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コロナ騒動から,これからの大学授業を推察する

やっぱり「講義」って考えもんでしょ?


今年の新型コロナウイルス騒動は,いろいろな方面に課題を突きつけました.
それは例えば,
「グローバリズムの脆弱性」
「世界各国における科学的なデータ分析志向の欠如」
「日本政治・行政のお花畑思考」
などです.

他にも,かつて私が仕事していた教育業界では,
「日本の教育業界のIT化の遅れと,対応力の低さ」
が顕著でしたね.

問題意識はずっと以前からあったんです.
日本は教育のIT化が遅れている,っていう指摘は20年近く前からありました.
私も大学生の頃に,授業でそんなテーマを聞いたこともあります.

早く対応しないと,そのうち大変なことになると言われていましたが,実際に大変なことになりましたね.


以前,PISA(国際学習到達度調査)で,日本人の「読解力」が低下していると話題になったことがありましたよね.
その時のブログ記事はこんなのです.

で,その「読解力の低下」ですが,これにはこんな指摘がありました.
「この調査は,IT機器を用いてテストしているため,そうしたIT機器に不慣れな日本の児童は点数が低くなりやすかったのではないか?」
というもの.

気持ちは分からんではないのですが,でもそういうのを含めた「読解力」ですからねえ.
言い換えれば,日本の子供は「現代における社会的スキル,および教育環境に適応できてない」という意味でもあります.


私も教員経験があるから分かるのですが,日本の教育現場って「成果よりも経過」を大事にするんです.
どれだけ一生懸命取り組んだか?とか,予定通りの内容を消化できたか? とか,授業中に学生(生徒)がイキイキとしていたか? とか.
私からすると,はっきり言って,これらはいずれも,どうでもいいことです.

そして,今回の新型コロナ騒動は,こうした日本の教育現場の特徴が,如実に悪影響を与えました.

一生懸命取り組んだかどうかなんて無意味になったし,
予定通りの内容を消化できないし,
授業中の学生の様子を把握すらできない,
っていう状況に放り出された結果,少なくとも日本の大学(に限らず教育界)は大混乱になってしまいました.

最初から「達成すべき成果」だけをしっかり決めて,それを達成するために各自が様々な工夫や判断をすればいい,ってことにしておけば良いものを,そういう仕組みになっていないことが問題なのです.


それでも,なんとか授業を展開しようということで,今年の大学は努力を続けました.
その結果,どうやら私が過去記事で触れた「大学の新時代」が到来しつつある兆候が見えてきたのです.

例えばこんなニュースがあります.
関西大、約3万人の学生アンケートでオンライン授業に対する学生の本音を調査(ICT教育ニュース 2020.11.)
オンラインの授業形態別に、対面授業再開後も取り入れてほしいかを尋ねたところ、「リアルタイム型」(29.6%)よりも自身の好きなタイミングで受講できる「オンデマンド型」(52.7%)の希望度が高い結果に。約3人に1人が通信環境にストレスを抱えていたことも、一つの要因になったと見受けらという。このことから、対面授業と比べて臨場感に劣るオンライン授業では、授業特有の緊張感や教員とのリアルタイムでの掛け合いよりも、スケジュールが調整しやすく、繰り返し受講できる利便性を好む傾向が見えてた。

他にも,こんな調査結果もあります.

学生のオンライン講義に関する意識、肯定評価が優勢(リシード 2020.10.15)
学生を対象にオンライン講義と対面講義のどちらを希望するか聞いたところ、オンライン講義を希望したのは40%、対面講義を希望したのは33%、オンラインと対面型の組み合わせを希望したのは5%だった。オンライン講義が従来の対面型講義と比較して良いと思う点を複数回答で答えてもらったところ、「通学時間がかからない」82%、「自分のペースで学習できる」68%、「自宅で学習できる」66%、「教室移動がない」61%、「私語がない」「復習が何度もできる」各34%の順に多かった。
(中略)
教員を対象に、講義はどのような形式で行われているか聞いたところ、動画が85%(うち、リアルタイム35%、オンデマンド50%)、文書による課題提示が15%という結果に。従来の対面型講義と比べて学生への教育効果は高まったと感じるかという問いに対し、高まったと感じていたのは40%、落ちたと感じていたのは20%だった。今後、どちらの講義の実施を希望するかと聞くと、オンラインを希望が50%、対面を希望が25%という結果だった。

私は以前から,
「大学の講義なんて,オンデマンドの動画配信をしておけばいい.そっちの方が,学生の学習効果も上がるとしか考えられないから」
と述べてきました.
実際,そんな内容の記事もあります.

このコロナ騒動中にも,そんな記事を書きました.


もっと言えば,上記の「新・大学改革論」のシリーズでも述べていますが,これからの大学は,オンライン授業を基本としつつも,「オフライン授業の魅力をいかに高めるか」が重要なテーマになってくると思っています.

つまり,大学の存在価値って,このオフライン授業なんですよ.

「もういっそのこと,オンライン授業でいいじゃん!」なんて思ってたら,質の高いオンライン授業の専門サイトが誕生して,そこでコンテンツを格安提供されたら,もはや大学の存在価値はなくなります.
これはちょうど,「ウィキペディア」が登場することで,百科事典や辞書の存在価値が猛烈に弱まったことと一緒です.


かつての私の予想では,大学のオンライン授業が活気づくのは,あと2〜3年後からかな? って思っていました.
ところがこのコロナ騒動によって,一気に加速しました.
そして実際,オンライン授業は学生からも高評価を得ています.

もし,コロナ騒動が収束してきたからって,また元の授業方法に戻すようなことがあると,今度は「世界の高等教育事情」から遅れを取る事になりかねません.
っていうか,どんどん引き離されていくでしょう.


私の予想としては,今後の大学が進むであろう方針は,
「日常生活や仕事での課題を『共同研究』してもらえる場所」
になることだと思います.

冒頭の話に引き付ければ,これからの大学は「成果」を徹底的に求める時代に突入するのです.
ここで言う「成果」とは,学生の「日常生活の悩み」とか「仕事で直面している課題」を解決することなのです.
それが「研究」となります.

つまり,将来における大学の「成果」とは,大学や学部学科が設定するのではありません.
それは,学生と教員の間で独自に設定し,これを解決するために活動することが大学という場の存在価値になります.

詳しい話は,
とか,
を読んでください.

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