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大学のオンライン授業|やっぱり今後の主流になると思う

オンライン授業をやってみた感想を聞きました


今年度,新型コロナ騒動の影響を受けた大学では,対面式の授業は行わずに,いわゆるオンライン授業と称されるウェブを用いた教育指導で対応しています.
実際にそうやって対応している大学教員の方と,オンライン授業のメリット・デメリットや功罪について議論しましたので,ここに記事にさせていただきます.
特に大学関係者の皆様は,今後の参考にしてください.


一方,大学関係者や教育現場に不案内な方にとっては,オンライン授業といってもイメージしにくいかと思います.
実際,各大学によってオンライン授業のやり方は様々です.

よく知られたところでは,ZOOMやTEAMS,GoogleMeetといったテレビ会議システムを用いた,リアルタイム方式のオンライン授業が「それらしい感じ」がすることもあって,よく取り沙汰されることが多いですね.
それ以外にも,テレビ会議システムでなくてもYouTubeのようなネット動画やウェブサイトを閲覧し,その後,ウェブフォームやEメールで課題提出するといったものも活用されています.
これらの詳細は,このご時世ですからオンライン授業について取り上げたホームページ等で紹介されていますので,そちらも御覧ください.
21世紀型教育の実践!オンライン授業のメリットとおすすめツール4選(テレワークナビ)

私自身,今回のようなコロナ騒動がなくても,2030年頃を目処に,世界の大学はオンライン授業がメインになると考えていました.
むしろ,オンライン授業を主体とする大学に改革することが,これからの大学のあるべき改革案だと思って,それをシリーズで記事にしたこともあります.
このコロナ騒動は,その流れを後押ししたものと考えられます.

新・大学改革論|これからの時代に授業は不要

上記の記事では,大学に限らず,日本の教育現場にはびこる
「オンライン授業は不要」
「対面方式でなければ教育にならない」
という意識を刷新するのは,昨今の無駄な業務に忙殺されている現場の我慢が限界に達し,
「これ,わざわざ対面方式でやる必要あるの?」
という悲鳴混じりの要望から始まると予想していました.
しかし,その動きは新型コロナ騒動によって加速しそうです.


現時点では,多くの大学教員は「オンライン授業」が負担になっています.
これは当たり前のことで,やったことがない人たちばかりだからです.
さらに,本来ならできるはずのオフライン指導という手段が使えていません.

しかし,コロナ騒動が終息したり,オンライン授業のやり方に慣れてくれば話は別.

オンライン授業の強みや利点が理解できれば,いくつかの授業をオンライン化させる案が浮上し,そのうち文部科学省や厚生労働省に働きかけて,
「あの授業はオンラインで済ませられるようにしてほしい」
などといった要望が上がってくるものと思われます.

オンライン授業を展開することができれば,現在の多くの大学で検討されている改革案を支援することにつながります.





オンライン授業でカリキュラム展開や配置に自由度があがる


例えば代表的なところで言えば,半期(春学期・秋学期)のセメスター制から,4期のクオーター制へと移行することを検討している大学が多いのですが,これを教職員の負担とストレスを抑えつつ実現するためには,その大学のすべての授業をクオーター制仕様として一括移行する必要があります.

現在,クオーター制をお試し導入している大学もありますが,評判は芳しくありません.

なぜなら,複数の大学に勤めている教員や非常勤講師が対応できなかったり,各期に配置できる授業数・領域に偏りができてしまうといった問題が発生するからです.
この問題は,その地域の大学全部がクオーター制に移行しない限り,その大学だけで本格導入したとしても発生します.

結果として,一部の教員と学生にしわ寄せがいって負担を強いることになり,どっちもどっちだよね,といった感があったわけです.

ところが,オンライン授業が実現できれば,これらの問題点を解決できるのです.

授業の一部については,あらかじめ構築しておいた動画配信やウェブ上での授業システムとしておき,教員はそれに対する学生からのテスト評価やレポート対応だけをするのであれば,わざわざ「その授業のコマ」のための時間を割かなくてよいことになります.

こうすれば,例えば私みたいに地方のド田舎で農業しながら暮らしている人を,大学の非常勤講師として雇うこともできるわけです.
なぜなら,授業するために大学という空間に通勤しなくてもいいし,動画配信などで「授業時間」それ自体が無い講義方式にすれば,いつもは農作業をしていて,空いた時間に学生からの質疑応答や,テスト・レポート評価をすればよいことになります.

これは極端な例ですが,こうすることで現在のような「曜日・時間・授業内容・専門」などを考慮しながら「担当教員」を探し回る労力が大幅に低減されます.

もっと極端な例を言えば,これにより,
「授業をするだけの時間はないけど,学生からの質疑応答やレポート対応をしてくれるだけでも学生にとって有益な特殊技能を持った教員」
をピンポイントで雇い入れることも可能になります.

こうしたオンライン授業の潜在力は,教員の人件費削減にも力は発揮するはずです.
これについての詳細は,ちょっとデリケートな話ですからまた別の機会に.




大学授業用の動画が「教科書」のように製作・販売される時代が来る


オンライン授業が発展した先に考えられるのは,大学だけに限らず,「授業」がまるで今で言うところの「教科書」のように製作・販売される未来です.

過去記事の,
新・大学改革論|これからの時代に授業は不要
でも述べましたが,誰かが作った出来の良い「授業動画」や「ウェブ学習システム」は,大学間で共有されても良いと思うようになるはずです.

それはちょうど,現在でも「とある大学での授業用に作成した教科書や配布資料集」が,他大学の類似した授業科目のために用いられているのと同じです.

「この教科書はとてもいい.ぜひうちの大学の授業でも使おう」
という感じで,
「この授業動画はとてもいい.ぜひうちの大学の授業でも配信しよう」
ということになるのは必然でしょう.


これが実現できれば,授業が苦手で苦労している教員に朗報です.
主だったことは入手した授業動画や学習システムを使って学生に勉強してもらい,教員はそこで学生が理解しきれなかったことや疑問点などの質疑応答に労力を割くようにするのです.

「大学教員は研究に関心がある人だから,教育指導が疎かになっている」
などと揶揄されることがあります.
そういう側面はもちろんあるし,教育もちゃんとやらなければいけないのでしょうけど,研究が得意な人に苦手なことを無理してやらせても誰も得しません.

ならば,その人の研究能力の高さを活かすための指導方法を模索するほうが,なんぼか有益なはずです.

これまでの大学生にしても,基本的なところは自習し,残念なつまらない授業は寝てしまい,あとで教員に質問しにいってマニアックな知識や見解をもらう,という優秀学生パターンを実践している人は少なくありません.




オンライン授業で伸びる学生がいる


上述してきたことと関連するのですが,オンライン授業ならではの魅力もあるようです.

まず,実際にオンライン授業を展開してみた教員の意見をお聞きすると,やはりオンライン授業にもデメリットはあって,特に顕著なのが学生指導が行き渡らないこと.

また,このコロナ禍においては直接対面してのオフライン指導ができない状態ですから,やれることが限られた中での教育が展開されているようです.

しかし,そこで見えてきたことの一つとして,以前の対面式講義・授業の方式であれば反応が薄かった事柄に,オンライン授業になったことで興味関心を寄せる学生が現れたとのこと.

つまり,オンライン授業と対面式授業では,学生の「授業」の受け取り方・向き合い方が異なる可能性があるというのです.

その理由として考えられるのは,対面式の「授業然とした空間」では,学生は教員から授業を「与えられている感」が強いのではないか.一方,オンライン授業では,ウェブ画面などを隔てて空間を共有していないことが手伝って,授業を与えられているというより「自分で得ている感」が強いのではないか.
そんな感想を持っています.
これはあくまでも感覚的なものですが.


いずれにせよ,対面式授業での学習よりも,オンライン授業の方が,
「自分で考える」
「問題点を模索する」
という振る舞いをしてくれる学生は多いという感想をもたれています.

その一方で,前述したように,
「授業内容がちゃんと行き渡りにくい」
「一方通行になっている学生の把握ができない」
という難点も抱えています.

ですが,これらは「オンライン授業しかできない現状」が改善され,オフラインでの指導もしっかりできるようになれば,ケアできる問題でしょう.
すべての授業をオンラインにする必要はありませんし,オンライン授業がすべてを解決する話でもないのです.


もちろん,こうしたことはコロナ禍に湧く今年限りの特殊な現象かもしれません.
しかし,この際にもう少し「オンライン授業の有効性」について調査研究を進め,対面式授業よりも優れている点や特徴を見出すことは,今後の日本の学術界にとって有益だと思います.


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