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種苗法改正見送り|ウヨク新聞が発狂しだした

そのうちこんなふうに報じるだろうと思っていたら,結構早く報じてきた


種苗法改正問題.
このブログでも取り上げたことがあります.
種苗法改正の件|柴咲コウの指摘は至極真っ当です


で,本件,やっぱりウヨクが発作を起こしています.
なんでも,柴咲コウが日本共産党が発行する『しんぶん赤旗』で記事になっていたからということで,「柴咲コウは共産党員」という話も付け加えて炎上しています.

柴咲コウが共産党員かどうかなんて,どうでもいい話ですが,そうやって「反左翼」という,まるでアメーバーか大腸菌みたいな反応によって,安倍広報室であることを隠さない産経新聞が,さっそくこう報じました.

種苗法改正案継続審議に怒りの声 新品種盗難続発で九州の農家「制度に穴」(産経新聞 2020.6.19)
17日に閉会した通常国会では、ブランド農産品などを海外に不正に持ち出すことを禁じた種苗法改正案の継続審議が決まった。インターネット上などで盛り上がった「自由な栽培や売買が難しくなる」といった声に押された形ともいえる。ただ、九州では今も新品種の苗が盗まれる被害が相次いでおり、貴重な知的財産の流出懸念は高まり続けている。
(中略)
開発者の権利を保護するには各国で品種登録する方法もある。ただ、日本で新たに登録した品種を海外でも登録可能な期間は4~6年以内と短く、これを過ぎれば無権利状態として栽培されてしまう。
(中略)
農林水産省は諸外国での品種登録を支援するが、各国の手続きは一筋縄ではいかない。そこで流出防止の実効性を高めようとしたのが改正案だ。
これに対し、一部農家は「農作物の自由な栽培が妨げられる」「種を開発する多国籍企業に種苗の権利を独占される」と反対し、芸能人もSNS上で同調コメントを投稿し拡散された。


産経新聞.
ここ10年ほど,急速に劣化してますよね.
もはや新聞社というより,ネトウヨブログ.
私もここ数年は,まともに記事を読むこともありません.
こういうブログ記事における,バカウヨのネタ元として引用するくらい.


別に,改正が見送られたことに怒りの声があがっていることをニュースしてもいいのですが,この産経新聞の記事,ちと発狂し過ぎではないかと心配です.
心配っていうか,もはや手遅れだと思ってますけどね.

「一部農家が反対し・・」などと書いてますが,「一部」であることを裏付ける調査をしたことあるんでしょうか.
改正反対派が,まるで正義の御旗に楯突く少数派のような書きっぷりですが,こういうのって非常にヤバいと思う.
それに,仮に少数派だったとして,少数意見の方が正しいことは多々あるわけで,議会制民主主義をやっているんだから考慮されて当然です.


今回のニュース記事にしても,ほぼ週刊誌ネタみたいな切り口で,肝心要の,
「種苗法改正が今国会で見送りになったのはなぜか?」
について分析も取材もすることなく,単に「見送りになって怒ってる人がたくさんいるぞ」と記事にしてるだけ.
贔屓にしている政権が作った法律.
それも韓国や中国に対抗する法律だから,どうしても結論ありきで書いてしまう.

こういうの,全くやる気のない学生の卒業論文でも見られます.
「お前,この論文で一体なにを訴えたいわけ?」って呆れるパターンのやつ.


種苗法改正の問題点については,私の過去記事を参照してください.
そこには,本件で注目を集めた芸能人の柴咲コウ氏が,どんな趣旨で「種苗法改正」「種子法廃止」を考えているかも整理しています.


その記事でも述べたことですが,ここでも簡単に触れておくと,今回の種苗法改正をしても,外国で栽培されることそれ自体を防ぐことはできません.
なぜなら,種苗法は日本国内の法律なのですから,それは外国には及ばないのです.

外国で栽培されることを防ぐためには,それこそ上述の産経の記事にもあるように,その国で品種登録しなければいけません.
記事中では,「品種登録する方法もある」などと書いていますが,これは産経新聞による明確な嘘です.
正しくは,「品種登録しか方法がありません」です.
農林水産省がそのように見解を述べています.
以下がその見解.
このような事態が続けば、海外市場での日本品種のブランド価値の低下や、価格競争に巻き込まれるなど輸出マーケットの喪失につながり、農産物の輸出にも影響を及ぼすものとして懸念されています。
の事態への対策としては、種苗などの国外への持ち出しを物理的に防止することが困難である以上、海外において品種登録(育成者権の取得)を行うことが唯一の対策となっています。【農林水産省から】海外における品種登録の推進について(農畜産業振興機構 2017.11.1)

犯罪者が海外逃亡するっていうエピソードをよく見聞きしますよね.
海外に逃亡すれば,その国内における法律は適用できなくなるから,逃げ切りやすくなるからです.
もしその犯罪者を捕まえたければ,逃亡先の国と交渉しなければいけません.
それと同じことが種苗にも言えるわけですよ.

記事には「登録できる期間は4〜6年と短い」とも述べられていますが,そんなこと愚痴ってる暇があったら,長くなるように交渉しろって話なんです.
もっと言えば,結局は,種苗法改正したって同じことの繰り返しなわけで.

そういう外交もせずに放置しておいたので,この現状があるんです.

この間,安倍はなんにでも「ジューシー」と連発していました.
山梨ブドウ「ジューシー」=安倍首相(時事通信 2019.8.5)

はっきり言って,そういう盗作防止の外交努力を怠ってきた言い訳のように,本法律をブチ上げたとしか思えない.
後付なんですよ.
森法務大臣の失態をカバーするために,検察庁法を改正したのと同じ構造です.


この産経の記事にしても,まるで今回の種苗法改正が見送られたから品種盗難が続発しているかのような書きぶりです.
しかし,現状を打開するためには,今さら種苗法改正したってダメであることは明白.
農家が怒っているというのなら,さっさと各国に向けて品種登録の交渉をするよう指示するのが筋ってもんでしょう.
なんで種苗法改正なんかに精を出してる暇があるのか.


それに,この件の問題点については,柴咲コウ氏も事情をきちんと理解しているようです.
少なくとも私はそう解釈しています.

そもそも,柴咲氏は種苗の海外流出防止に反対などしていません.
「法律の議論のされ方がおかしいのでは?」
というものでした.

彼女の主張は以下のようなもの.
種苗法というパック詰めの抱き合わせ改正ではなく,海外流出を防ぐための対策と法律をまずもって急ぎ用意し,国内農家に対する種苗利用の権利問題については,中長期的視点から別途検討した方がよい. 
というのがその趣旨です.
詳しくは,過去記事の ■種苗法改正の件|柴咲コウの指摘は至極真っ当です をご参照ください.

なんとまあ,至極真っ当な主張だと驚きました.
こういうのを左翼・共産党だと言うなら,保守・右翼とはなんぞやと思う.
っていうか,多分,柴咲コウは保守派でしょ.
本人や周囲がどう自覚してるかは知らんけど,目に見える姿は保守です.


逆に言えば,これを抱き合わせのパック詰め改正で通したがる現政権の思惑が透けて見えるんですよ.
つまり,本法律は「種苗の海外流出の阻止」が目的ではないということです.

というか,そういうあまりに危険な匂いがプンプンするから,与党内からも反対の声があがり,改正見送りになったんじゃないですか?
産経新聞には,それを取材しろよって言いたいわけです.


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