれば「どうでもいいニュース」の一つです.


そんなわけで,今,教育関係者の方々が警戒しなければいけないのは,

「実は,世間の人々は教育問題に関心が無い」

ということと,そのくせ,

「何を言っても反論されにくい話題であるため,根拠もエビデンスもなく好き勝手なことをヒステリックにぶち上げたがる奴が多い」

ということです.
その多くはウヨク系の人間です.注意しましょう.
なぜ教育現場では「ネットの意見」が受け入れられないのか


今回話題となった大学入試改革にしても,もともとは「世間の要望」を背景に進んできました.

これからの大学は変わらなければならない.
そうでなければ世界から取り残される.
社会的な貢献,支出に対する還元が求められる.

そんなスローガンが叫ばれていましたね.
これがそもそもの間違いです.

もちろん,大学関係者の多くは以前から,

「そんな改革に何の意味があるのか?」
「大学教育として越えてはならない一線がある」

などと反論していましたが,

「社会の変化に抗う象牙の塔」

と批判されて,大学関係者による常識的かつ論理的な意見は封殺されていました.

だから,共通テスト問題にしても,なにを今更といったところです.


そもそも,これまでのセンター試験にしたって,
「大学がやるからミスが起きるんだ.民間がやれば,もっと質の高いことができる」
などと言われていたくらいです.

バカ言っちゃいけない.
民間は営利で動くところです.
利益にならないことは手を抜くし,差し引きマイナスにならないのであれば「意図的にミスをする」ことだって厭わない.

そんな当たり前の理屈がスルーされ,
「民間業者に委託すればすべてが解決する」
「マークシートでは学生の能力は評価できない」
「改革しなければ,日本の教育は世界に取り残される」
と言って推し進められてきた大学入試改革.

絶対に忘れてはいけません.
民間業者利用や記述式問題を強烈に推進してきたのは,他でもない,あなた方国民であることを.

もちろん,世間の流れに乗って,この改革を煽った大学教員がいたこともたしかです.

しかし,圧倒的多数の大学教員は,この大学入試改革には懐疑的・反対でした
メディアやネット媒体で声を出している人もいましたが,それを無視したのも国民です.

いやホント,マジで当時(2014年頃)は「大学入試改革・反対」に対する世間の目は冷たいものでしたよ.
改革するのが当たり前.
大学はもっとバリエーション豊かに入試をするべきだ,と.

それもこれも,教育問題に関心がない割に,意見やクレームだけは入れたがる国民性によるもです.
まあ,教育関係者以外の人は全く覚えていないでしょうけど.




「大学は今になって声を挙げている」はウソです


ずっと以前から,入試に限らず「大学改革」には反対の声を挙げています.

このブログでも,センター試験廃止&新テストの話題が出てきた直後の2014年に批判記事を書いています.
センター試験の廃止について述べておく

また,「反大学改革」については2012年から取り上げており,これらの記事は常時,多くのアクセス数を稼いでいます.
何年か前には,大学問題を取材している新聞記者さんからのコンタクトもありました.
反・大学改革論
なぜ大学改革をやってはダメなのか

これは,私と意見を同じくする方々が多数いるからでしょう.
しかしその一方で,こうした記事を「一般の人」が読むことはほとんどないかと思います.

そんなこと言うと,こんな反論もあるかもしれない.
「マスコミがこの問題を報道しなかったからだ.日本のマスコミが腐っているから,こんな事態に陥ったのだ」
と.

しかし,それも間違った認識です.

少なくないマスコミは,ずっと大学改革の問題点を指摘してくれていました.
上述したように,こんな怪しいブログを書いている若輩教員に取材するくらい,大学改革の危険性を訴えるジャーナリストは多かったのです.
ウソだと思うなら,試しに,大学改革の危険性や批判をネットでググってみてください.大量に出てくるから.

けど,それでもやっぱり「時代に抗う象牙の塔」というステレオタイプを押し付けて評論してきたのが世論でした.
結果として,政局的には「大学は改革すべきもの」が正解になったのです.


これについてもっと言えば,大学関係者の声が大きくならないのにも理由があります.

「大学ガバナンス改革」という大学改革をご存知ですか?
これは,大学運営をトップダウン方式にする改革で,簡単に言えば「大学教員(教授会)の意見を封殺し,理事長・学長に従わせる方式にする」ということです.

大学という組織は,教員一人一人の意見が尊重されていましたので,文科省としてはこれが「改革」を進める上では邪魔だったのです.
「大学は組織のトップに従わなくていい制度になっている.これは民間企業では考えられないことだ」
などと意味不明な理由をつけて,民間企業ではない公的教育機関である大学の統治システムを,なぜかトップダウン方式にしたのです.
いやこれホントマジで意味不明.

これと合せ技で,文部科学省は各大学に対し,
「文科省からの通達に従わなければ,補助金カットしたりペナルティを与えるぞ」
という方式にしてきました.

そうなると当然,大学経営を司っている理事長・学長としては,大学を経営難にして教職員を路頭に迷わせるわけにはいきません.
その結果,文部科学省に逆らえない状態になりましたし,文部科学省の方針に異を唱える教員を黙らせる圧力をかけるようになったのです.


で,こうした大学改革にお墨付きを与えてきたのも,やっぱり国民です.

たぶん,日本国民のなかには,「教育業界」に対して恨み妬みを抱いている人が一定数いるんじゃないかと思います.

たしかに,どうしようもない破天荒な大学教員はいるし,上手く噛み合ってない組織やシステムもある.
それに対し,恨み妬みを持つ人がいてもおかしくはないでしょう.

それで,教育業界に復讐する意味でも「日本の教育を改善する」という建前を使って破壊活動をしているんです.
問題点を改善するために「産湯とともに赤子も捨てる」ようなことをしてきたのが大学改革.
そしてそれはおそらく,無意識的なところで展開されている.

さらに言えば,以前も記事にしたように,日本の教育が崩壊したところで「自分」は損をしない,という関係式が成り立つからです.
日本の教育が劣化することによって得をする人

あぁ,なんだか愚痴を並べた記事になってしまいましたが,これが大学教員を引退しようとする私からの「大学教育」に対する本音の忠告だと思って参考にしてください.


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反・大学改革論
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なぜ教育現場では「ネットの意見」が受け入れられないのか
日本の教育が劣化することによって得をする人
教育問題に責任者はいない

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