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レジャー潜在需要論

前回は公益財団法人 編『レジャー白書2011』 を基に,「運動(エクササイズ)よりもスポーツを活性化させるべきだ」ということを紹介しました.
エクササイズからスポーツへ

自ら率先して実践せねばならない,ということもあって,昨日は同僚の教員と共にスキーに行っておりました.
遊びではありませんよ.研修です.
スポーツ復活計画 さしあたってスキー
の記事でも述べましたが,スポーツの活性化のためには質の高い指導を提供すべきです.
本当ならばスキー・スクールや指導員にお金が回るようにするのが良いのでしょうが,今の私達ができるのは,私たちがスキーの魅力を伝えられる者になることです.


さて,
ついでなので,この『レジャー白書2011』の統計データを基にした分析を続けてみましょう.

今回は『レジャー白書2011』の本文にも紹介されている「参加希望率」と「潜在需要」を取り上げて,面白可笑しく...,失礼しました...,興味深い分析をしてみようと思います.


まずは「参加希望率」.
この白書において,今後参加したいレジャーを聞いたのが「参加希望率」.
これは,「現在やっていないが将来やってみたい」 もしくは 「現在のその活動を今後も続けたい」 という質問への回答を合算したものです.
今の日本人が,どういうレジャーを求めているのか把握できます.

以下は,その「参加希望率」の上位20種目のランキングです.


上位3種目は国内旅行,ドライブ,海外旅行.
現在,日本人はどこかに行きたい衝動に駆られているようです.

私も白川郷とか四国村とか国宝めぐりをしていますし.
気軽に日常を離れることができる旅行系は強いですね.

同じ旅行系に入れてよいかどうか分かりませんが,気になるのが20位の「帰省」.
どこかに行きたいだけでなく,「帰りたい」と希望している人が26%いるのです.

というか,そもそもこれは “レジャー” なんでしょうか.

もっと気になるのは,上位20種目にスポーツらしい種目がないこと.
17位のジョギングも,マラソン出場とか本当の意味での気晴らしなど,好きな人にとってはスポーツなんでしょうけど.
これはレジャーというよりは 「健康目的で」 という人も多いのではないでしょうか.

あと,日本人は体を動かすよりも「学習(16位)」する方が好きなんでしょうか.ま,いいけど.
あえてテレビゲームには触れません.


これを踏まえて,次は「潜在需要」についてご紹介します.
「潜在需要」というのは,上述した「参加希望率」から,現在参加している割合を表す「参加率」を引いたもの.

潜在需要 = 参加希望率 ― 参加率

つまり,「あの種目をやってみたいなぁ」と考えている人の割合と,現時点でその種目に参加している人の割合の差をみるのです.

この値が大きければ,今後その種目の参加者が増加する可能性があります.
その「潜在需要」の上位10種目を以下に示しました.
右端が潜在需要の値です.
やっぱり旅行系が強いですね.
海外旅行は実際に参加している人数が少ないので,希望者の多さと相まって圧倒的な潜在需要です.

やっと,というか.
「スポーツ」とまでは言えないかもしれませんが,“らしい” 「オートキャンプ」や「登山」がランクインしています.
9位,10位に水泳,海水浴も入ってきています.

近年のアウトドアブームの影響だろうと考えられているようです.
何かのきっかけを作れば,大きな市場になる可能性はあります.


ここまではレジャー白書の中でも触れられている内容ですので,レジャー白書が手をつけていない独自のデータ分析をしてみましょう.

以下に上位10種目ではなく,下位10種目をピックアップしてみました.
つまり,「現在参加しているんだけど,今後は抜けたい種目」ランキングです.
これから縮小していく市場が予測できるのかもしれません.注目です.
・・・,なんか,いまいちパッとしない結果です.
解釈に困ります.

圧倒的な参加率(“使用率” というほうが適切?)を誇る「パソコン」は,これまた過半数以上の人が投げ出したいようです.
パソコンを使っているというよりも,使われている感じがするのかもしれません.そんな話しをよく耳にしますよね.
私はパソコンがないと困るのですが,世の人々はパソコンから逃げ出したいようです.

「外食」,「飲み屋」,「カラオケ」の潜在需要がマイナスなのは,“付き合い” で参加している人が多いからかもしれません.
参加はしているけど,できれば参加したくない.といった理由でしょうか.

歌うことに一切興味がない私は,世の人々がなぜあんなに「カラオケ」に行くのか不思議でなりません.
そんな人,けっこう多いのでは?

「テレビゲーム」や「ゲームセンター」,「パチンコ」がマイナスなのは,「そろそろ潮時かな?」と考えている人が多いからでしょうか.
あまり人に褒められたレジャーではない印象がありますからね.


せっかくですから,私の専門でもあるスポーツの潜在需要をピックアップしてみます.
潜在需要が高い順に並べてあります.
第一印象は,いろんな意味で「希望がない」.
スポーツ界は厳しいですね.

どうやら,メジャーなスポーツほど「やめたい」人が多いようです.

逆に,潜在需要がプラスのスポーツというのは,やっぱり「お金がかかる」ものだと考えられます.

これは
エクササイズからスポーツへ
コンクリートからスポーツへ
スポーツ復活計画 さしあたってスキー
でも述べてきたように,日本全体のデフレ対策,そしてスポーツ界のデフレ対策をすることで改善する可能性があります.

学校や大学教育機関こそ率先して「お金がかかるレジャー」を普及させるようにするべきです.
文科省あたりがここに助成金を出しちゃうのもいいですね.
事業仕分けしてる場合ではありません.

次代のレジャー志向を決めるかもしれない子供・青年のスポーツをあずかるわけですから.
扱いやすいメジャースポーツに頼るだけでなく,お金はかかるけど興味を持ってくれるスポーツに目が向けさせることで,こうしたマイナースポーツや関連分野が潤います.

大切なのは,「学校や大学の教員だけで指導しなくてもいい」ということ.
助成金が出るのであれば,スキーやキャンプ,ダイビングなどは専門の人にバンバン頼みましょう.
そうしたほうが,この分野の人達が喜びます.

こうしたことは,今後のスポーツ政策として取り組む必要があります.


ラストは,「あのレジャーの潜在需要が気になる」というものをピックアップ.
しょうもないと思えるけど,私の目に止まったものを連連と並べてみました.
やっぱり気になる「帰省」.
やっぱり潜在需要はプラスでした(0.6しかないけどね).

「クラブ,キャバレー」,「ディスコ」なんてのも調査しているようです.
微妙にマイナス潜在需要です.
そもそも参加率が高くないので気にしなくてもいいかもしれません.

「サウナ」という項目もありました.
でもデータとしては面白くありません.

「宝くじ」は,続けたくない人が5%近くも出てきていますが,「サッカーくじ(toto)」の方は同値.
夢を買うよりも,現実をみつめたいのが本音のようです.

「競馬」は顧客が固定されているのでしょうかね.中央も地方も参加率と希望率が一緒です.
関連して「乗馬」というレジャーも見てみましたが,これは市場開拓の余地アリかもしれません.
乗馬って,ある意味スポーツに入りますよね.期待できます.

「囲碁」「将棋」は囲碁に軍配があがりました.
囲碁は6%しか参加率がないのすが,将棋と同レベルの参加希望率があります.
今後は逆転現象があるかもしれません.

ついでに麻雀も.
これもコメントしづらい値です.

最後に「学習」なんですけど,これは一番最初に紹介した上位20種目に入っていた割に,けっこうな人数が「ホントは勉強したくない」と感じているようです.
マイナス5ポイントですからね.

以前,
PIAAC: 国際成人力調査
という記事を出しましたが,その調査結果を見る前から不安がよぎります.

「学習」に参加したくない,ってわけではないのでしょうが.
日本の学力は大丈夫でしょうか.
これまでは楽観視していましたが,ちょっと気がかりです.